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ランボルギーニはどうやってランボルギーニらしい乗り味を実現しているのか?「我々には明確なDNAがあり、これを満たすことでウルスもレヴエルトも同じ乗り味になります」

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| ランボルギーニの最高技術責任者はポルシェについて「非常にうまくやっている」とも |

意外なことにランボルギーニは「究極のラップタイム」を目指しているわけではなかった

さて、一部の自動車メーカーには「そのクルマに乗ると、すぐにそのメーカーのクルマ特有のドライブフィール」を感じることができる場合がありますが、ランボルギーニもまた、そういった「特有のフィーリング」が感じられるブランドの一つです。

そして今回、ランボルギーニにて最高技術責任者を務めるルーベン・モア氏が「ランボルギーニがどうやってランボルギーニらしいドライブフィールを実現しているのか」についてコメントしており、ここでその内容を紹介したいと思います。

「フィーリング」は開発の最後の20%であるが、労力の80%を占める

ルーベン・モア氏がまず語るのは「そのクルマの運転感覚は、客観的なパフォーマンスと同じくらい重要です」。

同氏によれば、多くの自動車メーカーは品質にトッププライオリティを置いていて、しかしその選択については疑問を挟む余地があり、ランボルギーニにとってのトッププライオリティは運転感覚=ドライブフィール。

そしてこのフィーリングの部分は、新型車の開発において、機械的な部分の開発を終えた後の「最後の20%」のパートではあるものの、全開発行程における労力の80%を占めているのだそう。

このドライブフィールについては明確なDNAがあるといい、それらはたとえばブレーキやステアリングホイールの入力に対する反応、コーナリング中にニュートラルからオーバーステアへ移行する際のフィードバックなどである、と説明されています。

ランボルギーニのクルマは「ミドシップ」「フロントエンジン」というレイアウト、そして駆動方式では「RWD」と「4WD」、そしてパワートレーンには「ガソリン」「PHEV」が存在しますが、レイアウトやパッケージング、パワートレーンが異なろうとも「すべて同じフィーリング」となるようにセッティングを行っているのだそう。

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たとえば「ウルスに乗っても、レヴエルトに乗っても、アクセルやブレーキ、ステアリングホイールを操作した際の反応、実際に走行したときの挙動」は同じように感じられ、しかしそれを実現するための「ステリアングのパワーアシスト量」「ブレーキングパワーとペダルの移動量」「ABS作動のタイミング」はすべて異なっている、と説明されています。

さらに踏み込むと、今後ランボルギーニのクルマはすべてプラグインハイブリッドとなりますが、いずれのモデルでもすべて同じフィーリングを実現するために「回生ブレーキ システムと摩擦ブレーキ システムをどのようにブレンドするか、また他のすべての非ブレーキ要素がブレーキにどのような影響を与えるかを決定する必要があり、実際には、言及しきれないほどの変数に基づいて、ブレーキ ペダルを踏むたびに何か異なることが起こることを予測し、それでもブレーキペダルを踏んだときの感触や挙動をどの車でも、毎回同じようにする」ということに。

つまりはエンジンが前でも後ろでも、車体重量にどれくらい差があっても、前後重量バランスや重心が異なろうとも、エンジンが自然吸気であってもターボであっても「同じ挙動を示すよう」モデル間において綿密にコントロールがなされているのがランボルギーニであるわけですね。

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そして上述の通り、ランボルギーニには明確なDNAがあり、これは「カタログのように」明確に項目が定められているといいますが、これはたとえばフェラーリがその開発段階において、「フェラーリらしいファン・トゥ・ドライブを実現する要素」を5つ定め、それぞれを評価しながらセットアップを行ってゆくという手法によく似ているのかもしれません。

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なお、ルーベン・モア氏は「そのブランドの間でもまったくドライブ付フィールに統一感がないプレミアムカーメーカー」がある一方、ポルシェは「非常にうまくこれに対応している」とコメントしており、 「ポルシェに座ると、ポルシェはポルシェのように感じられます」。

これは当たり前のことかもしれませんが、たしかにポルシェはどのモデルに乗ってもポルシェであり、さらに言えば「どのラインアップであっても”S”には”S”の、”GTS”には”GTS”の」乗り味が明確に再現されていて、つまりポルシェは「どこをどうすれば、ドライバーがどう感じるのか」を熟知しており、ドライバーに「そう感じて欲しい」クルマを自由自在に作ることができる、ということになりそうです。

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ランボルギーニはスーパーカーでありながら「親しみやすさ」も重視している

そしてルーベン・モア氏が続けて語るのは「親しみやすさ」が重要である、ということ。

これはランボルギーニのイメージ、そしてスーパーカーという先入観からすると意外かもしれませんが、実際のところランボルギーニを3台乗り継いだ身としては「ランボルギーニは非常に運転しやすく、安心感すら感じられる」という印象。

