| デ・トマソ、フォード、キャロル・シェルビーとの3者コラボによるマングスタ・シェルビーMK Vプロトタイプ |
さて、デ・トマソは1969年~1971年の間に「マングスタ」を生産していますが、総生産台数は401台、現存するのは200台程度と言われる希少中の希少車。
ただ、今回メカム・オークションに登場するのはさらに希少な(おそらく世界に一台の)マングスタで、本生産に先駆けてデ・トマソが1966年に試作した一台をフォードへと送り、そこでキャロル・シェルビーがカスタムしたのがこの個体だと紹介されています。
いったい3者はどういった関係にあるのか
ちょっとややこしいので整理しておくと、キャロル・シェルビーは映画「フォードVSフェラーリ」で描かれたように、もとレーシングライバーで、引退後に自動車製造や販売、レーシングカー製作に乗り出した人物。
フォードに請われてル・マン24時間レースに参戦することとなっていますが、1966年にみごとフェラーリを破って優勝を飾っています。
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その後フォードは「モータースポーツが販売に及ぼす効果」ひいては「スポーツカーラインアップの重要性」を実感することになり、スポーツカーの開発と販売を模索することになりますが、ここで登場するのがアレハンドロ・デ・トマソ。
自身のコネクションを使用してフォードを渡りをつけ、フォードが考えていた「ル・マン24時間で優勝したGT40を連想させる市販モデル」開発プロジェクトにうまく滑り込んだことからこの3者が結びつくことになります。
ただ、ちょっと面白いのはこの「マングスタ」というネーミング、そしてこのクルマをキャロル・シェルビーがカスタムしたということ。
「マングスタ」は「マングース」を意味し、実のところキャロル・シェルビーが手掛けた「コブラ」に対抗して名付けられた、とされています(マングースはコブラの天敵)。
にもかかわらずこの車両は「デ・トマソとキャロル・シェルビーとの合作」となっているわけですね。
なお、アレハンドロ・デ・トマソ、そしてキャロル・シェルビーとの対立については様々な説があるようですが、一般には「キャロル・シェルビーが依頼したレーシングカーの製作が一向に進まなかった」ことだとする説が有力です1964年頃)。
マングスタ・シェルビーMK Vプロトタイプはこうやって生まれた
それでもフォードはGT40的スポーツカーの開発を行う必要があり、GT40で成功を収めたキャロル・シェルビーにこのマングスタの評価を一任。
キャロル・シェルビーはこの前後の動きを見ても、フォードに対してNOとは言えない事情があったようで、アメリカでマングスタを販売するために車両の調整を行ったのがこの「マングスタ・シェルビーMK Vプロトタイプ」だとされています。※ダブルストライプが入りながらも、ボディカラーがシェルビー・アメリカンのワークスカラー、ヴァイキング・ブルーではないのは、せめてもの反抗なのかもしれない
なお、キャロル・シェルビーは自身のディーラー網を通じてこのマングスタ”シェルビー”を販売しようと考えたとも言われ、そのためエンジンはBoss 302V8へと換装済み。
そのほか15インチサイズのマグネシウムホイール、(GT40風の)サイドエアスクープやリアスポイラー等のエアロパーツが追加されており、通常のマングスタとは大きく異る様相を呈していますね。
ちなみにこの「エンジンフードがガルウイング状に開く」のはもともとのマングスタからの継承です。
なお、ボディデザインはジョルジエット・ジウジアーロ。
当時はカロッツェリア・ギアに在籍していましたが、デ・トマソは1967年にこのカロッツェリア・ギアを買収しています。
オリジナルのマングスタのボディサイズは全長4,275ミリ、全幅1,830ミリ、全高1,100ミリ。
この全高1,100ミリというのはランボルギーニ・カウンタックの1,070ミリに迫る低さであり、とにかく低い車、ということになりそうです。
マングスタ・シェルビーMK Vプロトタイプのインテリアはこうなっている
なお、エンジンルームは「ガルウイング」ながらもドアは普通の横開き。
ジウジアーロは現在でも、こういった異なる開閉方法を一台のクルマの中に投じることがあります。
インテリアはブラックレザー。
このヤレ具合を見るに、けっこうな距離を走っているものと思われます。
実際にこのマングスタ・シェルビーMK Vがアメリカに正規輸入されることはなく終わっており、よってそうとうな「希少車」だと認定されていて、オークションでは最高で3600万円ほどの値をつけるだろう、とも言われているようですね。
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