ある意味でこのMID4はR32スカイラインGT-Rの祖先でもある
日産が1985年にフランクフルトモーターショーにて発表したコンセプトカー「MID4(ミッドフォー)」。
その後1987年には「MID4-Ⅱ」として東京モーターショーにて再度発表されています。
「MID4」とは「ミドシップ4気筒」を意味し、ルックス含めて当時としては画期的な車両、と言えますね。
エンジンはフェアレディZ(Z32)にも採用されたVG30DE(V6/3000cc)をもちろんミッドに搭載、乗員は2名、4WDに加えて4WS(4輪操舵)を装備するという当時としてはあまりに画期的なパッケージングや技術を誇っており、さらにMID-4”Ⅱ”ではそれまで前後マクファーソンストラットだったサスペンションがフロント:ダブルウィッシュボーン、リア:マルチリンクへと発展。
エンジンについてはVG30DEをツインターボ化し340馬力を発生するVG30DETTを搭載するに至っています(これらは後の日産車へと受け継がれることに)。
トランスミッションは5速マニュアル、4WDシステムにおいては33%がフロント、67%のトルクがリアへと振り分けられる設定。
重量はツインターボを搭載するMID4Ⅱで1400キロとされており、かなり軽量であったことも分かります。
当時は「市販される」という情報がまことしやかに囁かれていたものの結局は市販に至らず、しかしサスペンションはフェアレディZやGT-R、エンジンやスタイリングはフェアレディZ、4WDと4WSはGT-Rへと引き継がれるなど、非常に大きな意味を持った車であるのも確か。
初代NSXの登場が1989年なので日産、ホンダともに異なるアプローチでスーパースポーツを作ろうとしていた時代でもあった、ということですね。
ちなみに当時の日産はポルシェとなんらかのつながりがあり、日産のエンジニアがポルシェに(MID4市販化に際して)意見を求めた、という話も(そして軽くあしらわれたという話も)。
なおR32以降のGT-Rに搭載される「アテーサ」はポルシェ959のトルクスプリット4WDをベースにしたと言われますが、このシステムは非常に高価であり、ポルシェは959(1986)にこそ搭載したものの「価格面で市販車に採用するのは不可能」と判断。
しかし日産ではこの技術をR32 GT-R(1989)に安価で(といっても当時は高価でしたが)搭載したのはかなりなインパクトがあり、これはポルシェへ向けた何らかのメッセージだったのかもしれませんね。
もしこの「MID4」が発売されていたらその後の日産はどうなっていたんだろうとも思いますが、仮にMID4が登場していたらGT-R(R32)もフェアレディZ(Z32)も当時発売されていなかった可能性もあり、もしかするとMID4はかなり高価になっていたと思われるので「サッパリ売れず」その後の日産はスポーツカーに対して「開発禁止令」が出されていたのかもしれない(つまり現在のR35GT-Rも存在し得なかったかも)、と考えたり。
いずれにせよ「正しい時期に、正しい目的をもって」開発されたにもかかわらず日の目を見なかったのは確かで、しかしそこに採用されていたテクノロジーを小分けすることで、その後の日産におけるスポーツカー発展に貢献したという「大きな意味を持つ」コンセプトカーであり、いつかどこかで最新テクノロジーを身にまとった車として登場して欲しい、という想いも持っています。