
| ただしどちらが成功するかは現時点ではまったくわからない |
さらに純粋な「勝ち負け」では物事を測ることができないのも現代の特徴である
モントレー・カーウィーク開催中にはいくつかの大きな話題があり、ひとつはフェラーリのEV、ルーチェが64億円という巨額で落札されたこと。
そしてもうひとつはランボルギーニが「(EVとして発表された)ランザドールの市販モデルにつき、EVではなくPHEVで発売する」という決定事項を述べたこと。
これは非常に注目すべき事象だとも考えており、ここでそれぞれの背景や、各ブランドに及ぼすであろう影響について考えてみましょう。
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ランボルギーニが「ランザドール」をEVからPHEVへ変更し発売すると「最終決定」。顧客からの要望を反映し「大好評を得ている」
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この記事の要約
- ランボルギーニは「売れない」と判断しEVの発売を中止
- 一方でフェラーリは顧客が「求めていない」と言われるEVを発売
- 現在の自動車業界は不安定かつ流動的で、その戦略が未来を大きく左右する
なぜランボルギーニは「EVを回避」?
まず、ランボルギーニが「ランザドールをEVとして発売しない」と決めた背景にあるのは、ポルシェがEVの販売で苦戦していること、そしてポルシェが出資し「EVハイパーカーの未来そのもの」とされたリマックのEV(ネヴェーラ)が苦戦し、オークションにおいても大きく値を下げていること。
ただし両方とも「鳴り物入りで」デビューし、ブランドの未来を変革し、ひいては自動車業界をも上書きする存在であるとも目されていたわけですね。
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しかしながら現実は「予想とは異なり」、ポルシェのEVに至ってはポルシェの屋台骨を揺るがす混乱すら引き起こしてしまい、よってポルシェは「今後のEV計画の見直し」を大きく迫られることとなっていて、「EVとして計画していた新型車を」PHEVとして発売するという決定を下します。

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そしてポルシェと同じくフォルクスワーゲングループに属するランボルギーニとしては、「ポルシェの二の舞にならないよう」ポルシェの経験を反映させるという判断を取ったのだと考えられ、VWグループとしては「(グループ内において唯一の好調なブランドでもある)ランボルギーニの利益まで失うことはできない」と考えたのかもしれません。
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ランボルギーニは珍しく「リスクを取らなかった」
かくしてランボルギーニは「安全策」を取ったということになりますが、これはある意味で「ランボルギーニらしくない」。
というのもランボルギーニのDNAのひとつに「UNEXPECTED」というものがあり、これはつまり「予想外」。
予想の範囲内ではなく予想外のクルマ(ウラカン・ステラートなど)を世に示し、あたらしい価値観を創出することこそがランボルギーニの存在意義でもあったのだと考えられ、しかし「ランザドールをEVからPHEVへと変更し発売する」というのは「やっぱり」という感じでもあり、つまり「予想内」ということに。

フェラーリは常に「未来」へと向かっている
そして一方のフェラーリですが、今年5月には誰もが驚いた「ルーチェ」を発表しており、これは価格、ルックス、パッケージングなどすべてが「予想外」。
その理由としては、フェラーリがこれから未来へと向かうに際し、新しい顧客を獲得せねばならないと考えたからで、既存の顧客ベースに加え、新しい「別の」顧客基盤を構築せねば生き残れないと考えたから。
つまり、ルーチェはフェラーリの向かう先を示すクルマではなく、フェラーリが新しい市場を切り開くための”今までの路線にプラスされる”別の世界線の存在ということになり、ここは大きく誤解されている部分です(多くの人が、今後のフェラーリはルーチェのようになる、あるいはルーチェこそがフェラーリの未来を示す姿であり、その方向性に同意できない、と考えている。しかしルーチェはこれまでのフェラーリの延長線上にある存在でも、現在のフェラーリの未来の姿を示す存在でもなく、現時点ではスタンドアローンだと考えたほうがいい)。

