
| 中東情勢の緊迫によって原油価格は上昇を続ける |
現代の「石油危機」とは
日常の移動や物流を支える燃料価格はぼくらの生活コストや世界的なインフレ率にダイレクトに跳ね返ってくることとなり、とくに燃料を輸出に大きく頼る日本にとっては大打撃。
ここ最近、エネルギー市場を揺るがす深刻なニュースが立て続けに報じられていて、世界的な原油高騰がさらに加速する懸念が高まっていますが、これは中東での地政学リスクの急速な高まりが原油の供給体制を直撃しているからであり、ここでは今回の世界的な「石油危機」の背景で何が起きているのか、その実態と今後の影響について考えてみたいと思います。
この記事の要約
- サウジアラビアの東西パイプラインが反政府勢力フーシ派の攻撃を受けて停止し、世界の石油供給の約4%がストップするリスクが発生
- 原油価格が20%上昇し、ガソリン / ディーゼル車用燃料や中古EVの市場価格にも広範囲に影響。
- 中東和平交渉の中断や米国製油所の停電トラブルなど不確定要素が重なり、短期間での原油価格沈静化は困難な見通し

世界的な原油供給危機の概要
現在、世界の原油市場で最も懸念されているのが、サウジアラビアを横断する「東西パイプライン(East-West Pipeline)」の停止事案。
このパイプラインは、ペルシャ湾側の油田からホルムズ海峡を経由せずに紅海側へ原油を運ぶための重要な迂回路として機能してきましたが、イエメンの反政府勢力であるフーシ派による攻撃を受けたことでサウジ当局は同パイプラインの操業停止を余儀なくされたというのが直近の状況です。
これによって世界の石油供給の約4%に相当する量が一時的に市場から消え去る恐れが出ており、世界的なエネルギー需給のひっ迫に拍車をかけている、というわけですね。
原油価格と日本のガソリン価格の推移は?
2026年8月中旬~9月15日現在の約1か月について、原油価格と日本の燃料価格(資源エネルギー庁による平均値)を並べるとかなり興味深い動きになっていて、特に重要なのは原油が8月中旬の80ドル台前半から9月14日にはWTIが100ドルを突破した一方、日本のガソリン価格はまだほとんど上昇していないこと。

この1か月の推移
| 調査日 | WTI原油 | レギュラー | ハイオク | 軽油 |
|---|---|---|---|---|
| 8/17 | 約84.5ドル | 169.8円 | 180.7円 | 159.3円 |
| 8/24 | ― | 169.9円 | 180.7円 | 159.3円 |
| 8/31 | ― | 170.0円 | 180.8円 | 159.4円 |
| 9/4 | 92.69ドル | ― | ― | ― |
| 9/7 | ― | 170.0円 | 180.9円 | 159.5円 |
| 9/8 | 93.03ドル | ― | ― | ― |
| 9/9 | 96.05ドル | ― | ― | ― |
| 9/10 | 102.48ドル | ― | ― | ― |
| 9/11 | 100.05ドル | ― | ― | ― |
| 9/14 | 101.39ドル | ― | ― | ― |
日本では現在、燃料油価格の緊急的な激変緩和措置(補助金)が取られていて、(いま発表されている最新値の)9月7日時点でレギュラー全国平均は170.0円/Lですが、これは「末端価格が上がらないよう」調整された結果の数字であり、以下のようなイメージで日本政府はかなりこまめに補助金を調整し安定化を図っているということに※9月10~16日分については、政府の補助額が36円/Lに拡大されている
原油価格上昇 → 本来ならガソリン価格上昇
↓
政府補助金が増額
↓
店頭価格への転嫁を抑制

しかしここで考慮すべきは、9月14日にはサウジアラビアの重要な東西パイプラインが攻撃を受けて停止したことから原油価格が一段と上昇(8/17比では20%)したものの、9月7日時点の170円/Lというガソリン価格は現在の原油価格をまだ十分に反映していないということであり、もしかすると今後、日本政府がいかに補助金を拡大しようとも「小売価格の上昇をカバーできないほど」末端価格が上がってしまうことも予想されます。
燃料市場における「現状」
今回の供給障害が過去の価格変動と一線を画す点は供給をカバーすべき迂回路や補完インフラが同時に脅かされている点にあり・・・。
- ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の二重リスク:通常であれば、海域の不穏な動きに対して陸上のパイプラインへ輸送ルートを振り替えることで危機を回避するものの、しかし今回はその迂回路である東西パイプラインが直撃された上、紅海の入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡でもフーシ派による実効支配が強まっており、安全な海上ルートが著しく制限されている
- 製油所の稼働余地のなさ:世界中の製油所がすでに上限に近い稼働率で運用されているため、米イリノイ州のジョリエット製油所のような主要施設の急な停電トラブルが発生した際、他施設で代替生産を行う余裕がほとんど残されておらず、一気に「燃料不足」に
このように、供給網のあちこちで「遊び」がない状態が重なっており、価格上昇圧力が極めて強まりやすい構造になっているということになり、そのため「供給が4%細くなっただけで」原油価格が20%も上昇してしまうというわけですね。

補足情報
エネルギー市場を巡っては、インフラ被害だけでなく外交面での停滞も懸念材料となっていて、オマーンが仲介を予定していたイランとの和平対話の開催が見送られたとも発表されており、中東地域における外交的な解決の糸口を当面見出しにくい状況です。
また、原油価格の上昇はガソリン車オーナーだけでなく、中古EV(電気自動車)やハイブリッドカー市場の需要増加による価格吊り上げなど、一見直接関係のない分野へも波及し始めており、まさにこれは「バタフライエフェクト」。
さらに国際的な政治摩擦や軍事支援の可否を巡る各国の動向も複雑に絡み合っていて、エネルギー危機が単なる経済問題にとどまらず、世界情勢全体の安定性に大きな影を落としており、いっそうの「先行き不透明感」を作り出しているのだとも考えられます。
結論
今回の原油価格の高騰はサウジアラビアの主要インフラ停止や中東情勢の緊張化、そして米国内での製油所トラブルなどが重なった、極めて深刻な事態を示しています。
ガソリンやディーゼル価格の上昇はぼくら生活費や物価全体に直結する重要な課題でもあり、今後のサウジ側パイプラインの復旧ペースや中東での安全保障の動向について、引き続き注視してゆく必要がありそうですね。

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参照:資源エネルギー庁











