| 中国だけではなく、世界中で同様の問題が起こりうる |
やはり急激なEVシフトは様々なひずみを生むようだ
さて、中国にて「EVの保険料は、ガソリン車に比較して20%ほど高い」という報道。
現在中国はもっとも電動化が進んでいる国のひとつでもありますが、その理由としてはEVの(免税や減税など)政策が手厚いこと、そしてEVのナンバープレートは取得しやすくコストも安いこと。
日本では考えにくいものの、中国では自動車のナンバープレートを取得するのに多額のコストが掛かり(地域や時期によっても異なる。この取得費用によって中国は登録台数の抑制を行っている)、ガソリン車だと都市部では150万円くらいかかる、という話も。
ただしEVであればこういった取得費用が非常に低く、かつ待ち時間なしに(ガソリン車の場合は、コストの他、交付の順番待ちが長いといった問題もある)取得できることが多く、つまり中国政府は暗に「ガソリン車を買うな」と示しているわけですね。
保険料の高さは「修理コスト」に起因
ただ、今回報じられている「EVの保険費用の高さ」はそういった国の方針にかかわるものではなく、単に「修理コストが高いから」。
S&Pグローバル・レーティングスのディレクターであり保険に関する調査プロジェクトを推進しているウェンウェン・チェン氏によれば、「中国政府期間は2021年に、少なくとも3,000件の新エネルギー車(PHEV、EV、FCV)の火災が報告されている(ただし、具体的に、ガソリン車に比較してどう、という統計は無いようだ)」とのこと。
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そして自動車保険の料金を決定する要素は複数あり、その中の一つが「修理コスト」なのですが、EVの場合は、従来のクルマとパーツの互換性が殆どなく、かつ量産され始めて間もないのでパーツのコストが下がっておらず、よってどうしても修理にかかる費用が高くなってしまうようですね。
なお、アメリカでも同様の傾向が報告されていて、そもそもEVを修理できる工場も少なく、需給のバランスにて修理コストが高くなることも(米国でのEVの保険料高騰の理由として)指摘されています。
参考までに、アメリカでは、EVの保険料がガソリン車に比較して15%ほど高いそうですが、ほかの要因としては「アメリカで売れているEVが高価格帯のクルマばかりであること」も影響しているのだそう。
中国ではEVの販売が全体の25%までに上昇
現在中国では新エネルギー車の販売が急増しており、今年1月から8月というタームだと、新車販売の25%が新エネルギー車だといい、昨年の15%から大きく伸びています。
そして中国の危機管理省が発表した数値によると、火災が発生した新エネルギー車の数は昨年比で32%増加しているとされ、これは全車両平均の火災発生増加率である8.8%よりもずっと高い数字(全車両平均の8.8%もかなり高いとは思う)。
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電気自動車は一般に設計がシンプルになり、よって新規参入障壁がガソリン車に比較して著しく低いと言われ、そのため異業種からの参入が相次いでいる状況ですが、たとえば(スマートフォンの)ファーウェイは自動車メーカーのセレスとの提携によって「Aito」ブランドからわずか1年の間に3台ものニューモデルを発売しています。
実際のところ、ファーウェイは「自動車100年の歴史の中で、我々よりも素早く新型車を開発し市場に投入した例はない」とも語っており、今後も同様の例が続きそう(検索大手、バイドゥ(百度)も新エネルギー車への参入を表明している)。
ちなみにこのファーウェイの3台の新型車については、発売までの速度が記録的ならば量産の速度も記録的で、発売から87日で1万台の納車を突破し、これについてもファーウェイは「(自動車業界における)新型車の納車最速記録」だと主張。
「短期間で開発された自動車が急速に普及すること」自体は問題ではなく、ただし恐ろしいのは「問題を予見できないまま発売してしまった可能性があること」で、今後の成り行きについては注視を要するところだと思います。
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参照:CNBC