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| 実車が生まれる前に「走りの本質」は決まる |
シミュレーターの導入によって「より安全に、より正確に、より速く」新型車の開発が可能に
1,800馬力を発揮する新世代のPHEVハイパーカー、ブガッティ「トゥールビヨン(Tourbillon)」。
最高速度445km/hという異次元のパフォーマンスを誇るこのマシンの足回りやハンドリングが「一体どのように磨き上げられているのか」、その一部が今回ブガッティによる公式コンテンツから明らかになり、トゥールビヨンの開発を追うドキュメンタリー「A New Era〜Immersive Dynamics(最新エピソード)」では、過酷な実車テストを始める「前段階」におけるシミュレーション技術の驚異的な役割が示されています。
かつてのクルマ作りは「試作車を作り、サーキットを走り、壊れては直す」の繰り返しであったものの、現代のハイパーカーの開発においては全く事情が異なり、コンピューター上での高度な”バーチャル開発”が走りのクオリティを極限まで高める最大の鍵を握っているということになりそうです。

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この記事の要点(30秒でわかるサマリー)
- バーチャル空間で育まれる次世代ハイパーカー:実車の試作機(プロトタイプ)が走り出すずっと前から、コンピューターと超高精度シミュレーター上で走行性能を徹底熟成。
- 世界の名門サーキットを一瞬で移動:ドイツ・ニュルブルクリンク(ノルドシュライフェ)とイタリア・ナルドのテストコースを、シミュレーター上で数分のうちに切り替えてセットアップを検証。
- VI-grade社製フルモーション・シミュレーターの導入:実車ではリスクの高い限界域や、サスペンション・ブッシュの微細な挙動変化まで、安全かつ100%再現可能な環境で最適化。
- 開発期間の短縮と精度向上の両立:実車のテスト結果とデジタルモデルを相互にフィードバックさせる双方向データ共有にて走りの質感と開発効率を次元の異なるレベルへ。
詳細:ブガッティが実践する先進のシミュレーションプロセス
ブガッティ・リマックの開発チームは、実車の組み立てと並行して完璧な「デジタルツイン(仮想空間上の車両)」を構築し、過酷なテスト工程を網羅している、と説明されており・・・。
1. エンジン・サスペンションデータの完全統合
開発はまず仮想空間からスタートすることになりますが、ベンチテストで得られたV16エンジンの出力データ、サスペンションのキネマティクス(幾何学的運動)やコンプライアンス(剛性・変形特性)に関するデータをトゥールビヨンの仮想モデルに直接インプット。
実車の製造が進むと、今度は実車から得られたデータと仮想モデルの挙動を照らし合わせ、相互に精度を高めてゆくのだそう。

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2. ニュルブルクリンクとナルドを数分で「渡り歩く」
初期セットアップの検証には自社のライディング・シミュレーターを活用し、天候やコースの空き状況、タイヤの摩耗に左右されることなく、何度でも同じ条件でテストを実施することが可能となります。
「動的シミュレーターでのテストは非常に有効です。極めて短い時間でさまざまなセットアップを試すことができます。文字通り、ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェからイタリア南部のナルドまで、ほんの数分で移動できるのですから」
—— ミロスラフ・ズルンチェヴィッチ(ブガッティ・リマック チーフ・テスト&開発ドライバー)
3. VI-grade社製フルモーション・シミュレーターによる「限界域の探求」
さらに高度な解析を行うため、イタリアのシミュレーション専門企業「VI-grade社」の大型フルモーション・シミュレーターを投入。
ドライバーに実際のG(加速度)を感じさせ、実車ではリスクが高すぎる高速域でのダブルレーンチェンジや、ニュルブルクリンクの縁石に乗り上げた際のアライメント変化などを徹底的にシミュレートするそうですが、サスペンション・ブッシュの細かな弾性挙動に至るまで突き詰めることにより、超高速域でも破綻しない「最も落ち着きがあり、路面と強く結びついたハンドリング」を作り上げることが可能になる、と説明されています。

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開発におけるシミュレーターの強み
ブガッティ「トゥールビヨン」は、先進のシミュレーション技術によってその極限性能が裏付けられており・・・。
ブガッティ トゥールビヨン 主要スペック一覧
| 項目 | スペック・詳細 |
| パワートレイン | 8.3L V型16気自然吸気エンジン + 電気モーター3基(PHEV) |
| システム総合最高出力 | 1,800 ps(エンジン:1,000ps / モーター合計:800ps) |
| トランスミッション | 8速デュアルクラッチトランスミッション(DCT) |
| 駆動方式 | 全輪駆動(AWD) / フロント独立2モーター+リア1モーター |
| 0-100km/h 加速 | 2.0 秒 |
| 最高速度 | 445 km/h(リミッター解除時) |
| 車両乾燥重量 | 1,995 kg(軽量カーボンシャーシ・3Dプリントパーツ採用) |
| 生産台数 | 世界限定 250 台 |
シミュレーション開発がもたらす「3つのメリット」
- 1. 高価なプロトタイプの時間とリスクを最小化:一台あたりのコストが極めて高額なプロトタイプ車両を現場で走らせることができる時間は限られており、しかしシミュレーションで事前に80%以上のセットアップを完了させておくことでテストコースでの実走時間を100%有効活用できる
- 2. 環境の単一化による完璧なデータ比較:気温、路面温度、風速、タイヤの摩耗などを完全に一定に保てるため、セットアップ変更による純粋な効果のみを100%再現可能なデータとして抽出できる
- 3. リアルとデジタルの双方向フィードバック:シミュレーターは実走の代わりではなく「実走を加速させるツール」として機能し、サーキットで得た実走データをシミュレーターにフィードバックして精度を高め、そこで発見した新たな知見を持って再びドライバーが実車のハンドルを握ることに

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F1や現代モータースポーツからハイパーカーへ波及するデジタル技術
今回ブガッティが披露した開発手法は近年のFormula 1(F1)やWEC(世界耐久選手権)など、モータースポーツの最前線で磨かれてきた技術そのもの。
かつては「画面上のゲームの延長」と見なされることもあったシミュレーターですが、現在では力学モデルやタイヤ摩擦特性の再現精度が飛躍的に向上し、レーシングドライバーが「実車と区別がつかない」と語るほどのリアリティに達しています。
特にブガッティ・リマックのCEOであるメイト・リマック氏は、電動ハイパーカー「リマック・ネヴェーラ」の開発において高度なデジタル解析とEV制御ロジックを融合させてきたパイオニアとしても知られており、今回もまた伝統的な職人技(V16自然吸気エンジンやスケルトン構造の機械式メーター)、そして最先端のEVシミュレーション技術を見事に融合させたという事実こそ、トゥールビヨンが「自動車工学の新たな金字塔」と呼ばれる最大の理由なのかもしれません。
結論
最高速445km/hという領域において、1/100秒の反応の遅れ、わずかな挙動の乱れは命取りに。
ブガッティ「トゥールビヨン」の洗練された走りは、ただサーキットをがむしゃらに走り込んで作られたものではなく、実車が生まれる前からバーチャル空間で何千キロもの限界走行を重ね、エンジニアとドライバーが対話を重ねてきたからこそ到達できた領域であるとも考えられます。
最先端のデジタル技術と人間味あふれるクラフツマンシップの融合——ドキュメンタリー『A New Era』で明かされたそのプロセスは、今後のハイパフォーマンスカー開発における新たな標準となるのかもしれませんね。
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