
| 実際には直6とV6との性能差や信頼性の差はさほどなく、そのメーカーの得意とする車両の形状に依存して選ばれているようだ |
大きな車には直6、コンパクトなクルマにはV6が積まれることが一般に多いのだと考えられる
さて、エンジンのシリンダー数には「3気筒」「4気筒」「5気筒」「6気筒」「8気筒」「10気筒」「12気筒」などがありますが、このうち複数の形状が一般的となっているのが「6気筒」。
つまり「同じ6気筒でも直6とV6とが存在する」ということになりますが、一般には直6のほうがV6よりも優れるという認識が(高性能車に積まれることが多いからか)あるもよう。
そこで「本当に直6がV6よりも優れるのか」という記事がカーメディアにて掲載されており、その内容を紹介してみたいと思います。
直6エンジンは本当にV6エンジンより優れているのか?
この調査結果は各種自動車フォーラムやJ.D. Powerなどの調査機関、NHTSA(アメリカ合衆国道路交通安全局)、各種メンテナンスサイトから集めたものだといい、主には以下の理由から「直6のほうが優れている」という認識が持たれているようですね。
- 自然にバランスが取れているエンジンは信頼性が高い
あるユーザーは、インライン6エンジンは「シリンダーよりもメインベアリングが多い」と指摘しています。これにより、設計がより堅牢で潤滑が良好になり、V6と比較して力やストレスが少ないという利点があります。 - トルクを多く発生する
ピストン同士が互いに打ち消しあうため、インライン6の出力はより多くがアクスルに伝達され、トルクや馬力が増えます。 - スムーズな動作で心地よいエンジンサウンド
あるユーザーは、トライアンフTR6が「完璧な」排気音を持っていると述べています。これは好みの問題ではありますが、この意見には反論しづらい点があります。最も象徴的な例は、ジャガーEタイプの古典的なインライン6エンジンです。 - 整備が簡単
あるユーザーは、インライン6のスパークプラグ交換がV6よりも簡単だと指摘しています。インライン6エンジンは部品が少ないため、ボンネット内での作業が簡単だという意見が多数あります。修理にとどまらず、インライン6エンジンは改造もしやすいとされています。 - 低回転トルクが豊富
インライン6はストロークが長く、スムーズなパワーデリバリーを実現するため、低回転域でのトルクが大きいとされています。最新の技術(例えば排気バルブタイミングや可変吸気など)が登場する前は、インライン6の方が優れていた点でしたが、現在でも高性能な制御モジュールなしでこれを実現するのはインライン6の方が得意だと言われています。
ただ、これらはあくまで多くの自動車愛好者の意見であり「事実」というわけではなく、そこで実際にフォードF-150(パワーストロークV6エンジン)とシボレーシルバラード(3.0リッター直6)の2024年モデルとの比較を行ってみると、前者だと250馬力、440ポンド/ フィート@1,750 rpm、後者は305馬力、495ポンド / フィート @2,750 rpmという数字を持っており、これを見る限りではやはり「直6のほうが優れる」ということがわかります。※少ない例なので、これが直6とV6とのすべての関係性を示しているわけではない
そのほか、別の「信頼性」という観点から直6とV6を比較してみると、2024年モデルでは直6エンジンを積むマツダCX-60とBMW 740iのJDパワーによる評価がそれぞれ100点満点中65点と80点、苦情は1件と4件。
一方でV6エンジンを積むジャガーF-PACEの評価は80点そして苦情は0件なので、これを見る限りでは「V6に軍配が上がる」ようですね。
なお、現在直6エンジンを作る自動車メーカーはBMWとメルセデス・ベンツくらいとなってしまっていますが、その理由は「直列6気筒エンジンは(パッケージング的に)扱いにくい」から。
直6エンジンはユニット自体の全長が長いためにコンパクトな車両には適しておらず、特に前輪駆動車やコンパクトSUVには(より短い)V型エンジンの方が適しているという理由もありますが、アメリカの自動車メーカーにとっては「V8エンジンのシリンダーを2気筒削ってV6にするのが比較的容易」という理由にてV6エンジンが多いのかもしれません(多くのアメリカの自動車メーカーはすでにV8を持っている。アメリカの自動車メーカーではないが、アルファロメオのV6はフェラーリのV8から2気筒を削ったものである)。
さらにV6エンジンは(バンク角を広く取ると)高さを抑えることができるために様々な車両に収めやすいという特徴があり、反面「横幅が広くなるので」車両の設計に制限が生じ、一方で「直6」は幅が狭いので補機類などのレイアウトに自由度が生じます。
メルセデス・ベンツやBMWが直6を使用するのは「比較的大きな、そして後輪駆動レイアウトの車両が多いから」だとも考えることができ、よって直6とV6とでは「明白な性能差」があるわけではなく、あくまでもその自動車メーカーの車種構成によって自動車メーカーがその選択を行っているということになりそうですね。
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参照:CARBUZZ