
| ただし依然として生産コストは高く、今後しばらくは既存のバッテリー技術が主流になることについても言及 |
これに対し日米欧の自動車メーカーは同時期に「試験生産」をようやく行うという段階である
さて、現在EV業界における「ゲームチェンジャー」と見られているのがソリッドステートバッテリー(全固体電池)。
これは(当初)「リチウムイオンバッテリーの1/3のサイズで同等の容量を誇る(つまりエネルギー密度が3倍)」とされ、EVの重量削減、ひいてはコストの引き下げが期待されていた新型バッテリーパックです。
-
-
フェラーリが2025年を戦う「296GT3」を公開。ル・マン・ハイパーカーと同じカラーリングにナンバーを持ち、このエアロパッケージは296VSにも採用か
Image:Ferrari | フェラーリ296GT3は現時点においても「非常に成功したレーシングカー」のひとつである | 実際のところ、フェラーリの「V6」は非常に成功しているが さて、フェラーリが ...
続きを見る
ただし事実はそう甘くない
そして多くの自動車メーカーやバッテリーメーカーがこれに着目し、早ければ2020年には車載用として実用化される計画ではあったものの、現在のところこれを積んだ市販EVはなく、その理由は「どうしても安全性を確保できないから」。
さらに最新の報告ではリチウムイオンバッテリーの3倍のエネルギー密度をもたせることが難しく、実際には「3割増くらい」にとどまることが判明していて、研究開発費がかかる割にリスクが大きくメリットが小さいということから「撤退」を決める自動車メーカーも登場するほど。
-
-
EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及
| 早ければ2020年に実現するとしていたメーカーも存在したが、現時点では実用化の目処は立っていない | もしかすると、このまま永遠に実現できない「幻の技術」となる可能性も Image:CATL さて ...
続きを見る
しかしそれでもいくつかの自動車メーカーはここに一縷の望みをかけており、そして今回BYDが「次世代の全固体電池を2027年に導入し、2030年以降に本格的な普及を目指す」という発表を行っています。
BYDのリチウム電池部門のCTO、孫華軍(Sun Huajun)氏によると、BYDの全固体電池には硫化物系電解質が使用される予定だといい、しかし具体的なエネルギー密度についての詳細は明らかにされていないまま。
-
-
日産が将来のEV生産に向け「ギガキャスト」導入を発表、加えて2028年に稼働する全固体電池(ソリッドステートバッテリー)パイロット生産設備を公開
Nissan | 日産は長期計画、そして中期計画を組み合わせ、EVの生産コスト引き下げ、そして市場浸透を図る | とくにソリッドステートバッテリーの実用化が「可能になるかどうか」には注目が集まる さて ...
続きを見る
ただし昨年、BYDはすでに20Ahおよび60Ahの全固体電池の試験生産を開始しており、開発が着実に進んでいることは間違いなく、多くのバッテリーメーカーや自動車メーカーのように「できない約束」をしているわけではないのだと考えられ、おおよそ以下のスケジュールを掲げています。
- 2027年:ミッドレンジおよびハイエンドEVに初めて全固体電池を導入
- 2030年~2032年:コスト削減が進めば、より手頃なEVにも展開
- 長期的展望:全固体電池のコストは既存のリチウム電池と同程度になる見込み
-
-
ソリッドステートバッテリーのトップランナーであったBMWでもその実用化に苦慮。「2030年まで量産はできないだろう」とし、ノイエクラッセは全固体電池抜きで発売
| ソリッドステートバッテリーはノイエクラッセにおける目玉のひとつであったが | 現在の各社の対応を見ていると、2030年でも「実用化は怪しい」ように思われる さて、EV関連技術に関してもっともホット ...
続きを見る
それでもBYDのチーフサイエンティスト兼チーフオートモーティブエンジニアである廉玉波(Lian Yubo)氏は、既存のリチウム鉄リン酸(LFP)電池は今後15~20年間は重要な技術として存続するであろうと述べ、手頃な価格のEVには依然としてLFP電池が主流であり続けることを強調し、つまり「実現できたとしても、当面は高価なバッテリーのままである」ということもわかりますね。※奇瑞汽車(Chery)はこの一足先の2026年にソリッドステートバッテリー搭載車の発売をアナウンスしている
-
-
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載市販車第一号は中国から?チェリー(奇瑞汽車)が全固体電池生産のため世界初となるギガワット級工場建設を開始、コンセプトカーも公開
Image:Autohome | ソリッドステートバッテリーは「ある種の危険性」をどうしても排除できず、車載が困難だとされている | いずれのメーカーも「あと一歩」のところまで来ているとは言われるが ...
続きを見る
全固体電池は、航続距離の延長や充電時間の短縮など、多くのメリットを持つ次世代技術であり、中国の自動車メーカー以外にも日産やトヨタ、BMWなどが「開発状況では最先端を走っている」と言われるものの、それらのメーカーから市販車としての「全固体電池搭載車」が登場するのはまだまだ先のことになりそうで、この分野においても中国の自動車メーカーがトレンドを作ることになるのかもしれません。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
中国・上海汽車が「2025年に全固体電池(ソリッドステートバッテリー)を積んだクルマを発売」とコメント。おそらく第一弾はサイバースター、さすがは”チャイナスピード”
Image:MG | どうやら中国の自動車メーカーに追いつくことは非常に難しい | おそらく当初のコストは非常に高く、しかしそれが「価格に見合うのかどうか」には注目が集まる さて、フォルクスワーゲン等 ...
続きを見る
-
-
中国のバッテリーメーカーがついに「ソリッドステートバッテリー(全固体電池)の実用化に成功した」と発表。コストは従来のリチウムイオン電池の+15%、生産は2026年から
Image:快科技 | ただし実際に生産が開始され、車両に実装されるまでは「実用化」とは言い難い | この「グレートパワー」はEV用バッテリー、産業用蓄電池の生産を主に行う新興企業である さて、中国の ...
続きを見る
-
-
虚を突いてダッジがソリッドステートバッテリーを最初に市販車に搭載か。来年にも量産型に近いチャレンジャー・デイトナに全固体電池を積んだ試作車を公開すると正式に発表
Image:Dodge | まさかアメ車がソリッドステートバッテリー搭載第一号に最も近づこうとは | しかし中国・上海汽車も2025年に全固体電池を積んだプロトタイプを走らせると公言している さて、現 ...
続きを見る