| IGMがどういったクルマになるのかはまだまだ謎 |
マクラーレンF1やメルセデスSLRマクラーレンのデザイナー、そしてマクラーレンやブラバムでF1マシンを設計してきた「鬼才」、ゴードン・マレー氏が新しく発売を考えているミドシップスポーツカーの構想が追加で明るみに。
もとは2017年10月に公開された計画ですが、今回はEvoマガジンが同氏へのインタビューを行い、2019年以降に発売されるであろう新たなスーパーカーについての情報を引き出すことに成功しています。
ゴードン・マレー氏発表の新型スポーツカーは「IGM」名義。1960年代に自作した車の名称を使用
ゴードン・マレーが新会社設立。「マクラーレンF1がそうだったように、新たな指標となる車を発売」
何より重要なのは「軽さ」
これによると、ひとつのターゲットは「軽さ」。
可能な限り軽く作り、重量1000キロ以下が目標だと述べています。
マクラーレンF1の重量は1140キロなので「これよりも軽い」ということになりますが(マクラーレンF1は、V12エンジンを積んでいることを考慮すると驚異的な軽さ)、ベースとなるフレームは自身の考案した、カーボンとスチールとの複合構造、「iStream」。
これはヤマハのコンセプトカー(スポーツ・ライド・コンセプト)、そしてTVRグリフィスにも採用されたもので、これをさらに発展させた「第二世代」iStreamと採用し、第一地世代に比較して35%も軽い、とのこと(一般的なスチールとアルミとの複合素材を使用したシャシーに比べると50%も軽い)。
↓こちらが第一世代のiストリーム
ゴードン・マレー氏はとにかく軽さそして重量配分にこだわることで知られ、そのためにマクラーレンF1では車載工具が軽量な「チタン製」、そしてロールセンター適正化のために「センターシート」を採用。
つまり、コストや実用性を抜きにした、「潔い」設計で知られています。
なお、現代のクルマで重量1000キロ前後のものだと、アルファロメオ4C(895キロ)、ロータス・エキシージ410(1074キロ)、マツダ・ロードスター(990キロ)、アルピーヌA110(1080キロ)といったところが存在。
ヤマハ・スポーツライド・コンセプト(エンジンは1000cc)は第一世代のiStreamを使用しながら車体重量750kgを達成しているので、第二世代のiStreamを使用すれば、より大きなエンジンを搭載しても「1000kg未満」は十分達成可能なのかもしれません。
「サイズ」も重視する要素の一つ
加えてサイズも重要だとしており、街中で乗ったり渋滞を考えるとコンパクトであることも必要だと語っています(この辺りは実用性を考慮している。小さい方が軽いということもあるかも)。
なおマクラーレンF1は全長4287ミリ、全幅1820ミリ、全高1140ミリというサイズを持ち、これは現代のクルマだとアウディTT(4180ミリ/1830ミリ/1380ミリ)くらいで、非常にコンパクトに仕上がっています。
インタビューではその名称やエンジンについては「未定」だとされているものの、エンジンそのものは「エキサイティング」で「ピュア」だとしており、パワフルなエンジンを積むのは間違いなさそう。
ちなみにゴードン・マレー氏は大排気量、マルチシリンダーが好きなわけではなく、もともとマクラーレンF1にもホンダ製エンジン(V6もしくはV8)を積みたかったと言われるほどで、もしかするとこの新型スポーツカーについても「小排気量」エンジンを搭載してくるかもしれない、と考えたり。
なお、このミドシップスーパースポーツカーは「3気筒ターボになる」と噂されたこともありますが、ゴードン・マレー氏自身は「同じ性能を発揮できれば、見た目の数値にとらわれず、より小さくより軽い方がいい」と考えるタイプのようですね。
トランスミッションについても未定とされますが、ゴードン・マレー氏は「マニュアルよりも、DSGやトルコンATのほうがシフトチェンジが速いのは間違いない」と語る一方、「シフトチェンジの速さはドライバーに依存する」とも。
つまり、このクルマは「クルマ任せ」でシフトチェンジを行うより、自分自身が「いかに適切なギアを、より早く選択し、それを操作するか」、つまり自分のための純粋な楽しみや挑戦のために提供されるものであると考えられ、トランスミッションは「マニュアル」となる可能性も高そうです。
実際に発売されるとなると、自身の自動車ブランド「IGM」の名を冠することになりそうですが、この「IGM」は自身がまだカーデザイナーとして活動を開始する前(1960年代)、出身地である南アフリカで製作してレースに参加していた車両「IGM フォード」へのオマージュだとされています。
参考までに「IGM」はフルネームである「イアン・ゴードン・マレー」の略(会社そのものの名称は”ゴードン・マレー・オートモーティブ)”。
2019年はマクラーレンF1の後継が2台も登場?
現在マクラーレンは「マクラーレンF1の後継として」”スピードテール”の発売を計画中で、これは時速391キロを誇るハイパーGTとなり、マクラーレンのロードカー史上「最速」。
マクラーレンF1は386.7km/hを公式にマークしていますが、この際記録に残らなかった「幻の最高速は391km/h」だとされ、マクラーレンの新型車、スピードテールの「391km/h」はこれをイメージしているのかもしれませんね。
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そして今回IGMからミドシップスーパースポーツが登場すると、これもまた「マクラーレンF1の後継」だと言えそう。
つまり「マクラーレン」ブランドからの後継モデルなのか、マクラーレンF1設計者自身の手による後継モデルなのかという差異ですが、2019年もまた、ひとつの歴史が誕生する年になりそうです。