
Image:Avatr
| アバター(Avatr)12とは?中国発の注目EVセダン |
中国のユーザーは「もう何も信じることができない」
中国の新興EVメーカー「Avatr(アバター)」が発売したフラッグシップモデル「Avatr 12」。
このクルマはスタイリッシュなデザインと高性能を売りにしていますが、最大のセールスポイントは「世界でもっとも低いCd値、0.208を誇る」という空力性能の高さかもしれません。
そしてこのCd値はアバターによって(車両の販売前から)大々的に宣伝されており、航続距離の延長やエネルギー効率向上に大きく貢献するとアピールされていたわけですね。
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Cd値(空気抵抗係数)とは?EVに不可欠な要素
EVにおいては「航続距離」と「バッテリー容量の最適化(軽量化、コスト削減の意味においても)」が重要です。
Cd(Drag Coefficient)は、車体が空気を受ける抵抗の少なさを示す数値で、数値が低いほど空力性能が高く、効率的に走行できるとされ、よって、このCd値が低ければ、より小さなバッテリーでも長い距離を走れるため、EVメーカーにとっては非常に魅力的なアピールポイントとなり、今回のアバター12も販売を有利に進めるため、この点を強調していたのだと考えられます。
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人気中国人ブロガーが独自に風洞実験を実施
そして今回、フォロワー100万人超の人気自動車ブロガー「Zurich Bei Le Ye」氏は、自身が所有するアバター12の空力性能に疑問を感じ、中国天津にある国家認定の風洞試験施設「CATARC」で独自検証を実施するという決断を下します。
実験内容
- 試験場:CATARC(中国汽車技術研究中心)
- 基準:CSAE 146-2020規格
- 測定速度:時速80km~140kmの範囲
その結果、Ye氏のアバター12はCd値0.281を記録することになるのですが、これはSUVであるVolvo EX90と同程度の数値であり、メーカー公称の0.208からは約30%も高い数字で、「世界で最も低い空気抵抗係数を持つ」としていたセダンが「実はSUVと同程度の空気抵抗係数であった」ということは驚き以外のなにものでもありません。
Image:Avatr
メーカーとの食い違いと謎の動画削除
この風洞実験の様子を記録した動画は、Ye氏によって(中国のSNS上に)公開されるものの、その後まもなく運営側によって削除され、この削除の理由については正式な連絡や説明もなかったとYe氏は主張。
これにより、「メーカー(アバター)側の介入があったのでは?」という疑念が急速に広がることとなるのですが、一方アバターはこの検証結果に対し、「事実無根のデマであり、悪意あるPR活動(ブラックPR)」と反論。
さらに、虚偽の情報源に関する有力情報に対し、500万元(約1億1000万円)の報奨金を提供するとも発表しています。
This video recently went viral in China. This blogger was skeptical of all those EVs achieving extremely low drag coefficients including a few “record-breaking” numbers. He wanted to see if his Huawei-branded Avitr really has a drag coefficient of 0.21 as advertised. He took his… pic.twitter.com/SpvTkrJKVC
— Ray (@ray4tesla) May 5, 2025
他社にも波及する疑惑の波:Xpengなどもターゲットに?
今回の騒動をきっかけに、他の中国EVメーカーが発表しているCd値の信憑性にも疑問の目が向けられていて、特に、「世界最高の空力性能」を謳うXpeng(シャオペン)などもその例外ではなく、消費者の間で「本当に信じて良いのか?」という空気が広がっているのが現在の状況で、収まる気配がないのが今回の騒動ですが、現時点ではその行方は「ナゾのまま」。
Image:Avatr
中国EV業界に必要なものは「数値の透明性と信頼性」
中国のEV業界は、ここ数年でテクノロジー面でもデザイン面でも飛躍的な成長を遂げていて、しかし、まだマーケティングやスペック公表における透明性や誠実さが国際的に問われている段階でもあり、今回の騒動について「驚いたけど、やっぱりね」という声が多いことからも”消費者は中国のメーカーを信じきれていない”ことが伺えます(中国人を信用できないという外国人は少なくないが、中国人もまた中国人を信用していない)。
アバター12のCd値に関する今回の疑惑は、「スペックは必ずしも現実を反映しているとは限らない」という重要な教訓をぼくらに示してくれており、EVの購入を検討する場合、メーカーの公称スペックだけでなく、第三者機関の検証やユーザーの実体験レビューも参考にしなければ、「より納得のいく選択」ができないということを意味しているのかも。
よって、今後中国メーカーが国際的な信頼を築くには、透明性と検証可能な数値の提示が不可欠になってくる、と言えそうです。
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参照:CARSCOOPS