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新型ブガッティ「トゥールビヨン」は限定250台、その価格は6.5億円。「我々は次の世紀にも芸術品として評価されるためにあえて困難な道を選びました」。そこに採用される技術とは

新型ブガッティ「トゥールビヨン」は限定250台、その価格は6.5億円。「我々は次の世紀にも芸術品として評価されるためにあえて困難な道を選びました」。そこに採用される技術とは

| トゥールビヨンはヴェイロンよりもシロンよりも「ブガッティ」なハイパーカーである |

これほどまでにブガッティの思想を体現したクルマは

さて、ブガッティは先程「限定台数250台、価格6億5000万円、出力1,800馬力」という驚愕のハイパーカー「トゥールビヨン」を発表したところですが、そのコンセプトやデザインについてはすでにお伝えした通り。※限定台数はシロンの半分である

今回はそこに盛り込まれる技術含むエンジニアリング面について見てゆきたいと思います。

ブガッティが新型ハイパーカー「トゥールビヨン」発表。伝統のW16エンジンではなくV16エンジンを積み、その命名もレーシングドライバー由来ではなく腕時計の複雑機構から
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| その外観こそはシロンに近いように思えるが、コンセプト、エンジニアリング、クオリティはまったく別のクルマである | これまでブガッティが作ってきた数々の派生モデルのノウハウがここに生かされているよう ...

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ブガッティCEOはかく語る

現在のブガッティとしては「2つの組織」存在し、ひとつはフォルクスワーゲングループが商標権を取得した後に設立されたフランスはモルスハイムにあるブガッティ・オトモビル。

そしてもうひとつはそのブガッティ・オトモビルとリマックとが共同にて設立したブガッティ・リマックです。

新会社「ブガッティ・リマック」が11月より正式に発足!資本関係が公開されヒュンダイが「遠縁の関連会社」に、そしてブガッティCEOは交代
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これら両者の棲み分けについては明確に言及がなされていないものの、ブガッティのコントロールはブガッティ・リマック、そしてデザインや開発・生産と販売はブガッティ・オトモビルが行うというイメージかと思います(もちろん開発段階においてはリマックの電動関連技術のヘルプも入る)。

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そこで今回のトゥールビヨンの発表に際し、ブガッティ・オトモビルCEO、クリストフ・ピオション氏は次のように述べています。

このような、時代を超越したインテリアを創り出すために投入された見事なアナログ技術革新に加え、私たちは素材の真正性とあらゆる部分の完璧さに重点を置きました。私たちは俗に『見たものがそのまま手に入る』と言いますが、これはチタンだと思ったものを見たら、それがチタンだということです。あるいは、カーボンファイバーやレザーを見たら、まさにそれであり、常に最高のものです。トゥールビヨンでは、この申し分のない真正性と職人技を次のレベルに引き上げています。まったく新しいブガッティのプラットフォームは、エンジニアリングの卓越性の追求を表現するために、細部に至るまで設計されています。エットーレ・ブガッティの作品のどれを見ても、すべてのコンポーネントが、たとえ一度も目にしたことがなくても、芸術作品であることは明らかです。トゥールビヨンにおいても、それが私たちが意図したものでした。細部に至るまで見事で、ブガッティであることは明らかであり、パッケージングとエンジニアリングの傑作でもあります。

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新型ブガッティ トゥールビヨンに積まれるのは「V16」

現代におけるブガッティは、2004年に発表されたヴェイロン以降「W16エンジン」を搭載してきたものの、トゥールビヨンで新開発のV16エンジンを積んでいます。

そしてこのW16エンジンは発表された当時、世界中のどの自動車用エンジンとも異なっており、4つのターボと驚異的な1,001馬力というパワーによって内燃機関に関する技術の限界に新たなベンチマークを設定することになりますが、そこに採用される技術がいかに高度なものであるかについては、開発から20年経った今でも、これに匹敵するものも複製されたものもないという事実からわかるかもしれません。

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ブガッティがそのW16エンジンを「日本の新幹線の中で思いついた」当時から現代までを振り返る!「当時はそんな出力の市販者用エンジンの存在すら想像できなかった」
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ただし今回のトゥールビヨンについては、その輝かしいW16エンジンに別れを告げ、新しい時代へと向かうためにコスワースの協力を得て8.3 リッター自然吸気V16エンジンを開発し、これに2つのエレクトリックモーターを持つe-Axle(フロント)、リアには1つのモーターを組み合わせることになり、その合計出力はなんと1,800馬力。※内燃エンジン1,000 馬力、エレクトリックモーターから800馬力

