| トヨタの品質に対する真摯な姿勢は評価できるが、様々な状況が味方をしなかったようだ |
今後、このハブボルト問題が再発しないかを見守りたい
さて、トヨタはbZ4Xの発表直後に「ハブボルトが脱落する」という問題にて生産を停止し、全世界にてbZ4Xを約2,700台、(兄弟車である)スバル・ソルテラ約2,600台のリコールを余儀なくされています。
なお、このハブボルトとはトヨタがレクサスISのフェイスリフト(マイナーチェンジ)にて取り入れた構造であり、欧州車では比較的広く用いられているホイールの固定方法(日本者の多くは、車両のハブからボルトが生えており、それにホイールをはめ込んでナットを締めるが、この方法はハブ側にボルト用の穴が空いており、その穴にホイールを通したボルトをねじ込む)。
ちなみに新型クラウンにもこの「ホイールボルト」が採用されており、これが原因で納車が遅れている、という話もあるようですが、今回ついにトヨタから「bZ4Xのハブボルト問題を解決し、生産を再開した」というコメントが出されることに。
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トヨタはようやくホイールボルト問題を解決
このホイールボルト問題につき、トヨタが国土交通省に届け出た内容だと「タイヤを取付けるハブボルトにおいて、急旋回や急制動の繰返し等で、当該ボルトが緩む可能性がある。そのため、そのままの状態で走行を続けると、異音が発生し、最悪の場合、タイヤが脱落するおそれがある」。
ただ、トヨタとしては「緩む」ことまでは把握できたとしても、なぜ緩むのかという原因、再発防止手段を明確にできなかったといい、よって今回の生産再開にまで3ヶ月を要したわけですが、その理由や対策の詳細については発表されていないものの、今回「対策を行った上で生産を再開する」とコメントしているので、明確に原因究明と解決ができたと考えてよいかと思います。
ただしbZ4Xの問題はハブボルトだけでは終わらなかった
しかしながらbZ4Xの不幸はこれだけでは終わらず、このハブボルトの調査過程において別の問題が見つかり、それは「エアバッグの取り付けが不適切であった」ということ。
エアバッグ内にストラップが取り付けられているため、万一の際にエアバッグが展開すると(そのストラップで)乗員が怪我をする可能性があるというもので、しかしこの問題については回収した車両において発見されたものであるためにリコールの必要はなく、顧客に車両が返還される際には対策を行い納車されるとともに、これから生産されるbZ4Xについては対策を講じた上で出荷がなされるので問題はないとされています。
なお、日本車の「リコール率」だと(販売台数と国土交通省へのリコール届け出件数からぼくが算出した数値)以下の通りで、トヨタのリコール率は極めて低い数字です。
さらに付け加えるならば、リコール率トップのマツダが「リコールの原因となる問題を知る理由」の多くは「市場からの情報」つまり消費者からのクレームであり、トヨタの場合は(統計を取ってはいませんが)「内部調査」「サプライヤーからの情報」というものが多いように思われます。
- マツダ・・・0.1919%
- スバル・・・0.0151%
- 日産・・・0.0114%
- ホンダ・・・0.0060%
- スズキ・・・0.0054%
- トヨタ・・・0.0029%
これはどういうことかというと、マツダの場合は「社内の検品や品質管理、およびサプライヤーの管理」が不十分で、発売した後にはじめて消費者の報告から問題を知るケースが多いこと、対してトヨタの場合は「発売した後も、自社やサプライヤーにて継続して品質調査を行っており、その段階で消費者よりも先に問題を発見している」と言い換えることも可能です。
そして今回の「エアバッグ」についても、ハブボルトとは関係がないにも関わらず、トヨタがbZ4Xを徹底的に調べることで発見できた問題だと考えてよく、このあたりトヨタの品質に対する姿勢は素晴らしい、というのがぼくの認識でもあります。
bZ4Xは北米での販売機会を大きく逸してしまう
なお、このbZ4Xの販売ができない間、北米市場では大きく事情が変わってしまっていて、bZ4Xが発売されたときとは異なり、現在は「米国政府のEV税額控除制度が変更され、北米で生産された車両のみが連邦政府の支援対象」となっており、つまりbZ4Xは(日本と中国で生産されているので)現在北米にて減税対象ではなくなってしまったわけですね。
つまり、トヨタはリコールにてbZ4Xの販売機会を大きく失ったということを意味し、トヨタにとって今回のハブボルト問題は「痛恨の一撃」であったに違いありません。
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参照:Automotive News Europe, CARBUZZ