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| 「販売を有利に進め、利益を確保する」にはもうこの方向性しか残っていない |
「プレミアムブランドではない」フォルクスワーゲンにとってはイメージ的な問題もさほど大きくはないであろう
かつては欧州の技術を中国へ伝えたフォルクスワーゲン(VW)。
しかし今度は「中国製VW」を欧州へ売り込もうとしていると報じられ、その背景にあるのは、わずか4.3%という低すぎる利益率、そして過剰在庫という深刻な危機感です。
この記事の要約
- 逆輸入の検討: VWのオリバー・ブルーメCEOが中国生産モデルの欧州販売を示唆
- 利益率の改善: 現在の利益率4.3%を向上させるため、低コストな中国生産を活用する狙い
- 生産能力の削減: グローバル全体で100万台分の生産能力を削減して効率化を加速
- 未進出セグメントへの投入: 欧州ラインナップに欠けているセグメントに中国製EVを補填
- 関税が障壁: 最終決定は、物流コストやEUの対中関税の動向次第

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25年間の「師弟関係」が逆転?VWの苦渋の決断
フォルクスワーゲンにとって、中国はひとつの大きな市場であるだけではなく、数十年間にわたり技術を輸出し、利益の源泉としてきた「ドル箱」です。
しかし中国独自のEVブランドが台頭する中、VWの立ち位置はいま劇的に変化しているといい、かつては「憧れのクルマ」だったVWも、今の中国の若者からは「見た目や技術レベルが低い、親世代の古いブランド」と見なされるようになっている、という報道も。
この市場変化に伴う利益率の低下と在庫過剰を解消するため、VWは中国のパートナーとともに「中国にて、中国のために、中国市場専用車を」開発し市場へと投入していますが、今回の決算発表ではついに「中国市場専売モデルを欧州本国へ持ち込む」という、かつては考えられなかった戦略を検討し始めたことが示唆されています。

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狙いは「欧州にないセグメント」の穴埋め
オリバー・ブルーメCEOは投資家向けの説明会において、「中国製品が欧州市場、特に現在我々がカバーできていないセグメントに適合するかを検証する」と述べており、実際に中国専用モデルが欧州市場に投入されるとしても、それは「いま欧州市場に投入されていない」、つまり現行モデルと競合しないモデルとなる可能性が大。
しかしながら、既存モデルよりも安価な価格設定がなされることも考えられ、となると既存モデルの販売を侵食してしまうことも考えられます(あるいは、侵食を防ぐため、そして利益率を向上させるため安売りはしないのかもしれない)。
ターゲットとなる可能性があるモデル
北京モーターショーで発表された以下のモデルは、その高い技術力とコストパフォーマンスで欧州市場でも通用する可能性を秘めており、とくにその先進的なインターフェースやインフォテイメントシステムはむしろ「欧州市場の若年層に高く評価され」、フォルクスワーゲンブランドを新しい次元へと移行させ、ブランドイメージを刷新するとともに新しいファンを獲得する可能性をも秘めています。

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- ID. Unyx(ID.ユニックス): 小鵬汽車(Xpeng)との提携により誕生。最先端のソフトウェアを搭載したEVセダン
- ID. Aura(ID.アウラ): 一汽大衆(FAW-VW)と共同開発したSUV。中国市場で求められる豪華な装備と航続距離を誇る
VWの現状と今後の予測
VWは現在、グローバルでの生産能力を従来の1,200万台規模から約1,100万台へと”100万台分”削減することを決定していて、これは「過剰在庫」に対応するための判断です。
| 項目 | 現在の状況・数値 |
| 営業利益率 | 約4.3%(競合他社に比べ低い水準) |
| 生産能力削減目標 | 1,000,000台 (グローバル全体) |
| 主な供給予定地域 | アジア太平洋、中東、インド、南米、アフリカ |
| 欧州導入の障壁 | 関税、物流コスト、ドイツ本国での生産調整 |
他地域への展開を優先、欧州は「次のステップ」
中国製VWの輸出はまずアジア太平洋、中東、インド、南米、アフリカなどの成長市場が優先されるといい、欧州市場への導入は「数年先のステップ」として位置づけられており、まだ最終的な決断は下されていないのだそう。
その背景には、欧州連合(EU)による中国製EVへの追加関税やドイツ国内の工場・労働組合との調整という極めてデリケートな問題があるためで、しかし、生き残りをかけたコスト削減が急務である以上、この「逆輸入」はもはや避けて通れない道かもしれません。

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結論:ブランドのプライドか、企業の存続か
VWのこの動きは、自動車産業のパワーバランスが完全に逆転したことを象徴しており、これまでは「欧州で開発し、中国で安く作る」のが欧州の自動車メーカーの定石ではあったものの、これからは「中国で開発された最先端技術を、欧州へ持ち込む」時代が始まろうとしています。
ブランドのアイデンティティを守りつつ、中国メーカーの圧倒的なスピード感とコスト競争力をどう取り込んでいくのか。フォルクスワーゲンの真の「変革」がいま試されているというのが「現在地」というわけですね。
なぜ「中国製」が優秀になったのか?
かつて中国製というと「コピー品」のイメージがありましたが、EVに関しては現在世界一のサプライチェーンを持っています。
特にバッテリーの原材料からエレクトリックモーター、車載OSまで、すべてを国内で完結できるため、開発スピードは欧州メーカーの約2倍、コストは3割以上安いと言われているのが実情で、VWが中国メーカー(Xpengなど)と手を組むのは、遅れてしまったソフトウェア開発の時間を「金で買う」という戦略的な意味合いを含んでいると考えていいのかもしれません。
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