2004年当時にヴェイロンが4つのターボチャージャーを備えた8.0リッターエンジンで1,001馬力を達成し、それに比類するものがいまだ(他社から)登場していないことを鑑みるに、ブガッティ自身が自然吸気エンジンで1,000馬力を達成したことは驚くより他はなく、このエンジンだけでもいかにトゥールビヨンが高い技術を内包しているかを伺うことが可能です。

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このエンジン単体での重量はわずか252kgしかなく、これをサポートするエレクトリックモーターを駆動するのはセンタートンネルとシート後方に設置された25kWhサイズの油冷式800Vバッテリー。

駆動方式はもちろん4WD、そして完全なトルク ベクタリングによって究極のトラクションと敏捷性を提供することになりますが、フロントのe-Axleは最大24,000RPMで回転するエレクトリックモーターとデュアルシリコンカーバイド・インバータを備え、ブガッティいわく「世界で最も電力密度の高いものの1つ」。

このあたりはリマックの知見がいかんなく発揮されていると考えてよく、e-Axleはインバータ、モーター、ギアボックスを含め、e-Axleの質量1kgあたり6kW以上の出力を発揮するのだそう。

もちろんこの電動パワートレーンは「パワー、スロットルレスポンス、トルク」の向上を目的に設計されていますが、25kWhという比較的大きなエネルギー容量により、ピュアエレクトリックモードにて60kmの走行が可能だとされています。

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新型トゥールビヨンはシロンよりも「軽量」

昨今の自動車業界において、年々厳しくなる環境規制に対応するため、新しいモデルはどれも前モデルよりも重くなることが通例となっており、特にニューモデルにハイブリッドパワートレインや、より高性能なパワートレインが追加される場合は(新型ポルシェ911カレラGTSを見ても分かる通り)「ほぼ間違いなくフェイスリフトやモデルチェンジ前よりも重く」なってしまいます。

ただし、この新型トゥールビヨンでは、なんと先代であるシロンよりも軽く仕上がっているといい、これは「ハイブリッド化された」ことを考慮すると驚くべき事実で、この観点からも(シロンとよく似た外観にもかかわらず)トゥールビヨンが全くシロンとは異なるクルマであること、ハイブリッドシステムありきで設計されたためにW16エンジンをあえてキャリーオーバーせず、そのためにこの軽量性を実現できたということがわかりますね(W16エンジンをキャリーオーバーすることも可能であり、その場合も同程度あるいはそれ以上の出力を達成できたはずではあるが、ブガッティの求める軽量性を実現できなかったのだと思われる)。

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トゥールビヨンは、あらゆる点で比類のないものでなければなりませんでした。私たちの哲学は、シロンのあらゆる側面を取り上げ、それをさらに高め、エレガントで洗練されたエンジニアリングソリューションと新しいテクノロジーを模索し、時代を超越した傑作を提供することです。私たちは、このクルマのどの部分も、内側、外側、またはボディパネルの下から見ても、美術館に展示できると思えるような芸術作品としたかったのです。その結果、内外ともに美しく、これまでで最もパワフルなブガッティが誕生しました。同時に、機械的な魅力と技術的な美しさをまったく新しいレベルに引き上げています。
パワートレインは、W16の再設計、完全電動化、またはまったく新しいものの作成など、利用可能なすべての選択肢を考慮した上で、おそらく私たちが下す必要があった最も重要な決定でしたが、最終的に、私たちは最も困難な選択肢を選びました。ゼロからパワートレインを作成し、それを複雑なeモーターシステム、新世代の8速デュアルクラッチギアボックスなどとシームレスに組み合わせるというものです。これらはすべて、トゥールビヨン専用にゼロから開発されました。
しかし、私たちにとって重要なのは、このクルマが自然吸気エンジンの持つ、純粋で生々しいアナログ感覚を維持しながら、エレクトリックモーターが提供する敏捷性と能力を組み合わせることでした。
このクルマがフルスロットルで9,000rpmのレッドラインに到達したときのサウンドを私たちはすでに聞いていますが、それは永遠に響き渡る、直感的で畏敬の念を起こさせる体験です。
トゥールビヨンは、燃焼技術と電動化における最高レベルの到達点です。妥協することなく、思い出に残る運転体験を生み出すという、時代を超えた献身をもって構築されています。

ブガッティ最高技術責任者(CTO) エミリオ・シェルボ
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新型ブガッティ トゥールビヨンはまったく新しいシャーシとボディ構造を持っている

