先日ブガッティは「シロンに採用されているエアコンは、一般的な家族向けマンションをまるごと冷やすくらいのパワーがある」というプレスリリースを公開しましたが、今回はポルシェが「世界で最もスマートな空調システム」としてポルシェ・クライメートコントロールの詳細を公開。
ポルシェいわく「人間は温度に敏感な生物」とのことで、「肌には外気の温度変化を感知する機能とそれを瞬時に脳へ伝える神経がびっしり埋め込まれている。皮膚という器官を通して刺激が脳へ送られることによって感覚細胞は微小な変化にも反応する。少し冷たい空気が体の近くを吹き抜けるだけで寒気を感じたり、温度が少し上昇しただけで発汗という冷却機能が作動し始める」。
そして最新のポルシェに搭載されるエアコンは”ドライバーに極上の肌触りを約束する”と自信を見せています。
オープンモデルの温度管理は非常に複雑
そしてポルシェが今回紹介するのは911のオープンモデル、すなわちカブリオレ系に採用されるエアコン。
室内にはなんと20ものセンサーが内蔵され、ルーフが開くとともにインテリアの温度センサーの一部を段階的にオフにする、とのこと(温度管理の基準を室内から外気温に移すのだと思われる)。
そしてセンサーはエアコン吹き出し口周辺の温度や外気温、冷却水温度、エンジン回転数、日射量、速度といったデータを収集しながら350種のパラメータを継続的に処理し、さらにこれらが0.5秒刻みで比較演算されるとのこと。
加えてコントロールユニットはエンジンルームやソフトトップ、ドア、シートにも内蔵され、これらから送られるデータも処理された上で最適な温度と風量を決めているようですね。
その結果として、「真夏の直射日光の下でも」快適な温度を保ち、「凍てつく冬でも」ステアリングホイールを握る指先までをも暖めることになり、これらはルーフを閉じていようとも開いていようとも関係なく「自動的に」乗員が快適さを感じる状態に調整してくれる、とのこと。
ポルシェがこういった「快適さ」にこだわるのは、ドライバーに負担をかけずに運転に集中できる環境を作るためだと思われますが、こういった細やかな配慮は「世間一般に持たれているポルシェのイメージ」とはちょっとかけ離れている、そしてポルシェの知られざる一面なのかもしれません。
さらにはこういったエアコン同様、ぼくらの気づかないところで「水面下で水をかく白鳥の足のように」目まぐるしい演算を行い、車内を快適に保ったり、車両の動きを安定させてくれているデバイスが多数存在するのだと思われ、こういったデバイスの集合が近代のポルシェを成立させているのでしょうね。※ポルシェのオープンモデルはクーペに比較するとかなり価格が高いが、その理由はこういったところにもありそう
フォルクスワーゲングループは「エアコン重視」?
なお、ブガッティ、ポルシェともに現在はフォルクスワーゲングループに属しますが、同じく傘下にあるアウディもやはりエアコンにはかなりの「こだわり」を見せるブランド。
たとえばTT(8S)に採用されていた”デラックスエアコンディショナー”は風をツイストするように送り出しており、乗員にダイレクトな風が当たらないように配慮しているほか、車内の空気が滞留しないようにという配慮も見られ、ぼくが乗った中では「もっとも優れたエアコン」。
ポルシェもまた上述のように911にて「快適なエアコン」を採用しているほか、パナメーラではスイングルーバー採用など強いこだわりを見せており、グループあげての「エアコン重視」といった印象が強いように思います。