フェラーリは「リスクを取った」
そしてこのルーチェはフェラーリが「先へ進むために必要だから」作ったクルマではありますが、ここで重要なのは「顧客の声を聞いて」作られたクルマではない、ということ。
フェラーリはあまり自らアピールする企業ではなく、そのためいままでの歩みの中で取り入れた技術革新については大きく知られるものではありませんが、世界初のアルミフレームの量産車への採用、世界に先駆けての電子制御デフやマネッティーノ、ロボタイズドトランスミッション(F1)の実用化、各種エアロデバイスにハイブリッドの導入などの実績があり、そして実は自動車業界においてはじめて「アップルカープレイ」を採用したのもフェラーリです。※このあたりは話が長くなるので別の機会に述べたいと思う
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さらにはショートホイールベースを実現し旋回性能を向上させるためのV6エンジンなど、常に顧客の予想外のプロダクトを作りだしてきたという歴史を持つのがフェラーリで、つまるところ「常に顧客が予想しなかったものを生み出してきた」のがフェラーリであり、その最新作がルーチェということに(フェラーリというと伝統的というイメージがあるが、実は非常に革新的な企業である)。

そしてフェラーリはスポーツカーの歴史を作ってきたとも言える存在ではありますが、その過程において様々な「フェラーリ初」というクルマが存在し、そしてフェラーリの歴史上、もっとも大きな”フェラーリ初”がやはりこのルーチェ。
実際のところ、64億円という落札価格は「チャリティ」という事実に加え、なによりも「フェラーリが初めて挑戦するEVという分野のはじめての存在であり、さらにはその第一号車」というところが評価されたからだと考えられますが、もうひとつ触れておかねばならないのは「64億円に至るまでに入札バトルが繰り広げられた」という事実であり、つまるところ、このルーチェ、そしてフェラーリの挑戦そして歴史に対し、それだけの価値を見出している人が「それだけいる」という事実がここに存在します。
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「顧客の要望を聞いた」ランボルギーニ、「顧客の先」をゆくランボルギーニ
こういった流れを見るに、直近のフェラーリとランボルギーニはまったく異なる思想にて動いているということになりますが、顧客の声を聞いてリスクを回避したランボルギーニと、未来を創るためにリスクを取ったフェラーリとの違いがどうあらわれるのかは気になるところ。
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目下のところ、ルーチェは「失敗作」と評されながらも新しい顧客を獲得しているのも事実であり、これはフェラーリの目論見通りといえるのかもしれません。
そして現在の「ガソリン+MT」ブームがやってきて、マクラーレンがそれに追随するというのもちょっと前まで考えられなかった状況ではありますが、つまり「この先に何が起きるのか、誰もわからない」のが今の自動車業界です。
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加えて、「何が起きるかわからない」ということは、これからEVおよび電動化に対する注目度が高まる可能性もあるということで、実際にベントレーは「一周回って」EV人気が高まると予想してEVを発売することに(もちろん、VWグループの一員らしく”ハイブリッド”を他モデルで展開するという保険もかけている)。
実際のところ、中国や東南アジアでは「ガソリン車はうるさくて臭い」として「スマートなEV」を好む傾向があるといい、この流れが今後世界に拡大することがないとも言えません。
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「嗜好」は地域によって大きく異なる
なお、現在の自動車市場は「グローバル」にて考える必要があり、というのも現在はかつてのように「一部地域だけが力を持っていたり、一部地域だけで販売する」わけではないから。
そして地政学的リスクを回避することを考えても世界規模で自動車を販売することを考えねばならず、よって同時多発的に発生する様々な需要に答える必要があるのもまた事実。
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さらに世界中では嗜好が大きく異なり、全く反対の需要が存在することも忘れてはなりませんが、よく言われるのは「日米欧では運転する楽しみを求める傾向があるが、中国では運転しなくても楽に移動できるクルマを求める」。
こういった状況において自動車メーカーは非常に難しい決断を求められることになり(すべての需要に対応することはコスト的に不可能である)、今ほど経営判断が重要となる時代はほかにないのかもしれません。
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