| さらにこのスバル・インプレッサ22B STIは東京モーターショーに展示された個体そのもの |
製造後はプロドライブの車両開発担当者に引き取られることに
さて、スバルがこれまで発売したクルマでもっとも高額にて取引されているであろうクルマが「インプレッサ22B STI」。
1998年にWRC三連覇、かつスバルの(自動車メーカーとしての)創立40周年を記念して400台のみが日本国内限定にて発売されており(海外向けにわずか数台が製造されたという話もあるようだ)、500万円という当時としては非常に高額なプライスタグを掲げていたにもかかわらず(日産フェアレディZのもっとも安価なモデルが300万円くらいだった)発売後わずか2日で完売しています。
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スバル・インプレッサ22B STIはこんなクルマ
インプレッサ22B STIは当時のインプレッサWRX STi(E型クーペ)をベースにしており、主にはエクステリアと機能面においての変更がなされます。
ボディはブリスターフェンダーによって「ワイド化」されていますが(80ミリ拡大されて1770ミリへ)、これはインプレッサ・ワールドラリーカー(97スペック)を意識した仕様。
ボンネット、バンパー、アジャスタブル・リアウィングなどもインプレッサ22B STIの専用品です。
搭載されるエンジンは2.2リッター4気筒ボクサーエンジンで、これはもちろんインプレッサ22B STI専用のスペックを持っており、ビッグサイズのターボチャージャー、鍛造ピストン、ナトリウム封入バルブ等が組み込まれ、職人による「手組み」がなされます。
出力は280馬力にとどまるものの、もちろんこれは当時の自主規制によって意図的に抑えられているもので、当然ながらその本来の出力は「もっと上」であることは疑う余地がありません。
その他駆動系だとツインプレートクラッチ、デフロックコントロールモジュールといった「WRカー」直系の装備が与えられ・・・。
足回りだとビルシュタイン製ダンパー、4ポット・ブレーキ・キャリパー、アイバッハ製サスペンション・スプリングなどが特別に装備されています。
なお、チェリーレッドは当時の「明るいカラー」バージョン。
このチェリーレッドは1990年代から現代に至るまで「徐々に」色が濃くなっていて、その理由はSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)の性質が上級移行し、そのバッジを装着するモデルが多岐にわたるようになったため、ブランドイメージや幅広い車種にマッチするように変化していったからである、と公式にアナウンスされています。
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ちなみにこの特徴的なボディカラー「ソニックブブルー・マイカ」についても、現在のスバルにおいてはWRブルーマイカを経てWRブルー・パールへと置き換えられていますが、それも「主戦場が、雪や未舗装路から、アスファルト(サーキット)へと移行したことで、より舗装路上で映える色を選択したから」なのだそう。
インテリアは意外と「普通」にとどまり、変更点というとオーディオレスとなるなど簡素化されているほか、チェリーレッドのステッチがシフトノブやステアリングホイールに施されているくらい。
こういったシンプルな仕様については、そもそもインプレッサ22B STIは見た目の華美さを追求したクルマではなく、また豪華さを求めるクルマでもない、ということを如実に物語っている一面なのかもしれません。
つまりそこに凄みを感じるわけですが、現代の「(スポーツカーメーカー各社が発売する)ハードコアモデル」だと、商業上の理由にて様々な演出が盛り込まれている事が多く、よって今インプレッサ22B STIを見ると逆に新鮮味すら感じます。
シートも変更されており、しかしこちらも意外なことに「リアシート」が残されています。
このスバル・インプレッサ22B STIはこんな経緯を持っている
こういった「特別な」クルマがインプレッサ22B STIなのですが、今回オークションに掛けられるのはその中でもさらに特別な一台。
というのもこの個体は5台が生産されたプロトタイプのうちの1台であり、かつ最初に製造された「000」だから。
そしてこの「000」ことシャシーナンバー061819は、1997年に製造された唯一のプリプロダクションモデルであり、スバルが製造した最初の公道走行可能な22B、そして1997年の東京モーターショーに展示された個体そのものだと紹介されています。
5台が製造されたうち、一部のプリプロダクションモデルは、コリン・マクレーやニッキー・グリストといったスバルのラリー・チーム・ドライバーに贈られたものの、このシャシーナンバー061819はプロドライブのデイヴィッド・ラップワース(22B STIのベースとなったスバルのWRC参戦車両の開発責任者)が入手したのだそう。
その後は日本人コレクターのもとで20年保管され、さらに複数人のオーナーの手を経るも現在の走行距離はわずか79kmにとどまるといい、つまりいずれのオーナーさんもこのクルマを「重要な遺産として保存せねばなるまい」と考えていたであろうことがわかります。※タイヤは当時組まれたピレリがそのまま装着されている
そしてこの走行距離はプリプロダクションモデル、そして市販モデルあわせても「もっとも少ないであろう」ことは間違いなさそう。
しかしずっと「置いていただけ」ではなく、オーナーは定期的に点検を行ってエンジンがちゃんと作動する状態を維持しているといい、まさに理想的な背景とコンディションを持つ一台ということになりそうです。
なお、これだけの好条件が揃うことで「非常に高額な」エスティメイトが出されることになり、落札価格は最高で55万ドル(現在の為替レートで7834万円)だと予想されています。※日本車は時折、予想を遥かに超える額で落札されることがあり、このインプレッサ22B STIもそうなる可能性を否定できない
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参照:Bonhams