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V16エンジンを積む市販車は「シロン後継モデル」が自動車史上ではわずか4例目、84年ぶり。これまでのV16エンジン搭載車、コンセプトカーを振り返る

2024/03/04

V16エンジンを積む市販車は「シロン後継モデル」が自動車史上ではわずか4例目、84年ぶり。これまでのV16エンジン搭載車、コンセプトカーを振り返る
BUGATTI

| そもそも、なぜほかの自動車メーカーはV16エンジンを積まず、しかしブガッティにはそれができるのか |

なぜなら、それは「ブガッティだから」

さて、ブガッティは先日「シロン後継モデルとなるハイパーカーに、V16エンジンを搭載する」と発表していますが、これは「あらゆるエンジン、あらゆるモデルにおいて(マルセデスAMG SLでさえ)ダウンサイジングが進む中で」のアナウンスであり、自動車に関わる全ての人々にとって”衝撃”に近い驚きであったと思います。

実際のところ、多くの人々が「W16エンジンはもう存続の余地がないだろう」「よってシロン後継モデルに積まれるのはV8もしくはV10であろう」と考えており、どう考えても現在のご時世にて「16気筒など許されるはずがない」という風潮があったわけですね。

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V16エンジンを搭載した市販車はこれまでに3台しか存在しない

ここでV16エンジンについて振り返ってみると、自動車市場「量産車でV16エンジンを搭載した」のはわずか3台しか存在せず、それらはいずれも第二次大戦前に発売され、そのうちの2台はキャデラックが発売したクルマ(チゼタV16Tは生産台数が11台と少なく、よって量産車としてカウントすることは難しい)。

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まず自動車市場最初のV16エンジン搭載車は7.4リッターV16エンジンを搭載したキャデラック シリーズ452(1930年)で、比較的販売が好調であったと言われるものの、直後に発生した大恐慌によって「販売終了」へ。

その後1931年に登場したのはマルモン シックスティーン(Marmon 16)なるクルマであり、このエンジンは8リッターV16(200馬力)。※400台が生産されたというので、けっこう人気があったようだ

そして今のところ「自動車史上、最後に発売されたV16エンジン搭載車」は1938年のキャデラック シリーズ90ですが、搭載されていたのは7.1リッターV16エンジン(185馬力)で、このクルマを最後にV16エンジンは表舞台から姿を消してしまいます。

参考までに、レーシングカーだと1930年代に「アウトウニオン タイプA/タイプB/タイプC」がスーパーチャージャー付き6リッターV16エンジンを搭載していることで知られています。※動画ではリアタイヤが「ダブル」となっていることがわかるが、それが必要なくらい強烈なトルクを発生するクルマである

もう一つ参考までに、マセラティは(キャデラックよりも1年早く)4リッターV16スーパーチャージャー付きエンジンを積む「マセラティV4」を発表しているものの、こちらの生産台数は2台のみ(1台はレーシングカー、1台はロードカー)にとどまるのでやはりノーカウント。

さらに補足しておくと、ブリティッシュ・レーシング・モータースからは14.9リッターV16、許容回転数12,500回転(500馬力)というトンデモカーがリリースされており、しかしこちらも量産車とは捉えにくいのでノーカウント。

加えてデヴェル・シックスティーンも量産車とは定義出来ないと考えています。

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ただしコンセプトカーや試作車ではV16エンジン搭載が検討されたことも

その後何度かのオイルショックを経てエンジンはダウンサイジングへと向かい、しかし80年代後半から訪れた「大パワーブーム」によってマルチシリンダー大排気量エンジンが脚光を浴び、ここでまず登場したのが「シークレットセブン(あるいはプロジェクト・ゴールドフィッシュ)」として知られるBMW 7シリーズにV16エンジンを積んだクルマ。

エンジンそのものはフロントに積まれるものの、エンジンが巨大であるためにフロントに冷却システムを積むことができず、クーリングデバイスをリアに移設したためにトランクスペースが消滅してしまったという奇っ怪なクルマであり、理由は明かされていないものの「結果的に市販はなされず」。※同時期にはメルセデス・ベンツ、ベントレーもV16エンジンの搭載を検討していたと言われる

その後2003年になるとキャデラックがその名もズバリ「シックスティーン」なるコンセプトカーを発表しており、これは1,000馬力を発生させる13.6リッターV16エンジンを搭載した一台。

2004年にはV16エンジンを搭載したロールス・ロイス「100EX(ドロップヘッド)」が登場するもののやはり市販化はなされておらず、よって今回ブガッティがV16エンジン搭載ハイパーカーを発売したならば、それは「自動車がこの世に登場して以来、量産車として4番目の例」となることを意味します(そして第二次世界大戦後に16気筒量産エンジンを生産した唯一のメーカーとなる)。

いったいなぜV16エンジンをどこも市販しなかったのか

こうやって見ると「V16エンジンを積んだ市販車」がいかに少ないかということに驚かされ、そしてブガッティのV16エンジンが「時代に逆行している」だけではなく「この84年で唯一に例になる」ということにびっくりでもありますが、そこで気になるのがなぜ「今までほかの自動車メーカーがV16エンジン搭載車を発売しなかったのか」。

これらにはいくつか理由があり、まずひとつは「コスト」の問題。

開発にかかる費用、生産にかかる費用が天文学的となり、よってこれを搭載するクルマの価格も天井知らずになってしまうわけですね。

加えてユーザーに対しても高額なメンテナンスコストが負担としてのしかかることは間違いなく、であれば自動車メーカーとしては「同じ出力とトルクを得られる」V8やV12ツインターボエンジンを使用したほうが理にかなっているから(実際にほとんどの自動車メーカーが自社の高級車やハイパフォーマンスカーに対してこの選択を行っている)。

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Image:BMW

そしてもうひとつは「パッケージング」の問題で、上述のBMW「シークレットセブン」のように、冷却にかかるデバイスのために車両スペースが犠牲になってしまい、実用性やスタイリング、重量配分に大きな制約が生じることになるのですが、これもV12やV8エンジンを代用すれば「問題なく」解決可能です。

ブガッティは「V16エンジン」の搭載に関してはなんら障壁がない

ただ、ブガッティの場合は「コスト」「パッケージング」ともに問題が生じるとは思えず、というのもブガッティの顧客は(ブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティの掲げた信念のように)「比肩する存在が他にない」クルマを求めていて、そのためにはどれだけの金額であっても支払うことができ、かつこのクルマで旅行に行くわけではないので荷物が載らなくとも全く気にしないと考えられるため(顧客がブガッティに求めるのは比類なき孤高の存在であることで、コストパフォーマンスや利便性ではない)。

実際のところ、ブガッティが数年前に公表したデータだと、ブガッティの顧客は平均して84台の自動車、3機の飛行機(プライベートジェットなど)、1隻のヨットを保有しているといい、こういった人々にブガッティが提供するのは「V8やV12エンジンを積んだ、他メーカーが作っているようなクルマ」であってはならないわけですね。

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参照:CARBUZZ, Bugatti, etc.

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