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| 石油会社も「なんらかの生き残る方法」を模索せねば会社が成り立たない |
【この記事の3点まとめ】
- 異色のタッグが加速: トヨタと出光興産が提携し、全固体電池の鍵となる「固体電解質」の大型パイロット工場を着工
- 2027〜2028年の市販化へ: 次世代の「bZ」や「C-HR」に搭載予定。航続距離は20%向上し、充電時間はわずか10分に短縮される見込み
- 石油精製の副産物が鍵: 石油精製過程で生じる「硫化リチウム」を活用。石油大手がバッテリービジネスに乗り出す「自愛的かつ利他的な」理由とは
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2026年、全固体電池の実用化がいよいよ現実味を帯びる
電気自動車(EV)市場における「聖杯」と呼ばれる全固体電池(ソリッドステートバッテリー=SSB)。
これまで多くのメーカーがその高い壁に阻まれてきましたが、現時点で量産に最も近いのは中国勢だと言われています。
ただしそれ以外だとトヨタがかなりいいポジションに付けているという報道もあり、そして今回はそれを裏付けるかのようなニュースが自動車業界を賑わせています。
そのニュースとは、「2023年に発表されたトヨタ自動車と石油精製大手、出光興産とのパートナーシップ」によって「出光興産が全固体電池用”固体電解質”の量産に向けた大型パイロット工場の建設を開始した」というもので、両社のパートナーシップがいよいよ「研究室」から「実際の工場」へとステージを移すこととなるわけですね 。
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トヨタが「課題を克服した」として2027年に全固体電池(ソリッドバッテリー)実用化!「10分の充電で1,500kmの走行」を目指し、EV市場での逆転を狙う
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トヨタが狙う「ポールポジション」:スペックはどう変わる?
トヨタは2027年から2028年にかけ、全固体電池を搭載したEVの市場投入を計画しています が、この技術がもたらす恩恵は、現在のEVが抱える弱点をほぼ完全に克服するものです。
全固体電池搭載による性能変化(予測)
| 項目 | 現行EV(リチウムイオン) | 全固体電池(SSB)搭載モデル |
| 航続距離 | 標準レベル | 約20%向上(280〜380マイル以上) |
| 急速充電時間 | 約30分(10-80%) | 約10分以内 |
| 安全性・安定性 | 発熱のリスクあり | 極めて高く、大電流でも安定 |
例えば、次世代の「bZ」シリーズであれば、最小のバッテリー容量でも約450km、大容量モデルでは約610km)以上の走行が可能になると予測され、これにより長距離のロードプランが驚くほど簡単になってきます。
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自動車業界ではトヨタがもっともソリッドステートバッテリーの実現に近いようだ。次世代プリウスに「全固体電池」搭載か?
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ただ、このソリッドステートバッテリーにもいくつかの懸念があり、最も大きなものがそのコスト。
つまり製造原価が非常に高額であり、高級車にしか搭載できないと言われてきたのですが、今回の報道だと「bZ」「C-HR」に搭載するとのことなので、トヨタは何らかの方法でコスト削減の道を見つけたのかもしれません(かつ、両車ともに量産車種なので、全固体電池の量産化の方法も見つけたのだと思われる)。
そしてもう一つの懸念とは「航続距離」で、かつて言われていたような「リチウムイオンバッテリーと同サイズで、3倍の走行距離」を実現することができないであろうということ。
これは全固体電池を「買いかぶりすぎていた」こと、そしてリチウムイオンバッテリーとその制御技術も大きく進歩し、ソリッドステートバッテリーが話題になり始めた2018年頃に比較して「リチウムイオンバッテリーでもかなりの距離を走れるようになったという現実」があり、よって全固体電池は当時言われたような「夢の」バッテリーではなくなっているわけですね。
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トヨタのソリッドステートバッテリーは実用化できたとしても「わずかな台数しか生産できない」?そのためゲームチェンジャーとはならない可能性も
| ただし他の自動車メーカーのソリッドステートバッテリー搭載車も同じような状況だと思われる | そもそもソリッドステートバッテリーの実用化すら「怪しい」 さて、先日トヨタはバッテリーに関する戦略を発表 ...
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なぜ石油会社が「バッテリー」を作るのか?
「石油会社がEVの普及を邪魔する」というのはかつての、そしてちょっと古い認識かもしれません 。
出光興産がこの分野に注力する理由は、非常に合理的で・・・。
- 副産物の有効活用: 全固体電池の電解質の主成分である「硫化リチウム」は、石油の精製過程で副産物として生成される
- 廃棄物の削減: 本来は廃棄されるような成分を活用することで、環境負荷を下げつつ、新たな収益源を確保できる
- 30年の研究の結実: 出光は1990年代半ばから硫黄成分の有用性に注目しており、長年の研究がようやく時代のニーズと合致した
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結論:石油と電気、対立から「共生」の時代へ
出光興産の木藤俊一社長は、この固体電解質が「モビリティの新しい未来を切り拓く」と述べています 。
石油業界が培ってきた化学技術が、皮肉にも石油離れを象徴するEVの進化を支えることとなりますが、2026年現在、ぼくらはそんな歴史的なパラダイムシフトを目の当たりにしており、トヨタの次世代EVが2027年に登場したとき、その心臓部を支えているのは「日本の石油精製技術」なのかもしれません。
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参照:Reuters
















