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メルセデス・ベンツ「ビジョン・ワン・イレブン」の真の凄さはそのエレクトリックモーターにある!従来のラジアル・フラックスにかわるアキシャル・フラックス・モーターとは

2023/06/17

メルセデス・ベンツ「ビジョン・ワン・イレブン」の真の凄さはそのエレクトリックモーターにある!従来のラジアル・フラックスにかわるアキシャル・フラックス・モーターとは

| アキシャル・フラックス・モーターはクルマのパフォーマンスはもちろん、その形状や挙動までをも変えてしまうだろう |

メルセデス・ベンツは「恐ろしい武器」を手にしたと考えていい

さて、メルセデス・ベンツは「ビジョン・ワン・イレブン」を発表したところですが、ここで「スタイリング」のほかに注目する必要があるのがそのパワートレイン。

ビジョン・ワン・イレブンは「1個あたり480馬力」を発生するエレクトリックモーターを4つ搭載し、最大で1,920馬力を発生するピュアエレクトリックハイパーカーですが、これを担保するのはYASA製の新型高性能軸流モーターであり、同社いわく「YASAの新世代軸流モーターは、メルセデス・ベンツのベルリン・マリエンフェルデ工場で生産されます。そこで製造されるモーターは、パフォーマンスセ・グメント向けの次期パワートレインの中核となることでしょう」とのこと。

なお、このYASAについて少し補足しておくと、現時点ではハイパフォーマンスエレクトリックモーターでは非常に有力なメーカーであり、フェラーリやケーニグセグに(ハイブリッドパワートレーン用のモーターを)納入するといった実績も持っています。

メルセデス・ベンツが買収した「YASA」とは

そしてこのYASAは2021年10月にメルセデス・ベンツによって買収されることとなっていますが、この買収については「(メルセデス・ベンツが)その技術を活用したかった」という理由のほか「YASAの技術を他に出したくなかった(自社だけにとどめておきたかった)」という思惑があったのかもしれません。

参考までに、その後に出されたフェラーリの事業計画によれば、(フェラーリは)マラネロに新しく電動化車両向けの開発やコンポーネント製造を行う「Eビルディング」を建設し、バッテリーやエレクトリックモーターの組み立てをここで行う、としています。

つまりは情報の流出を恐れ、もしくは排他性確保のためにYASAと手を切ったとも考えられますが、一方のケーニグセグも自社でエレクトリックモーターの開発と製造を行うとコメントしており、やはりYASAからの供給に頼らない方法を模索していることが伺えます。

Koenigsegg-Electric-System (4)

メルセデス・ベンツは他社に「エレクトリックモーターで」一歩他社に先んじる?

なお、EV時代になると「簡単に出力を上げることができるようになるため」これまでの既存自動車メーカーが築いてきた優位性が(新興EVメーカーに対して)薄れるんじゃないかという指摘もあり、その理由としては「車体構造が基本的にスケードボード型に統一されてゆくであろうこと」、そして「バッテリーやエレクトリックモーターのサプライヤーが集約され、性能的に差が出にくくなること」。

たしかに一頃は「どこが作っても同じような」構造や機能を持つEVが発表される傾向にあったものの(よって自動運転で差別化しようという風潮があった)、ここ最近だと各社とも独自の制御を持つエレクトリックパワートレーン(とその制御)を発表するようになっており、仮に他社と同じサプライヤーからコンポーネントの供給を受けたとしても「全く違うクルマができあがる」と予想される特許出願が多数見られるように。

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つまり「食材は同じでも違う料理に調理できる」手法を各社とも身につけつつあるのが現在の状況であるとも認識していますが、やはりより良い材料を手に入れたほうが美味しい料理を作ることができる可能性が高く、その意味でメルセデス・ベンツはYASAの買収によって「最良の素材を手に入れた」と考えていいのかもしれません。

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ここから先はエレクトリックモーターの性能も重要に

そして今回ビジョン・ワン・イレブンに採用されるエレクトリックモーターで注目すべき点は「アキシャル・フラックス・モーター(軸流モーター)を使用していること」。

現在の電気自動車の99%はラジアル・フラックス・モーターを搭載しているとされますが、YASAのアキシャル・フラックス・モーター(左)はラジアルフラックスモーターに比較して奥行きが1/3で・・・・。

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構成部品が少ないので重量も1/3。

しかもこのコンパクトなモーターは「1個あたり480馬力」を発生させ、これはケーニグセグが開発した同形式のエレクトリックモーターよりも145馬力も高い数字です。

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YASA創業者、そして最高技術責任者であるティム・ウールマー氏によると「従来のラジアル・フラックス・モーターでは、電流が回転軸に対し垂直に走るのに比べ、アキシャル・フラックス・モーターでは、電磁流がモーターの回転軸と平行に流れるため、効率が良い。ラジアル・フラックス・モーターと比較するとハイパワーで、かつ耐久性があり、全く新しいレベルのパフォーマンスを実現することができるのです」。

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そしてこのアキシャル・フラックス・モーターが生み出すメリットは「重量やサイズ」のみならず、これらに起因して高まる「設置自由度の高さ」。

つまり、これまでだと車体の前後中央に搭載する必要があったエレクトリックモーターが「ホイールの中に設置できるようになり」、これによってブレーキと兼用させて効率的に電力を蓄えたり、ブレーキキャリパーを廃止したり、そして車体側にモーターを設置しなくて良くなるのでキャビンや荷室を広く取ったり、それ以前に車体そのものの設計自由度が飛躍的に向上します(とんでもなく室内が広いミニバンを作ることも可能になる。加えて整備性もいい)。

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ちょっと乱暴な話をするならば、ガソリン車からエンジンやトランスミッション、エキゾーストシステムなどを取り払い、各車輪にこのアキシャル・フラックス・モーターを組み込み、どこか空きスペースにバッテリーやインバーターを組み込めば(メルセデス・ベンツは)手っ取り早くEVを作ることができ、つまりはガソリン車のプラットフォームを利用した安価なEVを作ることも可能となるわけですね。

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そしてもちろん4輪トルクベクタリングをより効率的かつ簡素なシステムにて行うことができ(動力を分配するデフ、そしてドライブシャフトも不要になる)、そしてドライブシャフトが不要ということは「各車輪の可動域が大きくなる」ということを意味し(もちろん車体重量も軽くなるうえ、ジョイントによるパワーロスもない)、より大きな範囲で動く前輪や後輪によって、これまでにはないクルマの動きを実現することも可能となります。

もうちょっとトルクベクタリングについて踏み込むと、これまでのトルクベクタリングは「内輪にブレーキをかけ、相対的に外輪のトルクを増加させる」というパッシブとも言える制御であったものの、このアキシャル・フラックス・モーターでは前後左右のホイールの駆動力をより自由にコントロールできるようになるため、アクティブな制御が可能になるものと思われ、文字通り異次元のパフォーマンスを実現することも可能となるのかもしれません。

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つまり、このアキシャル・フラックス・モーターは無限のポテンシャルを秘めていて、ガソリンエンジン車では不可能だったことが可能となるほか、従来のラジアル・フラックス・モーターができなかったレイアウトが可能となり、EVの運動性能はもちろん、その室内空間や積載性をも大きく改善することになるのでは、とも考えています。

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参照:Mercedes-Benz

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