
| 世界で最も環境規制が厳しいカリフォルニアで「また新たな」法案が可決 |
幸いなことにまだ日本では「海の向こう」の出来事である
「愛車のタイヤ交換時、もっとグリップの良いタイヤやコストパフォーマンスに優れたタイヤを自由に選びたい」——そんなドライバーの当たり前の選択肢が、法律によって制限される時代が迫っているというのが今回のニュースです。
2026年8月中旬、アメリカ・カリフォルニア州のエネルギー委員会(CEC)が州内で販売される市販の交換用タイヤに対し、新車装着時(OEM)と同等レベルの低い「転がり抵抗」を義務付ける規制案を全会一致で可決したと報じられ、地球環境保護と燃費向上を目的としたこの決定ではありますが、現在市場に流通しているタイヤの約70%がクリアできないという厳しい内容だといい、クルマ好きや日常的にクルマを使うドライバーにどのような影響が及ぶのか、その詳細と背景に迫ってみたいと思います。
この記事の概要
- カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)が交換用タイヤの「転がり抵抗規制」を全会一致で可決
- 新車装着時の環境性能を求める規制により、現在市場にあるタイヤの約70%が基準外となる見込み
- 規制は2段階で導入:フェーズ1(2029年〜)から段階的に強化され、フェーズ2(2033年〜)で大幅制限
- モータースポーツ用やスタッドレス、オフロードタイヤなどは対象外となる特例措置も設定
- 政府は「ガソリン代削減で還元される」とする一方、タイヤメーカーや業界は価格高騰と寿命低下を懸念

カリフォルニア州「交換タイヤ転がり抵抗規制」の全貌
自動車メーカーが新車を開発する際、燃費規制をクリアするために転がり抵抗の少ない(転がりやすい)タイヤを標準装着させるケースが増えているというのが現在の状況ではありますが、しかし、ユーザーがいざタイヤを交換する段になると、安価なタイヤやグリップ性能を重視したタイヤを選ぶことが多く、新車時の環境性能が失われてしまう点にCECが着目したというのがこの法案の限定です。
今回の法改正は、交換用タイヤであっても新車時と同等の環境効率を維持させることを目的としていて・・・。
導入スケジュールと数値基準
規制は2段階のフェーズに分けて段階的に施行されます。
- フェーズ1(2029年〜2033年)転がり抵抗係数(RRC)の上限を 9.1 N/kN に設定
- フェーズ2(2033年以降)上限をさらに引き下げ、7.2 N/kN に設定
この「7.2 N/kN」という基準は、現在の新車装着タイヤの平均的なレベルとされており、結果として現在市販されている一般的な交換用タイヤの約70%が基準を満たせなくなり、同州での販売が禁止される可能性が指摘されています。

対象外(例外)となるタイヤ
現時点ではすべてのタイヤが禁止されるわけではなく、特定の用途や愛好家向けのタイヤには例外規定が設けられていて・・・。
- モータースポーツ・競技用タイヤ
- 冬用(スタッドレス)タイヤ
- 中古タイヤ・リトレッドタイヤ
- 二輪車(オートバイ)用タイヤ
- 最高速度99mph(約159km/h)制限の大型オフロードタイヤ
このようにスポーツ走行や特殊な用途は保護されているものの、一般的な街乗りや高速道路を走る乗用車・SUVの選択肢が大幅に狭まることは避けられないという状況です。

性能・費用・市場への影響と対立する主張
規制を推進する州政府と、タイヤメーカーおよび自動車パーツ市場(SEMA等)との間では、コストや耐摩耗性を巡って主張が大きく食い違っていて・・・。
規制の概要・経済影響比較
| 項目 | 政府(CEC)側の主張 | タイヤメーカー・業界側の主張 |
| タイヤ本体の価格 | フェーズ1で+$1.50、フェーズ2で+$6.50程度の微増 | 高性能ゴムや新技術が必要で、セットあたり数万円単位の値上げになる懸念 |
| トータルコスト | ガソリン代節約により、タイヤ寿命全体で約179ドル(約26,000円)浮く計算 | エコタイヤは摩耗が早く交換サイクルが早まるため、結果的に出費が増える可能性 |
| ウェットグリップ・安全面 | 安全基準(ISO規格)も併設しており、グリップ性能低下は防げる | 転がり抵抗低減とウェットグリップ・耐摩耗性の両立は技術的トレードオフが存在する |
| 情報表示制度 | 家電の「省エネラベル」のように、効率を示す「リーフ(葉)マーク」表示制度を導入予定 | 表示義務は任意のため、データベース参照が必要になるケースがある |

