
| フォルクスワーゲンにとって様々な事情が「不利に働く」 |
記事の要約:この記事でわかる3つのポイント
- 空前の危機: VWグループの2025年営業利益が前年比53%減の89億ユーロへ。稼ぎ頭のポルシェも利益ほぼゼロ
- 大規模リストラ: 収益悪化を受け、2030年までにグループ全体で約5万人の人員削減を計画
- 三重苦の背景: 「米国の高関税」「中国メーカーとの激化する競争」「EV需要の失速」が直撃
まさに「崖」から転落。世界最大級の自動車メーカーに何が起きたのか?
自動車業界の絶対王者の一角、フォルクスワーゲン(VW)グループが今かつてない苦境に立たされていることが明らかに。
2025年度の決算発表で明らかになったのは、営業利益が半分以下(マイナス53%)に沈むという目を疑うような数字であり、売上高は3,220億ユーロと前年並みを維持しているにもかかわらず、利益だけが「崖から落ちるように」消失。
この異常事態を受けて経営陣はついに聖域なきコストカットに着手することを発表しており、その目玉となるのが2030年までに断行される「5万人規模の人員削減」です。

ポルシェの「EV戦略ミス」が3,500億円の痛手に
今回の決算で特に深刻なのは、グループの利益を支えてきた「ポルシェの失速」。
ポルシェは当初、急速なEV(電気自動車)シフトを掲げていたものの、市場の需要が想定より伸び悩んだことを受け、急遽「ガソリンエンジン車の継続販売」へと方針を転換。
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この戦略修正に伴う特別損失だけで30億ユーロ(約5,000億円超)という莫大なコストが発生しています。
結果として、2024年に14.5%あったポルシェの利益率は2025年にはわずか0.3%にまで下落してしまい、そしてトランプ関税の影響もあり、もはや「(利ざやの大きい)高級車を売って稼ぐ」というビジネスモデルが崩壊しかかっている、というわけですね。

【データで比較】VWグループ 2025年度決算の衝撃
こちらは営業利益の激減ぶりが一目でわかる主要指標の推移ですが・・・。
| 指標(グループ全体) | 2024年実績 | 2025年実績 | 変動率 |
| 販売台数 | 902.7万台 | 898.4万台 | -0.5% |
| 売上高 | 3,246億ユーロ | 3,219億ユーロ | -0.8% |
| 営業利益 | 190.6億ユーロ | 88.6億ユーロ | -53.5% |
| 営業利益率 | 5.9% | 2.8% | -3.1pt |
| 税引後利益 | 123.9億ユーロ | 69.0億ユーロ | -44.3% |
| 従業員数 | 67.9万人 | 66.2万人 | -2.4% |
注目すべきは販売台数はわずか0.5%しか減っていないのに「利益だけが半分になっている」点。
これは「売っても儲からない構造」=コスト増と価格競争に巻き込まれていることを示しており、中国で常態化している値引き販売、関税を末端価格に転嫁できなかったポルシェの状況、そして北米に向上を持たず「すべてのモデルが関税の対象となる」アウディの苦悩を表しています(つまり、これまでのドル箱であったプレミアムブランドが揃って苦境に陥っている)。

リストラの内訳:どこで5万人が削られるのか?
VWの最高財務責任者(CFO)アルノ・アントリッツ氏は、現状の利益率2.8%を「長期的には不十分」として8〜10%への回復を至上命題に掲げており、ここで登場するのが冒頭にて示した(人員削減含む)コストカットということに。
- 中核のVWブランド: ドイツ国内を中心に約35,000人の削減
- ポルシェおよびCARIAD: ソフトウェア部門「CARIAD」やポルシェの不採算部門でも削減
- 合計: 2030年までにグループ全体で5万人が職場を去る見込み
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かつてのドル箱が収益悪化の要因に
かつてVWにとってドル箱であったポルシェが「足を引っ張っている」のと同様、VWにとっての最大市場であった中国もまた同社の足かせとなっており、中国市場ではかつてドイツ車の独壇場ではあったものの、現在はBYDやシャオミ(Xiaomi)といった現地メーカーが「圧倒的なソフトウェア技術」と「低価格」を武器にシェアを奪っています。
現時点ではなんとか踏みとどまっているフォルクスワーゲングループではあるものの、今後は販売台数が大きく減少する可能性も指摘されており、そうなると一気に「崩れ去る」ことも予想され、そして中国市場への依存度が高いVWグループはこの状況を押し留めるだけの余力を持っておらず、「最悪の事態」すら想定する必要があるというのが現在の状況というわけですね。
- ソフトウェアの差: スマホのようにアップデートされる中国車に対し、VWはソフトウェア部門CARIADの不振で開発が遅延
- コスト構造の差: 自社でバッテリーまで内製する中国勢に対し、欧州メーカーはサプライチェーンのコスト高に苦しんでいる

これにトランプ政権(米国)による関税強化が追い打ちをかけ、VWは「世界で最も効率の悪い巨大企業」というレッテルを貼られかねない状況にあるわけですが、主要市場ではシェアを奪われ、かつ普及価格帯のクルマは中国現地メーカーとの競争にさらされているうえ、ポルシェやアウディのようなプレミアムブランドはトランプ関税によって「利益が出ない状態」に。
とにかく「あらゆる方面において」状況が一気に逆転し始めたという印象すらあるほどで、窮地という表現すら生ぬるいんじゃないかというのがVWの「現在地」。
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「これからのVW」はどう変わる?
今回の「5万人リストラ」と「利益激減」というニュースは、一見すると消費者には関係ないように思えるかもしれません。
しかし、今後のVWグループは以下の動きを強めると予想され・・・。
- ガソリン車の延命: EV一本だった方針を捨て、人気のあるエンジン車やハイブリッド車を磨き直す
- ラインナップの整理: 売れない不採算モデルを切り捨て、売れ筋のSUV(ティグアン等)に集中
- デジタル体験の刷新: 遅れていた車内ソフトウェアの抜本的改善
VWは今、まさに「生まれ変わり」の苦しみを味わっているのだとも考えてよく、この荒療治が功を奏し、再び「民衆の車(フォルクスワーゲン)」として魅力的な1台を届けてくれることを期待したいと思います。
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