■そのほか自動車関連/ネタなど■

なぜこんなことに・・・。アウディ、BMW、メルセデス・ベンツの中国工場稼働率が50%を割り「さらに減少」の見込み。一方で中国の自動車メーカーは過去最高の輸出を記録

メルセデス・ベンツCLAのフロントグリル
Life in the FAST LANE.

| このトレンドをひっくり返すことはおそらく非常に困難であろう |

ジャーマンスリーは「中国抜きで」前に進む方法を考えなければならない

かつて中国市場を制覇し、高級車の象徴として絶大な人気を誇ったドイツの自動車ブランドが今まさに歴史的な窮地に立たされており、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン(VW)といったドイツ主要メーカーは「値引きを行ったり」「現地専用モデルを投入したり」と様々な対策を行っているものの、その努力も虚しく現地合弁工場では稼働率が著しく低下し続けているとの報道。

これは中国の消費者が地元EVメーカー(BYDや新興EVブランド)へ急速に流入していることが大きな原因で、しかし中国の自動車メーカーではまた別の事情があり、それは「中国内での自動車メーカーの数が増えすぎて競争が激化し、中国国内での販売が難しくなったり生産を抑えなければならなくなったこと」。

つまり「売れない」「生産能力が余っている」という問題はドイツの自動車メーカー、そして中国の自動車メーカーとも同様ということになりますが、その対策は両者でまったく異なっており、中国の自動車メーカーは「輸出」へと活路を見出すことに。

ここでは、この世界的な自動車産業の構造変化、そしてドイツ車ブランドが苦戦する裏にある技術的・文化的背景について考えてみましょう。

BYD SEALのエクステリア〜デイタイムランニングランプ
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この記事の要約

  • 独合弁工場の稼働率急落:かつて100%(フル稼働)だったドイツ車メーカーの中国工場稼働率が、2025年には50%を割り込み、2026年には46%まで落ち込む見通し。
  • 中国車(EV/NEV)への急速なシフト:若年層を中心に「(ドイツ車は)親世代の乗る古い車」と認知され始め、車載ソフトウェアやEV性能に勝る中国地場ブランドへ支持が移行。
  • 工場閉鎖と構造調整:VWは南京工場の閉鎖や烏魯木斉(ウルムチ)拠点を売却。BMWやメルセデスも人員や操業の規模縮小(オペレーション調整)を検討中。
  • 中国メーカーの海外輸出と欧州直接進出:中国メーカーは国内過剰分を海外(年間最大1,000万台規模)へ輸出しつつ、関税回避のためスペインやハンガリーなど欧州現地工場の建設を急ピッチで展開。

フル稼働だった黄金期から一転、工場稼働率46%の衝撃

自動車業界調査会社、Mobility Globalが独Automobilwoche誌向けにまとめた予測によると、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ、VWなどの独ブランドが中国で展開する合弁工場の2025年稼働率は50%未満に急落し、さらに2026年には46%まで落ち込んだうえ、2030年には44%まで下がると予測されています。

一方、同じ国内の過剰生産能力という課題を抱えつつ、中国独自のエレクトリック&ソフトウェア技術を武器に世界市場へ大打撃を与える中国ブランドは年間1,000万台規模の輸出と欧州現地生産の拡大”による独自の活路を見出している、とのこと。

2010年当時は中国のドイツ系工場群が100%のフル稼働を誇っていたことを考えると、わずか15年ほどで市場のパワーバランスが完全に逆転したことがわかります。

ファーウェイの中国車
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なぜドイツ車は中国市場で選ばれなくなったのか?

中国の若年層や新世代の自動車購入層にとって、ガソリン車時代の象徴だった「ドイツのプレミアムブランド」は、もはやステータスシンボルではなくなりつつあり・・・。

  1. ソフトウェアとコネクテッド技術の遅れ:中国ユーザーが重視する車載OS、ナビゲーション、自動運転補助、先進AIエンターテインメントにおいて、地場EVメーカーの進化スピードにドイツ勢が追いつけていない
  2. 価格対スペック(コスパ)の圧倒差:バッテリー技術やEVプラットフォームのコスト競争力で中国ブランドが圧倒しており、ドイツ製のEVは「高価な割にスペックが控えめ」と評価される場面が増えている
  3. ロングホイールベースモデル等の特別仕様効果の薄れ:メルセデス・ベンツが中国専用の電動CLAロングホイールベース(L)の生産を中断・一時停止したと報じられるなど、従来の「後席重視の高級モデル」という手法だけでは太刀打ちできなくなっている
ついにメルセデス・ベンツのグリルも光る。中国版ロングボディ、「EクラスL」が発表に。随所に中国市場を意識した装備が追加される
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撤退・縮小を余儀なくされる独メーカーのリアル

この稼働率低下を受け、すでに実効的なアクションが始まっていて、VWは上汽集団(SAIC)と共同運営していた南京工場の閉鎖を決め、烏魯木斉(ウルムチ)の拠点も売却済み。