ただ、この親しみやすさを実現するためにも多大なるコストをかけているといい、ルーベン・モア氏はその手法について以下のように説明しています。

その流れは次のようなものです。まずはエンジニア、テスト ドライバー、プロ レーサーの中から選ばれたさまざまなドライバーで構成されるチームを編成します。 彼らは、(ランボルギーニが属する)フォルクスワーゲン グループが所有するイタリアの試験場、ナルドサーキットに行き、クルマにどのような挙動を求めるかを決定しようとします。 例としてコーナー進入動作を定義するテストについて説明しましょう。

最初に行うのは、コーナー進入時にどのような運転行動を取りたいかを正確に定義することです。そのために話し合いをします。主観的な経験について話す場合、それは常に1つの意見ではありません。 たとえばA、B、C、Dという意見が出るとしますよね。そこで我々は、 メリットとデメリットについて話し合い、しかし最後には必ず「これが私たちの進みたい道だ」と決断するのです。

ただしこの決断は容易ではありません。なぜならば、最初にあえて、スキルや考え方が異なるメンバーをあえて選んでおり、10人が10通りの異なる意見を持っています。しかし、様々な意見の中から最適解を見出すことが重要なのです。

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さらに同氏は「親しみやすさ」を実現する方法についてこのようにも語ります。

新型車の開発においては、そのプロトタイプ、そして競合他社の車両でもラップタイムを計測します。 ただしこの目的はプロフェッショナルが運転したときに速いクルマを作ることではなく、大多数の人が親しみやすいと感じるクルマを作ることです。

私たちは様々な仕様において、様々なドライバーの運転によるラップタイムを計測し、(開発中のクルマそれぞれの)最高のタイムと最悪のタイムを比較します。 ある仕様を持つクルマはクレイジーな好タイムを生み出すかもしれませんが、それはプロの手によってのみ可能かもしれません。 他のほとんどのドライバーは、このようなセッティングを持つクルマはエッジが効きすぎると感じるでしょうし、プロとそうでない人との間ではラップタイムの差が大きくなるかもしれません。

私たちは、正直に言うと、レーシングドライバーのみが引き出せる性能を持つクルマではなく、どのようなお客様であっても、最高のドライビングエクスペリエンスを得られるクルマを作りたいと考えています。

実際のところ、プロフェッショナルドライバーが運転し、非常に優れたタイムを出せた仕様があったとしても、そのほか大多数の普通のドライバーが「ピーキー過ぎる」「扱いが難しい」という不満を抱いたとしたら、そのセットアップに何の利点があるというのでしょうか?彼らはそれに対処できず、鋭すぎる、あるいは不快に感じ、楽しむことができません。 私の観点からすると、これはロードカーにとって正しい哲学ではありません。

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自動車が持つの多くのシステムを、特定の結果を達成するためにさまざまな組み合わせで引くことができる、さまざまなレバーとして考えるとわかりやすいかもしれません。 先ほど説明したコーナー進入動作を例に考えてみましょう。 それは単にフロントタイヤの回転によって定義されるものではありません。

レヴエルトでは、前輪に独立したエレクトリックモーターを搭載しています。 ランボルギーニのチームは、このコーナー進入動作の調整につき、レヴエルトの持つ後輪操舵システム、ABS、リアディファレンシャルロック、トラクション/スタビリティコントロール、アダプティブダンパー、パワーステアリング、アクティブエアロダイナミクスを考慮する必要があります。 これらすべて (およびその他多くのこと) が、クルマがコーナーに進入する方法に影響を与える可能性があります。

そしてそれらはすべてレバーであり、既に述べたような、「これが私たちの進みたい道だ」という最適解を実現するため、どのレバーを、どのように引くかを様々な場面において選択することになります。こうやって我々はセットアップを行ってゆくのですが、現代のクルマでは考慮すべき要素が多数存在し、操作すべきレバーも多岐にわたっているので、かつてのようにサスペンションやステアリングのジオメトリを考慮すればいいというものではなくなってきているのです。

こう聞くと、「速く走る」という要素の他にも「親しみやすさ」「ランボルギーニとしてのDNA」など様々な考慮すべき要素が存在することがわかり、そしてそれらを高い次元でバランスさせることができた場合にのみ「開発目標が達成された」ということになりそうですが、たしかにこの部分の調整が困難を極めるであろうことは想像に難くはなく、「開発段階としては最後の20%の部分なのに、手間としては80%もかかる」ということも理解でき、しかしこういった作業を手を抜かずに行うからこそ「ランボルギーニがランボルギーニとして成立し、排他性を持つことに成功する」のだと思われます。※中国の自動車メーカーの開発期間は欧米の自動車メーカーに比較し半分〜2/3だと言われるが、それはこのこの80%の部分をずいぶん省略しているからなのかもしれない

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参照:Motor1

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