| 記録達成を事前の目標に掲げていたが、まさか本当に達成することになるとは |
文字通りとんでもないクルマが出てきたものだ
さて、先日お伝えした「異形の怪物」マクマートリー・スピアリング(McMurtry Speirling)。
マクマートリーが社名、スピアリングが車名ということになりますが、これは全長3.2メートル、全幅1.5メートルという超コンパクトなクルマです(軽自動車の規格が長さ3.4メートル、幅1.48メートル以下なので、ホンダS660くらいのクルマだと考えて良さそうだ)。
そしてこのマクマートリーはドライバーに(F1とインディカーを走った)マックス・チルトンを起用し、グッドウッド・ヒルクライムのコースレコードを更新すると豪語していましたが、今回なんと本当に記録を達成してしまうことに。
23年ぶりに記録を更新、あのVW ID.Rの記録も破る
そして今回達成したタイムは39秒08で、これは1998年のF1マシン「マクラーレンMP4/13」を駆りニック・ハイドフェルドが23年前に記録した41秒6を2秒も短縮するもので、つまりはF1マシンよりも速いと証明されたわけですね。
ちなみにこのタイムが長らく更新されなかったのには理由があって、というのも現在では安全上の理由によってF1マシンのタイムアタックが行われなくなったから(最近でも走行は行っているが、デモにとどまる)。
よって「F1マシンを超えるクルマ」などそう簡単に存在せず記録は保持されたまま、しかし今回マクマートリー・スピアリングがその常識をアッサリと覆してしまったという事態が発生しています。
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なお、F1マシン並みに速いクルマとして知られるのはフォルクスワーゲンID.Rで、これは実際にパイクスピーク・ヒルクライム・インターナショナルにて「史上初の7分台」に入ったことで一気に有名に。
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その後はニュルブルクリンクに挑戦し、長い間ニュルブルクリンク最速記録を持っていたポルシェ956(6分11秒13)を上回る6分05秒336という驚異のタイムを出したことでさらに名を挙げています。
ちなみにこのID.RはピュアEVであり、(正確な数値は公式に発表されていないものの)デュアルモーター搭載にて出力は650馬力、車体重量は1100kg、0-100km/h加速は2.25秒と言われています。
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参考までに、ID.Rは今回(パイクスピーク、ニュルブルクリンクを友に走った)ロマン・デュマのドライブにて39秒09を記録していますが、マクマートリー・スピアーズは0.01秒ながらもこれより速いタイムを記録しているわけですね(ID.Rのタイムは予選での数値なので非公式)。
マクマートリー・スピアリングはこんなクルマ
そこでこのマクマートリー・スピアリングについて、上述の通り非常にコンパクト、そしてこちらもスペックは公開されておらず、しかし出力は1000馬力、車体重量は1000kg以下と言われていて、ID.Rよりもパワーウエイトレシオが優れるクルマ。
ただしこの驚異のタイムを出す最大の理由は「ダウンフォース」であり、フロア下の空気をファンにて吸い出すことで「車体を地面に吸い付ける」構造を持つことだと考えられます。
そしてこの構造(いわゆるファンカー)のために停止していても最大2000kgのダウンフォースを発生するといい、つまり低速カーブでもとんでもなくダウンフォースが効いているために速く走れるわけですね。
そして0-100km/h加速は1.5秒と言われますが、今回グッドウッドでは「最初の100メートルですでに240km/hに到達していた」といい、そのあまりのスタートダッシュにグッドウッドのスタッフも唖然とするばかり。
動画を見るとその走りっぷりは文字通り「笑うしかない」というもので、人間はあまりに現実離れした事態に遭遇すると笑ってしまうそうですが、まさにそういった感じです。
ちなみにファンの音が大きく(100デシベルくらい)相当な騒音を発すると言われていたものの、動画を見るとそこまでうるさくはなく、モーターの(ヒューンという)音の方が大きく聞こえます。
そしてセクションによってはあまりの速さに観客がどよめくこともあるほどで、目の肥えたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの観客ですら「信じられない速さ」だったのでしょうね。
記録を達成したドライバーもびっくり
ちなみに車載カメラの映像だとほぼモーターの音しか聞こえない状態です。
今回の記録達成に際し、実際にドライブしたマックス・チルトンは「まさか本当に記録を達成できるとは思わずに驚いている。ボクは4歳の頃からグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードを見てきたが、子供の頃の自分が”将来、グッドウッドを走るどのクルマよりも速く走るようになる”と聞かされても絶対に信じなかっただろうね」とコメント。
レース前日はあまりの緊張のために眠れず、もちろんトップタイムを出すつもりでこの競技に臨んだことになりますが、どうやら今回の記録更新においては本人が一番驚いているようですね。