タイヤメーカーが懸念する「トレードオフの壁」
タイヤの設計には「トレードオフ(相克関係)」が存在し、転がり抵抗を減らして滑りを良く(転がりやすく)しようとすると、一般的には路面を掴む「グリップ力」や、タイヤの減りにくさを示す「耐摩耗性」とのバランスが難しくなります。
グッドイヤーなどの大手メーカーは、「低転がり抵抗に特化したタイヤは溝の減りが早い傾向があり、結果として交換頻度が増えてドライバーの出費がかさむ」と指摘しており、今回の法案はタイヤメーカーをも巻き込んで大きな論争を呼んでいるという状況となっているわけですね。
結論:カリフォルニアの規制は日本や世界へ波及するのか?
今回の法律可決は一州の出来事に見えますが、「カリフォルニアで起きた規制は、いずれ世界基準になる」というのが自動車業界の通説です。
かつて排ガス規制やEV販売義務化においても、カリフォルニア州の厳しい基準が全米他州(ワシントン州やロードアイランド州など)や欧州、ひいては日本市場の安全・環境基準にまで大きな影響を与えてきたという実績も。
さらにタイヤメーカーとしても、カリフォルニア専用のタイヤとそれ以外の地域用を分けて製造するより、世界統一で厳しい基準に合わせて開発を進める方が効率的という理由もあり、こういった観点から「この流れが世界中に波及することは避けられない」と見られています。

知っておきたい関連知識:日本のタイヤ「ラベリング制度」
日本でも日本自動車タイヤ協会(JATMA)による「低燃費タイヤ等のラベリング(表示方法)制度」が存在し、ここでは転がり抵抗性能を「AAA」から「C」まで、ウェットグリップ性能を「a」から „d“ まで分類し、転がり抵抗等級が「A」以上かつウェットグリップが「d」以上のものを「低燃費タイヤ」と定義しています。
日本の制度は現状「ユーザーへの情報提供(選択肢の提示)」にとどまっていますが、アメリカで法的な強制力が持たされたことで、今後は日本国内で流通するタイヤのラインナップや価格帯にも間接的な影響が及ぶ可能性が考えられます。
「環境性能」と「走りの楽しさ・手頃な価格」。タイヤ選びというドライバーにとって身近な領域で、そのバランスをどう取るべきなのか、今後のタイヤメーカーの技術革新と他地域の動向に注目が集まります。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
【今さら聞けない】タイヤ側面(サイドウォール)の記号と数字の意味、選び方を完全解説【保存版】
| タイヤ側面には様々な「重要な」記号や数字が刻まされている | この記事の要約 タイヤ側面の数字や記号には安全・性能に直結する重要情報が詰まっている サイズ表記・耐荷重・最高速度・製造年週まで読み取 ...
続きを見る
-
-
気温の上下でタイヤ空気圧はどれくらい変化する?夏場の気温上下には要注意、空気圧警告を放置すると危険な理由と正しい点検法とは
Life in the FAST LANE. | 真夏や真冬には空気圧センサーが「異常値」を出しやすい | その「異常」の理由とは 「季節の変わり目や寒波が訪れた朝、愛車のメーターパネルに見慣れない警 ...
続きを見る
-
-
新品のタイヤに生えている「ヒゲ」。このヒゲはいったい何のために存在するのか、そしていったい何の役割があるのか
| このヒゲには立派な名前があり、存在にはその「理由」がある | ただし存在する理由はがあったとしても、タイヤの性能や機能には影響を及ぼさない さて、新車が納車されたときにいつも思うのが「タイヤについ ...
続きを見る
参照:jalopnik











