| フェラーリやランボルギーニとはまた異なる「ラグジュアリーな」選択肢 |
外装のメッキパーツの多さも「高級志向」を物語る
1973年製のマセラティ・ボーラがRMサザビーズ主催のオークションへと登場予定。
ボーラはジョルジエット・ジウジアーロによってデザインされたミドシップスポーツであり、330馬力を発生するパワフルな4.9リッターV8エンジンを搭載しています。
後期型に相当する「4.9リッタースペック」は275台のみしか生産されておらず、もちろんこの個体もその中の1台ということになりますが、ボディカラーはジャッロ(イエロー)、インテリアはネロ(ブラック)というコンビネーションを持っており、これが工場出荷時のままなのだそう。
なお、この個体は2013年にサンティアゴ・スポーツ&クラシックスによってレストアが行われ、非常に優れたコンディションを持っています。
マセラティ・ボーラはこんなクルマ
1971年に発表されたボーラは、マセラティ初のリアミッドエンジンレイアウトを持つスポーツカーで、さらにはマセラティ初の完全独立型ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用するなど、ひとつの新時代を切り開いています。
上述の通り、スタイリングを手掛けたのはジョルジェット・ジウジアーロで、同時期にジウジアーロが手がけたギブリやメラクとも共通するイメージを持っており、これらとあわせて今なお高い人気を誇るクルマ。
搭載されるエンジンは、マセラティのレーシングカー「バードケージ(Tipo 63-65)」に搭載されたV型8気筒(当初4.7リッター、後に4.9リッターに拡大)で、この330馬力を発生するボーラ4.9は、0-100km/hまでを7秒以内で到達し、最高時速は公称値で274km/h。
重量配分、安全性、そして剛性も考慮された設計を持ち、ZF製5速マニュアル・トランスミッションは剛性を確保するため、スチール製モノコックシャーシに直接マウントされています。
さらにはシトロエンが供給したハイドロニューマチック・コントロール・システムを持っており、これはベンチレーテッド・ディスク・ブレーキを駆動するだけでなく、ペダルボックス、ドライビングシートの位置、ヘッドライト、ウィンドウを「タッチボタン」で操作できるようにするという非常にユニークなロジックを持つもので、フェラーリやランボルギーニとは異なるアプローチを行っていたこともわかりますね。
フロントフェンダーには「GIUGIARO ITAL DESIGN」のバッジが誇らしげに輝きます。
リアセクションにはウインドウと排熱用のルーバーが一体化するという秀逸なデザイン。
なお、アメリカ市場を強く意識していたのか、メッキパーツが多いようにも思われます。
ドアハンドルはイタリアのスポーツカーにしては珍しく「普通」。
なお、エンジンの両脇には収納スペースを持つという面白い構造を持っているようですね(同様の方法でラゲッジスペースを確保したクルマは他に見たことがない)。
シートは当時のスーパーカーらしい「レトロ」な雰囲気。
このマセラティ・ボーラはこんな経歴を持っている
このマセラティ・ボーラは、1973年10月3日にモデナのマセラティ工場で完成し、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるマセラティの西海岸担当販売会社(Maserati Automobiles)に新車で納車されたという記録が残ります。
カンパニョーロ製アルミホイール(センター部分は取り外し可能)とピレリ製P4000タイヤが装着され、当時そのままのスタイルを維持することで、なんとも優雅な雰囲気を醸し出していますね。
米国市場向けの「スリム」なクローム製バンパレット、運転席側にはヴィタローニ製カリフォルニア・シングルミラーが装着されており、ワイパーやグリルのメッシュ、サイドマーカーベゼルなどもメッキ仕上げ。
2013年には、オクラホマ州オクラホマシティを拠点とするサンティアゴ・スポーツ&クラシックスの専門家により、320時間を超えるメカニズム、そしてビジュアル面におけるレストアが施されており、作業概要を記したファイルも付属する、とのこと(サスペンション、ドライブトレイン、複雑で高度な油圧システムは完璧に仕上げられている)。
ベグリア・ボレッティ製のメーターに加え(メーターパネルもレザーのようだ)、パスポート・レーダー・システムが搭載されており、スーパーカーといえど(ハイドロニューマチック・コントロール・システムしかり)かなり贅沢かつ高級志向の装備が与えられていて、フェラーリやランボルギーニとはまた異なる趣向を持つことがわかりますが、そういった「独自の立ち位置」は現代のマセラティにも受け継がれていると考えていいのかも。
そういったマセラティのユニークさが評価され、近年ではマセラティのクラシックモデルが大きく価値を上げていると言われますが、このボーラは著名なデザイナーによるコーチワークと技術的な進歩にあふれたクルマとして評価されており、これらをもってイタリアンエキゾチックの真髄と語るコレクターも存在するほど。
予想落札価格は10万ドル(現在の為替レートでは1350万円くらい)ではあるものの、あと何年かすれば、とうていこの値段では入手できないくらいにまで価値が上がっていそうですね。
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