ブガッティによれば、「トゥールビヨンは、まったく新しいシャーシとボディ構造に基づいて設計されている」。

その車体構造は次世代のT800カーボン複合材で作られており、バッテリーをモノコックの構造部品として統合したほか、、トップレベルのモータースポーツにヒントを得た前例のないクラッシュコンポジットリア ディフューザーなど、数多くの軽量化イノベーションが組み込まれています。※このあたり、ボリードの開発で得たノウハウが盛り込まれているものと思われ、ブガッティが様々な派生モデルを展開したことが未来につながったということがわかる

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トゥールビヨンでは、車体前部を流れるフロントコンポジットエアダクトも車体構造に統合されているそうですが、車内だとスピーカーを廃止して「ドアインナーパネルや車体を振動させることで音楽を奏でる」という設計を持つこともアナウンスされており、別パーツではなくモノコックと一体化したディフューザー然り、トゥールビヨンの設計段階においては「必要とされるコンポーネントを統合する」ことに主眼が置かれたのだと思われます(これが結果的に大幅な軽量化につながっている)。

そのほか、フロントフレームとリアフレームには低圧薄壁アルミ鋳造と3Dプリント構造ブレースが採用され、前モデルよりも大幅に軽量で剛性の高い構造になっているほか、新しいシャーシには(シロンの)スチール製ダブルウィッシュボーン構造から進化した、鍛造アルミニウム製のマルチリンクサスペンションが採用されることに。

そしてこのサスペンションに採用されるアームとアップライトは(ティーザー画像からも推測できた通り)AIによる設計、そして3Dプリントによる製造が採用されており、これらによってサスペンションシステムの総重量を45%削減できたのだそう。

加えてリアサスペンションには、車両のダイナミクスと空力性能を向上させるため、これもAIによって設計された3Dプリントによる中空エアフォイルアーム(おそらくは航空機の羽根のようなブレード形状)も採用されている、と説明されています。

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パワーアップとともにブレーキも進化していて、カーボンセラミックディスクを継続して採用するほか、可動式ペダルボックスと完全に統合されたブレーキバイワイヤシステムが導入され、ブガッティが開発した”統合車両非線形コントローラ”を介してハイブリッドパワートレインにシームレスにブレンドされているのだそう。

装着されるタイヤはミシュラン製パイロットカップスポーツ2(フロント285/35 R20、リア345/30 R21)で、これはトゥールビヨンのために特注で開発されものだと説明されています。

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なお、「ひとつのパーツやコンポーネントに複数の機能を持たせる」という考え方は計量化以外の面、たとえばスペースの有効活用においても効果を発揮しており、フロントのeアクスルは「モーターはもちろん、デュアルインバーターを含めても」シロンの前輪を駆動するシステムと同じサイズに収まっているいい、これによって大容量のフロントトランクを確保しているほか、シートレールを排除して「シートを直接車体に統合する」ことで収納スペースを拡大し、より大きな荷物を詰めるようになったようですね(エンジンの全長が長くなったことを考慮すると画期的である)。

こうやって技術的な解説を見てみると、ブガッティの開発チームが「より困難な道を選んだ」意図を汲み取ることができ、まさに比類なきクルマを作るため、現時点でも十分に排他的な性能を持っていたシロンを遥かに凌駕するという”非常に高い目標”を掲げ、それに向かって妥協なく突き進んできたこともわかります。

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よって、このトゥールビヨンは、シロンと同じように見え、シロンの派生モデルのようにも見えますが、実はキャリーオーバーされたパーツはひとつもなく、新しい時代のために、ブガッティのDNAに忠実に、完璧すぎる完璧を目指して作られたハイパーカーなのかもしれません。

そしてこういった「今までのブガッティを超え、歴史を上書きしよう」という行動原理は従来のブガッティからは発生し得なかったのかもしれず、これはメイト・リマック氏が新たに指揮を取るようになったからこそ注入された新しい風なのでしょうね。

そしてこういった情熱がなれけば、シロン後継モデルは「普通のハイパーカー」になってしまい、時代を超越する存在とはなりえなかったの可能性もありそうです。

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ですから、確かに、新しいV16エンジンを作り、新しいバッテリー パックとエレクトリックモーターを統合し、本物のスイス製時計メーカーによる計器クラスター(メーター)と3Dプリントよにるサスペンション構成パーツ、クリスタルグラスのセンター コンソールを備えるというのはクレイジーなことです。
しかし、それはエットーレがやったはずのことであり、ブガッティを比類のない、時代を超越したものとしてきたDNAなのです。

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参照:BUGATTI

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