
Image:Brembo
| 高級車の天敵「ブレーキダスト」は見た目だけの問題ではない |
ブレンボが新開発「グリーンテル(Greentell)」コーティングによってブレーキダスト問題を解決へ
ポルシェやBMWなどの高性能ラグジュアリーカーにとって、ホイールに貼り付くブレーキダストは見た目の美観を損なうだけでなく、実は環境にも人体にも悪影響を及ぼす要因となっています。
ブレーキ時に発生する微粒子には、有害な金属成分や化学物質が含まれており、吸い込むことによる健康被害へのリスクも指摘されているわけですね。
欧州では「ユーロ7規制」でブレーキにも厳しい環境基準が適用
にもかかわらず、今までは(排ガスばかりに焦点が当てられていたためか)このブレーキダストに関する明確な規定はなく、しかし2026年より欧州で施行されるユーロ7規制では、ようやく排気ガスだけでなくブレーキから出る粒子状物質(PM)にも厳しい制限が課せられることに。
この動きを受けて、自動車メーカーやサプライヤーは新たな環境対応型ブレーキシステムの開発を急いでいるというのが現状です。
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そして今回、世界的ブレーキメーカーであるBrembo(ブレンボ)が、革新的な新技術「Greentell(グリーンテル)」を発表し、 この名称は「Green(環境)」と「Intelligence(知能)」を掛け合わせたもの。
注目の新技術は「レーザーメタルデポジション」と呼ばれる製造プロセスを採用し、ニッケルフリーの2層コーティングをブレーキディスクにレーザーで施していることが最大の特徴です。
▼主な効果:
- 摩耗率を80%削減
- 耐久性が大幅に向上
- 環境負荷を最大85%軽減(第三者機関により検証済み)
これらは、従来の鋳鉄ディスクと比較しての数値で、性能を落とさずに寿命が大幅に伸び、かつ環境負荷も低いという画期的な進化だと考えられています。
この新技術は様々な車種・ディスク形状にも対応可能
ブレンボはこの新コーティング技術を、すでに市場に存在する一体型・デュアルキャスト・軽量・フローティングディスクのいずれにも適用可能としており、となると同社が製品を供給するBMWやポルシェの次期モデル(特に欧州向け)に対し標準採用される可能性が非常に高いのかもしれません。
実は過去にもブレンボは「ブレーキダスト対策」に挑んでいた
このような技術革新は初めてではなく、ブレンボは以前にもポルシェ向けとしてHVOF(高速度酸素燃焼法)という特殊コーティングを開発しています。
その際は、タングステンカーバイドを含む超高密度コーティングによって「パッド摩耗30%減」「ディスク摩耗90%減」を実現しており、ホワイトキャリパーと「PSCB(Porsche Surface Coated Brake / ポルシェ・サーフェスコーテッド・ブレーキ)」という名称によって提供され、これは「スチールディスク以上、カーボンセラミックブレーキ(PCCB)未満」という性質を持つもので、一部モデルに対してオプション設定済み。
Image:Porsche
制動力や耐熱性ではPCCBに対しやや劣るものの、日常の使用においては十分な性能を発揮し、価格も抑えられているため、ホイールをきれいに保ちたいオーナーや、ブレーキダストに悩むオーナーにとって、非常に魅力的な選択肢として機能しています。
まとめ:未来のブレーキは「環境にも優しく、長寿命」
環境性能とパフォーマンスの両立が求められる今、自動車の未来を支えるのはこうした見えない部分の革新なのかもしれず、「コスト」が気になるものの、この「グリーンテル」は一種の革命だと言っていいのかもしれませんね。
- ブレーキダスト=見た目だけでなく環境汚染・健康リスクにも直結
- ユーロ7でブレーキ粒子も規制対象に
- Bremboの「Greentell」で80%摩耗削減&85%環境負荷軽減
- 将来的には“一生モノのブレーキ”も夢ではない
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参照:Brembo