| ちなみに今回の購入制限について、日本ロレックスは関与していない |
Livedoor Newsによると、日本においてロレックス正規販売店が、ステンレスケース採用の「スポーツモデル」について購入制限を設けるとのこと。
これによれば、免税店を除く日本全国正規店67店舗が対象となり、指定するモデルについては購入時に顔写真付きの身分証明書が必要となり、モデルによっては5年間もしくは1年間、同一型番が購入できなくなるようです。※ロレックス正規販売店検索はこちら
購入にあたっては顧客名を特約店の間で共有するといい、つまり「異なる正規販売店」であっても同じ顧客は同一モデルを一定期間購入できない、ということになりますね。
ちなみにロレックス正規店はすべてが「直営」ではなく、運営する会社は全部で20あるといい、今回の試みはこれら20社による独自の取り組みだそうで、日本ロレックス自体は「関与していない」と報じられています。
この購入制限について、11月1日から導入を開始した店舗がほとんどだそうですが、一部店舗ではまだ実施していないところもあるようですね。
新しく導入された購入制限の概要はこうなっている
今回の購入制限の概要をまとめると下記の通り。
・購入制限を設けるのはロレックス正規店67店舗(免税店除く) ・店舗間で顧客情報を共有し、そのモデルを購入した人は一定期間、同じ型番のロレックスを購入できない ・購入時には顔写真付きの身分証明書の提出が必要 ・コスモグラフ デイトナ(Ref.116500LNは一回購入すると5年間は正規店での同一モデル購入ができない ・サブマリーナー(Ref.114060)、サブマリーナー デイト(Ref.116610LN、Ref.116610LV)、シードゥエラー(Ref.126600)、ディープシー(Ref.126660)、GMTマスターⅡ(Ref.116710LN、Ref.116710BLNR、Ref.126710BLNR、Ref.126710BLRO)、エクスプローラー(Ref.214270)、エクスプローラーⅡ(Ref.216570)は一回購入すると1年間は正規店での同一モデル購入ができない ・ヨットマスターⅡ(Ref.116680)、エアキング(Ref.116900)、ミルガウス(Ref.116400GV)は対象外 |
なぜ購入制限が設けられたのか
なお、今回の購入制限については、日本ロレックス指示のもとではなく「販売店が自主的に行う」もの。
ここが今回のミソであり、というのも、ぼくの認識では、「ロレックス社本体は、転売でもなんでも、腕時計とブランドの価値が上がればいい」と考えていて、現在の「プレミアまみれ」の状態、常に市場が飢餓感を持つ状態を歓迎している、となっているため。
たとえばパテックフィリップは自社でオークションに参加し、過去モデルの相場をつり上げることでブランド価値を高めていますし、オーデマピゲも中高で時計市場に直接参入して「価値の維持と向上」に乗り出したところであり、メーカーとしてはブランド価値を最大化するために、「欲しくても手に入らない」状況を作るのが仕事だと言えます(高級ブランドは、製品ではなくブランドを売っている)。
とくに購入腕時計は「買うことができる」人が限られ、つまり市場規模が限定されているので、限られた販売数量でいかに利益を上げるか、そして他社のパイを奪うかとなると、「ブランド力を上げ、市場浸透性を図り、単価を釣り上げる」しかないわけです。
よって「欲しくても手に入らない」「選べれた人しか変えない」状況をつくるのが(プレミアム製品)メーカーとしてはもっとも好ましい戦略ということになり、ロレックスもその例に漏れないと考えています(クルマだとフェラーリ、エルメスの採用する戦略と同じ)。
したがってロレックスは「もっと品薄になればいいし、もっとプレミアが付けばいいと考えている」はず。
メーカー側としては中古相場が上がったとして、直接の利益を得られるわけではありませんが、毎年行う値上げの幅を大きくしたり、モデルチェンジの都度ガツンと値段を上げることができるようになるわけですね(長期的に新品の販売単価が上がるという意味では、販売店にもメリットがある)。
販売店はロレックスマラソンに辟易している?
じゃあなんでこういった制限が設けられたのかということですが、これは「販売店側の理由」。
正規販売店はプレミア価格でロレックスを売ることができるわけではなく、しかし現在のように毎日ロレックスマラソンに来られたり、電話がかかってきたり、そして「なんで手に入らないのか」と文句を言われたりする状況に辟易している、と思うのですね。
そして、一部の顧客は「わざと販売店がロレックスを売らずに価格を釣り上げている」「有力顧客にばかり売って自分には売ってくれない」とクレームをつけることになりますが、販売店としては「売りたくても売るものがない」「中古価格、相場が上がろうとも販売店は売上単価(利益)が増えるわけではない」のが実情であり、こういったイチャモンはお門違い(販売店=メーカーだと認識している人が多い)。
そこで正規販売店は「予約を受けず、入荷したら店頭に出し、それを見た人が買う」という方法を採用することで公平性を保つようにしているわけですが、これについても「そんなしょっちゅう来れない」という不平が爆発することに。
よって今回の「購入規制」につながることになったのだと考えていますが、これを導入することで、そしてこれが報道されることで一定の対策を行ったという姿勢をアピールすることができ、現在の状況について「何もしていないわけではない」「不公平(というものがあるとすれば)是正に動いている」というポーズを取ることができることになり、今回の購入制限については、販売店が消費者からの批判をかわし、店頭で矢面に立たされる従業員のストレス緩和のためではないかとも考えています。
この購入規制で何かが変わるのか
そこで気になるのが、今回の購入規制導入で何かが変わるのか、ということ。
結論から言うと「あんま変わらないだろうな」と考えています。
なぜならば、そもそも入荷量が少なく、いかに「一人一本」の制限を行ったとしても、本当に欲しい人にゆきわたるとは思えず、飢餓感が解消されない可能性が大。
そして、これまでも「一人の人に何本も売っていた」とは考えにくく、しかしこれを行うことで有力顧客にこれまで便宜を図っていたのであれば、購入規制導入後も(罰則も、日本ロレックスからの指導もないので)それは店舗単位で継続して行われるだろう、とも推測しているのですね。
加えて、いかに「顔写真付きの身分証明書」が必要だとしても、家族や友人知人に「売却益の一部を渡す」ことで利益を示せば、喜んで店頭までついてきてくれると思われ、「身分証とクレジットカードとの名義」についても、家族や友人にお金を渡し、彼ら彼女らのカードで購入すれば問題ない(しかもポイントが付くのでラッキー)ということに。
そうう言った理由もあって、今回の購入制限は「批判をかわすためのポーズ」であり、現在の状況は「基本的に」改善しないだろうとも考えています。