| 現在貨物船「フリーマントル・ハイウエー号」は漂流中、外壁に水を当てて冷却を続けながらも沈没させずに鎮火を狙う |
今のところ発火の原因、そして積荷の詳細は明らかになっていない
さて、昨年2月にはフォルクスワーゲングループの車両約4,000台を輸送するために航行していた貨物船が火災に見舞われ、鎮火できずにやむなく沈没させたという報道がありましたが、今回はメルセデス・ベンツの車両2,857台を運んでいた船の積み荷から発火し、残念ながら1人が死亡したと報じられています。
この貨物船「フリーマントル・ハイウエー号」はドイツからシンガポールへと向かう途中にあり、エジプトに寄港するためにオランダ沖を航行していたそうですが、その際「電気自動車の近くで発火」があったとのこと。
すでにフリーマントル・ハイウエー号の乗組員は非難済み
この発火直後、乗組員は消火を試みるも失敗し、「7人の乗組員が急速に広がる炎から逃れるために」海に飛び込まなければならなかったといい、数人が火傷、骨折、呼吸困難などの怪我を負い、うち1人がこの火災によって死亡したもよう。
現在、救助隊によって23人の乗組員全員を船から降ろし、外部から消火にあたっていると報じられていますが、今のところ発火の原因や詳細については不明です。
オランダ沿岸警備隊の広報担当者は上述の通り「電気自動車の近くで火災が発生した」と語ったものの正確な出火元は特定されておらず、2,857台のうち25台が積載されていた電気自動車が出火元であるとの見方が強まっており、今後の原因究明が待たれるところ。
オランダ水路公共事業局のエドウィン・フェルステーグ報道官は「消火が非常に難しい」とも語っており、もしかすると、昨年2月のフェリシティ・エース号のように「沈没させる」必要が出てくるかもしれません。※現在、沈没させずに消化する計画を策定中だとされ、外壁に水を当てて冷却している状態
フリーマントル・ハイウエー号は2013年に館蔵された後、全長656フィート(200メートル)の車両運搬船としてパナマで登録されており、管理しているのは日本の船舶リース会社である正栄汽船(チャーターしたのは川崎汽船)。
現在のところ積荷詳細については明らかになっていないものの、もしかするとメルセデス・ベンツのハイパーカー、AMG Oneが載っている可能性があるかもしれません。
Het schip staat nog in brand. Het bergingsvaartuig Hunter heeft een noodverbinding met het schip en houdt het schip zo gecontroleerd op een positie. Meerdere partijen werken aan een plan van aanpak om de schade zoveel mogelijk te beperken. pic.twitter.com/EYFTJJaHVo
— Kustwacht Nederland (@Kustwacht_nl) July 26, 2023
フェリシティ・エース号の積荷損害は約570億円
なお、上述のフェリシティ・エースに載っていたのはフォルクスワーゲングループ各ブランドのクルマであり、フォルクスワーゲンはじめポルシェ、ベントレー、アウディ、ランボルギーニの各モデルが積載されており、その中には限定モデルの「アヴェンタドールLP780-4ウルティメ」も。
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ただ、おそらくこの損害額は保険金によってカバーされたものと思われ、のちにランボルギーニは「海に沈んだ」アヴェンタドールLP780-4ウルティメ15台を追加生産した他、ベントレーもすべての台数を再生産した、と伝えられています。
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結局のところフェリシティ・エース号の火災の原因はわかっておらず、今回のフリーマントル・ハイウエー号についても「沈没させられることになれば」火災のもとがわからないということになりそうですが、現時点で「EVだと思われる」のだとすると、積荷としての(疑わしき)EVを敬遠したり、受け入れたとしても輸送料を高く設定したり、そして保険会社も割増料金を設定したりすることになるのかもしれません。
フリーマントル・ハイウエー号の火災を報じる動画はこちら
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参照:Automotive News Europe, Dutch Coast Guard, De Telegraaf, Reuters, Kustwacht Nederland