| これほどまでに数奇な運命を辿ったフェラーリ308GTBも珍しい |
パーツの欠落はなく、レストアベースとしては非常に理想的
さて、先日一部お伝えした「ハリケーンで納屋(の上モノ)が吹き飛んだ後、そこに保管されていた20台ものフェラーリが見つかり、それらフェラーリがオークションに登場する」という案件。
今回はそのうち、ちょっと珍しいフェラーリ308GTBを紹介したいと思います。
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なぜ、このフェラーリ308GTBは珍しいのか?
そこでこの308GTBが「なぜ珍しいのか」についてですが、その理由は「生産開始当初、わずか712台のみが製造されたFRP(グラスファイバー)製ボディを持っているから。
フェラーリ308GTBはディーノ246GTの後継としてパリサロンにて発表されていますが、ディーノ246GTのデザインエレメントを受け継ぎつつもウェッジシェイプが強調されたデザインを持つことが外観上の大きな特徴です(デザインはもちろんピニンファリーナ)。
登場時には(フロントリッド以外)すべてのパネルがグラスファイバーにて成形されており、(パネル単位ではなく)ボディ全体にグラスファイバーを用いた「はじめての」、そして「唯一の」フェラーリです。
ただしその後、1976年後半には北米仕様が、1977年中盤には欧州仕様がそれぞれ「スチールとアルミボディに」変更され、これによって車体重量は軽量な1,050kgから150kg増加して1,200kgへ。
そして「2,897台が製造されたうちの712台のみしか生産されていない」「軽量」という要素が高く評価され、同じフェラーリ308GTBであっても初期のグラスファイバー採用モデル、通称”ヴェトロレジーナ”の相場はほかの308GTBよりも高めとなっています。
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搭載されるエンジンはアルミ製V8、排気量は2,926cc(ティーポF106AB000)で、ウェーバー製のキャブレターはVバンクの中にマウントされるという形式です。
なお、欧州仕様はドライサンプ、北米や日本仕様はウェットサンプを採用するなど仕様地によってスペックが異なっており、欧州仕様では255馬力、北米仕様では(エミッションコントロールデバイスが追加されることで)240馬力へと低下することに。
ボディサイズは全長4,230ミリ、全幅1,720ミリ、全高1,120ミリという非常にコンパクトなもので、タイヤサイズはフロントが205/70 VR 14、リヤが205/70 VR 14。
この個体は、FRPボディの308GTBの生産が終了する約1年前の1976年6月に組み立てられており(北米仕様)、その後数年間で数回所有者を替え、現在の走行距離は9,587マイルだと紹介されています(アメリカに納車された個体としては、走行距離がかなり少ない)。
まずはルイージ・チネッティ経由にて米国にて新車で販売され、1978年にはニューヨークのマーク・デリッシュがフェラーリ・マーケット・レター誌へと「売ります」情報を掲載し、その後1979年4月にはウォルター・メドリンなる人物が購入したという記録が残ります。
当時売りに出された際の記録、そして1980年頃に撮影された写真を見ると、現在と同じボディカラー(ロッソコルサ)とインテリアカラー(タンレザーにブラックインサート)を持っており、おそらくは”ノンレストア”。
ハリケーンの被害によって、破損した納屋の構造材がヒットしたと思われるダメージがあるものの、パーツの欠損はないといい、さらにはエンジンとトランスミッションはマッチングナンバーを維持しているため(つまり載せ替えられていない)、レストアベースとしては理想的な個体かもしれません。
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