| ホンダのクルマは、今や人々になんらインパクトを与えなくなってしまった |
ホンダが北米における販売不振の対策として、「生産を抑える」と発表。
これはオハイオはメアリーズビルにある工場の「ライン1」を「2シフト制から1シフト制にする」、つまり生産を半分にするという内容で、これが数年間は続くということ、そして工場内にあるもうひとつのライン2については2シフト制を維持するということもアナウンス済み(生産半減は8/1より)。
なお、このライン1で生産されるのはホンダだとアコード、CR-V、シビック、そしてアキュラだとILX、TLX。
ホンダはセダンに頼りすぎた?
この理由としてはもちろん「販売減少」となりますが、たとえばアコードだと前年比で5.9%需要が下落し、CR-Vは0.9%下落。
これより深刻なのはアキュラブランドで、ILXは27.8%、TLXは21.1%減を記録しているようですね。
ただ、これは「アメリカで車が売れない」ということを意味しているわけではなく、以前に紹介したとおり、CR-VのライバルたるトヨタRAV4の販売は非常に好調。
さらに、レクサスは北米において「その年度の前半期」としては過去最高の販売台数を記録したと報じられたばかりですね。
こちらは北米市場におけるRAV4とCR-Vとの販売状況を示したグラフですが、青がRAV4、赤がCR-V。
2010年頃からしばらくCR-VがRAV4を上回るものの、2016年に逆転され、モデルチェンジを境に大きくCR-Vを(RAV4が)引き離しています。※2019年は半分しかカウントされていないので、販売が下がっているように見える
そしてこちらがトヨタ・カムリとホンダ・アコード、そしてアキュラTL(2015年からはTLX)とレクサスESの販売状況。
CR-VとRAV4ほどの顕著な差はありませんが、揃って「セダンは低調」ということもわかりますね。
この状況を見るに、ホンダが今回減産を決めたのは「当然」とも言えますが、トヨタと異なるのは、「落ち込んでいる車種をカバーできるクルマが(現行、ニューモデルとも)ない」ということ。
トヨタやレクサスであれば、セダンの落ち込みをカバーするのは「RAV4」や「UX」ということになり、そのほか「カローラ」等の人気モデルも存在しているわけですね。
ただ、ホンダの場合は「かつて北米におけるSUV売上トップ」だったCR-VもRAV4に抜かれるなど、全体的にジリ貧となっており、「出口の見えないトンネル」に入ってしまったと言えそうです。
ホンダのデザインは時代にそぐわない?
なお、この理由は不明ではあるものの、単にホンダのデザインが飽きられた、とうことが原因の一つかも。
現在、各自動車メーカーは、競争相手に対して自社のプレゼンスを高めるために「各モデル共通のデザインを採用する」のが通例となっていますが、ホンダも当然その例にもれず。
この「デザイン統一」のデメリットとしては、「そのデザインが好きでなければ、そのメーカーのクルマをすべて好きになれない」。
たとえば、ポルシェの「カエル顔」が好きでなければポルシェを好きになることはできず、ランボルギーニのエクストリームなカクカクしたデザインが好みでなければランボルギーニを買うことはない、というとですね。
しかしトヨタは「モデルごとに」けっこう異なるデザインを採用していて、これはブランドとしての統一感を欠く反面、「メーカーまるごとの好き嫌いが出ない(どれかのモデルが嫌われても、ほかのどれかを好きになってくれる可能性がある)」。
ホンダ/アキュラの場合、現在のデザインを採用し始めた頃は「シャープで先進的、知的」なイメージが受け入れられたものの、それが数年続くと「新鮮味がなくなった」のかも。
ここ最近のメルセデス・ベンツは、世代ごとに異なるデザインを採用する傾向があり、「そこまでデザインを変えなくても」と考えていましたが、移ろいやすい消費者の好みを考慮し、そして代わり映えしないというイメージを持たれないため、積極的にデザインを入れ替えているのでしょうね。
ホンダ/アキュラに話を戻すと、米国における品質調査では「品質」も高くなく、「満足度」も高くない、という結果に。
品質と満足度両方が高いのはポルシェですが、たとえばランドローバーのように「品質が低い」という判断であっても「満足度が高い」という評価のクルマをつくるブランドも。
つまりランドローバーは「品質が低くても、愛着を感じる、乗っていても楽しい」クルマではあるものの、ホンダ/アキュラは品質に優れず、愛着も感じられない、ということになりそう。
ただ、昔のホンダは「こうではなかった」はずで、あの頃のようなクルマを作って欲しい、と考えるのもぼくだけではない、と思います。
VIA: The Detroit Bureau