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| シャオミが SU7 Ultraに対しソフトウェアアップデートを実施し出力を制限、ユーザーは実質的に650馬力を失う |
しかしオーナーからの強い反発を受けた末、制限の撤回を発表することに
- シャオミは1,548馬力の「SU7 Ultra」に対するパワー制限を撤回
- オーナーは「最大出力を解放するため」にXiaomi認定のサーキットでのラップタイムに関する記録の提出が必要であったが、これも撤回
- ローンチコントロールの起動に60秒待つ必要があった制限も廃止
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ソフトウェアアップデートでシャオミSU7 ウルトラは650馬力ダウン?
スマートフォンやPCのアップデートで、すぐに「前のバージョンに戻したい」と後悔した経験を誰しも持っていると思いますが、シャオミ SU7 ウルトラのオーナーたちはまさにそのような状況に直面することに。
SU7 ウルトラは、シャオミの電動フラッグシップモデルで、ポルシェ・タイカンターボGTのライバルとして注目されており、1,548馬力を発生させる3モータードライブシステムを搭載してサーキットでもタイカン・ターボGTを凌ぐタイムを叩き出したことによって世界を震撼させています。
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そこで今回の一連の騒動について順を追って説明してゆくと、まずは新しいソフトウェア「バージョン1.7.0」によりSU7 ウルトラの出力が最大900馬力に制限されてしまうという事態が発生。
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最大出力を得るには「実力証明」が必要に
つまりはこのアップデートでSU7 ウルトラは648馬力を文字通り”失って”しまい、もともとの1,548馬力を回復するため、オーナーは次のような条件を満たさなければならなくなってしまったわけですね。
- Xiaomiが認定したサーキットでラップタイムを記録
- 車載の「予選モード」がそのタイムを検証
- タイムが認められない場合、SU7 ウルトラの出力は引き続き900馬力に制限
加えてローンチコントロール使用時には60秒の待機時間が必要になるという変更もなされていますが、シャオミはこれらの「アップデート」について”安全性のため”と説明し、「フルパワーはサーキットにてトレーニングされたドライバーにのみ開放すべき」と述べています。
オーナーの怒りとXiaomiの対応
この変更を受けて多くのオーナーはこれに強く反発し、オンラインフォーラムなどで不満が爆発。
- 「広告と違う」「買った性能が使えない」との声
- 実質的に性能を下げられた中古車になったと批判
- 変更が事前に明示されなかった透明性の欠如に対する指摘
What's everyone capturing with #Xiaomi15Ultra at Xiaomi Booth? 📸#MWC25 pic.twitter.com/IZ2IflRznt
— Xiaomi (@Xiaomi) March 4, 2025
このような反発を受けてシャオミはアップデートの内容を撤回し、さらにはローンチコントロールの制限も解除したうえ、今後は透明性を高めると発表したというのが今回の一連の流れとなっています。
「コミュニティからの熱いフィードバックに感謝し、今後はより透明な対応を行います」
Xiaomi広報
シャオミの「制限」は正しかったのか?
今回の一件は、デジタル化された現代のハイパフォーマンスカーにおける所有権と権利の境界線を浮き彫りにしたと考えてよく、しかしその手法が「マズかった」のかもしれません。
実際のところ、多くの人は「1,548馬力」という数字に対してお金を支払いこのクルマを購入したのだと思われ、もちろんほとんどのオーナーは1,548馬力を使い切ることもサーキットを走ることもないとは思われるものの、この馬力を「一般人には不要」とするならば、「オフロードを走らないのにSUVを購入する」「乗せる人がいないのにミニバンを買う」「スポーツ走行をしないのにスポーツカーを買う」という行為すべてを否定することにもなりそうです。
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つまりは「プロではないがプロフェッショナル仕様の道具がほしい」ということにも通じていて、そのため「プロ仕様を求めて購入したのに、実際の仕様はアマチュア仕様であった」ならば、そこにオーナーが怒りを感じるのは当然のことであると思われます(シャオミはこの「1,548馬力」を売り物としていただけになおさらである)。
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シャオミの意図(安全性重視)は理解できる:
- 1,500馬力超は明らかに危険
- サーキットでのみ最高出力を開放という考え方は理にかなっている
しかし手法に問題が:
- クルマを購入した人の意図や車に対する敬意を軽視
- 性能制限を事前に明言せず、強制的に実施
- 購入後にパフォーマンスが制限され、購入前の性能を約束できないことは信頼を損なう
ソフトウェアで性能を制御する時代の課題
今後、自動車業界では「クルマの性能がソフトウェアで管理される(あるいは課金によって性能がアンロックされる)」という時代がさらに加速することは間違いなく、これが「アップデート」であればまだしも、「ダウングレード」である場合には注意が必要で、今回のシャオミの件については「ユーザーとの信頼構築」が不可欠であることを証明した事例だといえそうです。
たしかに「ドライバーの技量に応じてパワーを管理する」という考え方は安全性の観点では正しく、しかしそれを強制したこと、そして事前説明が不十分だったことが問題であったというのが今回の騒動からの教訓なのでしょうね。
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参照:CarNewsChina