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貨物船「フリーマントル・ハイウエー」火災の原因はEVバッテリーだと結論づけられる。船内の惨状が公開され、ポルシェ911やタイカンの姿も

貨物船「フリーマントル・ハイウエー」火災の原因はEVバッテリーだと結論づけられる。船内の惨状が公開され、ポルシェ911やタイカンの姿も

| 輸送していた3,784台のうち498台がEV、1,000台程度は無傷なるも運び出すことが困難だとされる |

1年半の間にこれだけの大規模火災が2件発生したとなれば、なんらかの対策が必要であるのは間違いない |

さて、先月末にはシンガポール向けの新車を輸送中であった貨物船「フリーマントル・ハイウェイ」が恐ろしい火災に見舞われ、乗組員の命を奪い、多くの負傷者を出したのは記憶に新しいところですが、幸いなことに先に同様の火災が生じたフェリシティ・エースとは異なって意図的に沈没させるには至らず、無事に(実際には無事ではないですが)港へと寄せられることとなっています。

なお、これまでの情報だと、搭載されていたのは3,784台で、その多くはメルセデス・ベンツとBMWのクルマであると報じられていたものの、画像を見るとポルシェ・タイカン、そしてポルシェ911らしきクルマの姿も見ることができ、それと同時に火災の凄まじさ、その爪痕には空恐ろしさすら感じさせられます。

今度はメルセデス・ベンツの車両を輸送する船舶が海上にて火災に見舞われる。25台積載されていた「EVの側から」発火するも消火に失敗、1名が死亡するも全員が避難
今度はメルセデス・ベンツの車両を輸送する船舶が海上にて火災に見舞われる。25台積載されていた「EVの側から」発火するも消火に失敗、1名が死亡するも全員が避難

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火元は電気自動車のバッテリーだと報じられる

今回はじめて「ポルシェも輸送されていた」ことが明らかになっていますが、同時にミニも載っていたことが分かっており、さらに「火元は電気自動車のバッテリーであった」という救急隊員からのコメントもいくつかのメディアにて紹介されることに。

加えて、「25台」だとされていた電気自動車の積載台数も「498台(BEVとPHEVを含んだ数だと思われる)」だと報じられ、この惨状を引用しつつドイツの政治家、アンドレアス・ムロセックは以下のように主張しています。

電気自動車は危険物であり、当然ながらそのように扱われなければならない。フェリーの中で電気自動車が燃えたとしよう。200人の乗客を避難させる必要があり、船長と乗組員にとっては最悪の状況となるのは間違いない。

Flemantle-Highway (5)

なお、「EVはよく燃える」と言われるものの、実際の統計だと「自然発火しにくい」こともわかっており、しかし電気自動車が自動車運搬船で火災を起こしたのはこの1年半で「2件」。

前回のフェリシティ・エースでは高価なポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーなど約4000台が焼失し、消火することが困難であったためにやむなく「意図的に」沈没させられています。

VWグループの新車4000台を載せた貨物フェリー火災がようやく鎮火。ポルシェ、アウディ、ベントレー、ランボルギーニも積まれており、被害総額は最小でも323億円
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| 現在は鎮火するもさらに船舶は漂流中。もう少し状況が落ち着けば曳航も可能だというが | 4000台のうち1100台はポルシェ、うち200台程度がベントレーという情報も さて、先週末にアメリカへと向か ...

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生き残ったクルマの搬出も難しい

参考までに、サルベージ会社ボスカリスのピーター・ベルドウスキーCEOによれば、フリーマントル・ハイウェイの下部4デッキには約1,000台の無傷の車があり、それらは「問題なく使用できるだろう」としながらも、「これらの手つかずの車を船から運び出すのは難しいだけでなく、搬出の衝撃によってクルマがまた燃え、悲惨なことが再びこることは誰もが避けたいはずだ」とも。

よって、これら1,000台の”損傷を受けていない”クルマについても、燃えてしまったクルマ同様に「これらのクルマを待っているディーラーや顧客は、もうこれらのクルマを見ることはできない」のかもしれません。

Flemantle-Highway (6)

さらに状況を酷くしているのは、あまりに炎の勢いが凄まじかったことで、こにれよって船の外壁も完全に変形してしまい、燃えたクルマが溶けて「船と融合してしまった」ほど。

現時点では立ち入ることができるエリアが限られるほどにあちこちが燃え、そして溶けたのちに”合体”してしまっており、(扉を開けることができないエリアがあるのかもしれず)被害の全容を把握することすら難しい状況だとも報じられていますが、初期の損失評価は3億3000万ドル(現在の為替レートにて約480億円)だといい、「EV輸送に関する問題」に対する解決策の必要性を示しているようにも思います。

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なお、フェリシティ・エースの火災の後、(船を所有していた)商船三井は自社船での電気自動車輸送を中止すると発表していますが、この流れに追随する船舶会社が出てくる可能性もあり、EVの普及に際しての新たなるハードルが立ち上がったということにもなりそうですね。

現状において「EVを乗せてくれる輸送船」があるとしても、おそらくは相当に高額な料金を請求されるものと思われ、加入する保険についてもそれは同様かもしれません(1台でも燃えれば、船一隻が積荷ごと失われてしまう)。

さらにはそういったコストもEVの車両代金に反映されることになるのは間違いなく、これもまた別の「EV普及に対するハードル」となりそうです(やはりEVを無理やり普及させるのではなく、状況に任せたほうがいいようには思う)。

統計的に見るならば、上述の通りEVが燃える例は(登録台数に比較して)さほど多くはなく、しかし万一燃えてしまうとその勢いが常軌を逸しており、それが路上であったり自宅であったり、新車を列車で輸送している最中であったりすると地獄絵図となるのは間違いなく、同様の案件が続くようであれば、なんらかの規制もしくは対策が国家規模にて講じられることになるのかもしれません。※そもそも、これだけ周囲や船を巻き添えにし、さらに燃えてCO2を排出しているということを考慮すると、あまりに環境負荷が大きいと捉えることもできる

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参照:CARBUZZ, Andreas Mrosek (AfD), rtlnieuws

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