BMWやメルセデス・ベンツは「工場閉鎖」そのものは否定しているものの、シフト削減や人員見直しといったオペレーションの最適化を余儀なくされているというのが現状です。

なお、中国自動車メーカーが所有する自動車工場の平均稼働率は(国内の競争激化により)2010年の約90%から2026年には約55%前後まで低下すると見込まれていて、しかしこの「国内市場の過剰生産」という課題に対し、ドイツ勢と中国勢では対応策に大きな違いが出始めている、というのもまた直近の状況。

項目ドイツ系メーカー(中国合弁)中国地場系メーカー(BYD等)
工場稼働率推移2010年:100% → 2026年予測:46%国内全体平均:2010年 90% → 2026年 55%(海外需要で補完)
主な対応策工場閉鎖(VW等)、生産ライン縮小、オペレーション調整海外輸出の爆発的拡大、現地生産化
海外輸出台数(中国からの輸出は一部モデルに限定)前年700万台から年間1,000万台規模へ拡大
欧州での展開方針欧州本国工場の再編・電動化転換の遅れハンガリー・スペイン等への欧州工場新設で関税回避
強み・弱み内燃機関(ICE)のブランド力低下、ソフトウェアの遅れ圧倒的なEV/PHEV価格競争力、開発スピード、電池技術
フォルクスワーゲン ID.4のリアとエンブレム
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中国メーカーが切り拓く「世界輸出」と「欧州現地生産」の打開策

自国の工場稼働率が低下する中、中国自動車ブランドは海外市場への積極進出によってこの課題をクリアしようとしていて・・・。

  • 輸出1,000万台時代の到来:前年の700万台からさらに輸出を拡大し、今年は最大1,000万台規模の輸出を目指す勢い。これによって工場の稼働率を引き上げる
  • 関税リスクを回避する現地生産:欧州連合(EU)による追加関税などの政治的リスクや物流コストを抑えるため、スペインやハンガリーといった欧州圏内に自社工場を相次いで建設し、消費者の近くで製造する体制を強めている。※これによって中国内の工場稼働率が上がるわけではないがシェアの拡大につながり将来的な競争力が拡大する

そして中国自動車メーカーにこういった動きが可能となるのは現在の「世界中でのシェア」が関係しており、ドイツの自動車メーカーは世界中のほとんどの市場で「(この数十年で)シェアを最大化」しており、あとは「ほかに奪われるのみ」に近い状態。

一方で中国の自動車メーカーは中国内でこそシェアを拡大しているものの、欧州では「まだまだ」、東南アジアや中東でもシェアは高くなく、日本やアメリカでは「ほぼゼロに近い」状況であり、拡大の余地が大きく残されているというわけですね。

簡単にいえばドイツの自動車メーカーは「世界中で防戦に徹さねばならず」、反面中国の自動車メーカーには「攻めるべき市場がたんまりと残されている」。

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なぜ「ブランド力」だけではEV時代を勝てないのか?

今回のニュースは単なる「ドイツの自動車メーカーの中国での不調」にとどまらず、「EV時代における自動車の価値基準の変化」を浮き彫りにするもので・・・。

  1. 「機械的クオリティ」から「デジタル体験」への変化:ガソリン車時代、ドイツ車は「優れたエンジン音」「緻密なサスペンション調律」「重厚なドアの閉まる音」といった職人技的クオリティで差別化していたものの、しかし、EV時代においてはモーター駆動による静粛性が平準化されたため、差別化のポイントが「自動運転の賢さ」「スマホのように多機能な車載画面」「OTA更新による機能追加」といったIT分野へシフトした
  2. 「プレミアム」の再定義:これまで中国で「独御三家(御三家=ベンツ・BMW・アウディ)」を所有することは強力なステータスで、しかし現在のZ世代をはじめとする若年層はテスラやBYD、NIO、Li Auto、Xiaomi(シャオミ)などのスマートEVを「最新のガジェット」として所有することに先進性と価値を見出している※中国市場は全般的にテクノロジー志向であり、テクノロジーに対するプライオリティが高い

結論

アウディ、BMW、メルセデス・ベンツといった世界的プレミアムブランドが中国で苦戦し、工場稼働率が50%を切るという現実は、世界的な自動車産業のパラダイムシフトを如実に物語っています。

かつて世界中の自動車メーカーがお手本としていたドイツの「最高峰の機械工学」は、ソフトウェアと電動化が支配する現代の中国市場においてその威光を保つことが難しくなっているというのが現在の状況であり、その一方、過剰な生産能力をチャンスに変え、年間1,000万台規模の輸出と欧州現地生産で一気にグローバルシェアを獲りにいく中国メーカーのスピード感と実行力は既存の自動車メーカーにとって脅威以外の何物でもありません。

ドイツ車ブランドがこの危機を脱し、次世代のEV・スマートカーとして再び世界をリードできるのか。あるいは中国メーカーが世界の自動車産業の地図を完全に書き換えてしまうのか――。ぼくらは今、自動車100年の歴史における最大の転換点を目撃しているということになり、大きな構造の変革に直面しているというわけですね。

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参照:CARSCOOPS

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