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| フェラーリの“スペチアーレ”伝説、10年ぶりに復活 |
「スペチアーレ」を再び名乗るということは、「相応の自信」があると考えていい
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2015年に生産終了したFerrari 458 Speciale(フェラーリ 458スペチアーレ)は、最後の自然吸気V8モデルとして多くのファンから愛され、今もなお中古市場で高値を維持しています。
その後継ともいえる存在が、2025年に登場したFerrari 296 Speciale(フェラーリ 296スペチアーレ)。
“Speciale”の名がフェラーリのロードカーに使用されたのはこれが史上2度目ですが、果たして、伝説の458スペチアーレを超えることができるのか、という点に注目が集まっています。
【デザイン対決】どちらも空力と美を兼ね備えた傑作
458スペチアーレと296スペチアーレにおいては「歴史的の重要な」な差があり、それは「458スペチアーレはピニンファリーナによってデザインされた」ということ。
正確にいうならば、「ピニンファリーナとの協力のもと、フェラーリ・スタイリングセンター(チェントロ・スティーレ)のドナート・ココによってデザインされた」ということになりますが、ピニンファリーナは、長年にわたりフェラーリの美しいスタイリングを手がけてきたカロッツェリア(自動車デザイン・製造会社)で、458スペチアーレもまた、その美しいデザインが高く評価されています。
なお、ピニンファリーナは「連続性のある、流れるような線と面」をそのデザイン的特徴としますが、現在の(フラビオ・マンゾーニ率いる)フェラーリのデザインセンター(チェントロ・スティーレ)では分断されたいくつもの線と面を多用するのが常であり、これは「かつての流麗なF1マシン」と「近代の空力に特化した、様々な付加物が見られるF1マシン」との違いに置き換えることができるのかもしれません。
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フェラーリが「ピニンファリーナと手を切った」理由については知ることができないものの、その大きなものとしては、それまで「デザインとエンジニアリングとの分業」という形にてクルマが作られていたところ、現代ではエアロダイナミクス(ダウンフォースやクーリングなど様々な意味を含む)がクルマの性能を決する大きな要素として重視されるようになり、これを他社に任せるのではなく「自社で(デザインとエンジニアリングを統合し)開発すべき」と考えたからなのかもしれません。
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実際のところ、458スペチアーレ以降の「スペシャルモデル」、たとえば488ピスタそして296スペチアーレにおいても、そのパフォーマンスとエアロダイナミクスとが密接に関係していて、もしピニンファリーナがこれらをデザインしていたならば、「Sダクト」「エアロダンパー」といった”機能とデザインが一体化した”構造は採用されなかったんじゃないか、とも考えています。
458スペチアーレの特徴:ピニンファリーナの美学と空力の融合
- フロントバンパーやリアデザインは大胆に変更
- ツインエグゾースト、カムテールなど専用デザイン多数
- 特注の薄型ガラスを採用し、車重は1,290kgまで軽量化
- アクティブエアフラップやリアスポイラーによる優れた空力性能を発揮
296スペチアーレの進化:F1とレーシングカーからのフィードバック
- 標準の296 GTBをベースに、全体のデザインをリファイン
- スプリッターやルーバー、FXX Kからの空力パーツを多数採用
- 時速250km/hで約435kgのダウンフォースを生成(296GTB比+20%)
- カーボンファイバー製パーツの使用によって1,470kgまで軽量化
【パワートレイン比較】最後のNA V8 vs ハイブリッドV6の頂点
モデル | 458 Speciale | 296 Speciale |
エンジン | 4.5L 自然吸気V8 | 3.0L ツインターボ+PHEV V6 |
最高出力 | 605馬力 / 9,000 rpm | 880馬力 / 8,000 rpm |
最大トルク | 540Nm / 6,000 rpm | 755Nm / 6,000 rpm |
0-100km/h | 約3.0秒 | 約2.7秒未満 |
最高速度 | 325km/h | 330km/h以上 |
いうまでもなく458スペチアーレでは自然吸気サウンドとF1技術を投入したエンジンが魅力の大きな部分を構成しているとも考えられ、一方の296スペチアーレではル・マン・レーサーである499Pからフィードバックを受けたツインターボエンジン、そしてエレクトリックモーターのアシストによって強大な(そしてフェラーリの後輪駆動モデルとしては過去最強の)馬力を生み出します。
しかしながらクルマの魅力というのは数値のみで語ることができるものではなく、自然吸気V8エンジンのサウンド、そして高回転域でのレスポンスの鋭さは「今なお比類なきものである」と称されていますね。
【走行性能】進化した足回りと制御技術の違い
そしてビークルダイナミクス面に目を移すと、フェラーリの歴代スペシャルモデルにおいては電子制御含む車体制御技術が刷新されることが多く(システムのバージョンアップ、後輪操舵導入などが今までのスペシャルモデルでは見られている)、やはり458スペチアーレ、296スペチアーレも”その例に漏れず”。

458スペチアーレの特徴
- SCM-Eマグネティックダンパー
- サイドスリップアングルコントロール搭載(フェラーリ初)
- 横G最大1.33g
- フィオラーノ・ラップタイム:1分23.5秒
296スペチアーレの進化点
- 専用セッティングのサスペンションジオメトリ
- マルチマチック製の単一レートダンパー
- 軽量化と低重心設計によりコーナリング性能を大幅強化
- フィオラーノ・ラップタイム:1分19.0秒(SF90ストラダーレと同等)
【どちらが買いか?】伝説と革新、どちらに価値を見出すか
458スペチアーレは、自然吸気エンジンの最終進化形であり、今もなおコレクターズアイテムとして高い人気を誇ります。
一方で、296スペチアーレは現代技術の粋を集めた、まさに“次世代スペチアーレ”と呼べる一台。
どちらが優れるかという結論は出せないものの、興味深いのは「458スペチアーレの中古相場と、296スペチアーレの新車価格が同じくらい」ということで(おそらくフェラーリは最新スペシャルモデルの価格を先代や直近のスペシャルモデルの取引相場にあわせて設定している)、この二台は「意外や」比較検討されることが多いのかもしれません。
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- 音と感性を楽しみたい場合や長期的な価値の維持を考慮する場合:458スペチアーレ
- 圧倒的なパフォーマンスと最新技術を求める場合:296スペチアーレ
【まとめ】Ferrari Specialeの進化が示す、フェラーリの未来
フェラーリは通常のラインアップとは別に「スペシャルモデル」として限定シリーズを投入しており、その中でもスペチアーレ(Speciale)の名は、フェラーリの中でも特別なモデルにのみ与えられる称号。
458スペチアーレが伝説となり、296スペチアーレがその伝統を次の世代に受け継ぐ存在として登場していますが、どちらもただの“特別仕様車”ではなく、フェラーリの哲学と技術の結晶でもあり、今後のフェラーリモデルがどのように進化するのか(スペシャルモデルにて取り入れられた機能やデザインはその後のモデルにも反映される事が多い)期待は高まるばかりですね。
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