| 加えてガソリンエンジンに関する技術の進歩が「合法的に」V8とV12の存続を可能とさせる |
これからはおそらく、大排気量エンジンが「プレミアム」の条件となるであろう
さて、一時は電動化を推進していたものの、大きく方針を変更し「ガソリンエンジン重視」へと転換したのがアストンマーティン。
最近では強力なV8エンジンを搭載したヴァンテージをデビューさせ、かつV12エンジンを存続させる意向を示していますが、ダウンサイジング+ハイブリッドよりも大排気量マルチシリンダーを選ぶという「アンチトレンド」な一面を見せています。
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アストンマーティンは小排気量エンジンには興味がない
そして今回、アストンマーティンの製品およびマーケティング戦略責任者であるアレックス・ロング氏が語ったのが「大容量エンジンにこだわる理由」。
これについては至極明快であり、同氏によれば「それはスーパーカーを求める顧客が何を望んでいるのかに関係しています。 彼らは数字だけではなく、むしろ感情的なつながりに興味を持っています。 V8エンジンには真の感情的なつながりがあり、V12もまた同様です。そしておそらく、V6にはこれがありません」。
たしかにここ最近ではこの傾向が強くなっており、1,000馬力や2,000馬力のハイブリッドカーよりも多くのエンスージアストが「800馬力程度であっても」V12エンジンを欲していて、これはリマックCEO、メイト・リマック氏も言及したところでもありますね。
そして馬力同様、もはやスーパーカーやハイパーカーを購入する人々は「0−100km/h加速」についても重きを置いておらず、むしろこれを売り物にする新興勢力に対しては否定的な感情すら持っているのかもしれません。
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ただできるだけ速く走るだけでは不十分です。何らかの感情が欲しいし、本物のサウンドと荒々しさも欲しい。それらはV8かV12エンジンにしかなく、なぜならV8はV8、V12はV12だからです。一方、V6エンジンはプレミアムセグメントの領域ではないと考えています。
一方、ここ数年でフェラーリ(296GTB / 296GTS)、マセラティ(グラントゥーリズモ)、マクラーレン(アルトゥーラ)がすべてV6エンジンを導入したことは注目に値しますが、リソースが少ないマセラティを除けば、それらの導入はいずれもレンジトッパーや限定版ではなく、このあたりがアレックス・ロング氏の言う「プレミアムではない」というところなのかもしれません。
なお、アストンマーティンはかつて(60年ぶりの新設計となる)V6エンジンを開発していたものの、それを捨て去ってV8エンジンの継続採用へとスイッチしていて、それには「コストの問題」があったのだとは思われますが、今回語られる「感情」といった部分もやはり影響していたのだと思われます。
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アストンマーティンは「V6」エンジンを採用する予定はない
なお、ストンマーティンは(中国市場向けのDBXにV6エンジンを導入しているものの)今後もV6エンジンを採用する予定はないといい、それはもちろん上述の理由によるもの。
いかに(830馬力を発生するフェラーリ296GTB / 296GTSのように)パフォーマンスが優れようとも、アストンマーティンはV6エンジンと顧客との間には感情的なつながりが存在しないと考えており、「顧客は興味を持たないだろう」とも。
実際のところ、(V6ではありませんが)4気筒エンジン+ハイブリッドにて高出力を発生させるメルセデスAMG C63の販売は”致命的”だとも言われており、アストンマーティンがダウンサイジングを捨て、V8とV12とが当面の排ガス規制に適合できるように改良を行うという選択を行ったことにも納得がゆきます。
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やはり「コロナ禍がすべてを変えた」
興味深いことに、アレックス・ロング氏は「新型コロナウイルスのパンデミック後にV8エンジンの需要が増加した」と述べ、「これはアストンマーティンの独特な(顧客の)使用パターンに関係しているのだと思います。我々のクルマは日常の足として使用されたり、それほど多くの走行距離を走るわけではありません。それが家にある唯一のクルマではないことが大半です」とも。
つまり、多くのアストンマーティンの顧客は(日常的に使用する)電気自動車を所有していて、しかしそれでも「V8スーパーカーからのサウンド、振動など」を求めていると指摘しています。
さらには「過度の(強制的な)電動化に対する反動」「失われゆく大排気量エンジンへの郷愁」といった要素も考えられますが、コロナ禍によってスポーツカーへの捉えられ方が一変したというのはよく聞かれる話でもあり、アストンマーティンの場合も「例外ではなかった」のでしょうね。
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ただ、V8やV12の採用を継続したくとも、法規にマッチしないのではそれも叶わず、そしてアレックス・ロング氏は「V8エンジン、V12エンジンの採用を継続できるのは、内燃機関の驚異的な進歩、とくにインテリジェント機能とターボチャージャーの進化」だとも述べており、なにごとも”必要は発明の母”であって、”生命は常に何らかの生存方法を見つける”ということなのかもしれません。
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