| これまでのようにダウンフォースを増加させるというやり方はEV時代には通用しない |
今後、各チューナーとも「白紙」から出直す必要がありそうだ
さて、メルセデス・ベンツのチューニングにて名高いブラバス。
これまでの(ガソリン車の)チューニング内容としては出力を向上させたりダウンフォースを向上させたりというものですが、これらをEVにあてはめてしまうと航続可能距離を削ってしまうことになり、むしろ「改悪」となってしまう可能性も。
そこで今回ブラバスが提案したのが「EQSの航続可能距離を7%伸ばすことができる」というチューニングであり、これはEV時代の「新しい」チューナーのあり方かもしれません。
ブラバスはどうやって航続可能距離を伸ばしたのか?
なお、EVにとって航続可能距離は今のところもっとも大きな問題でもあり、よって各自動車メーカーともその課題を解決すべく様々な努力を行っています。
メルセデス・ベンツとて例外ではなく、ボディ表面のフラッシュサーフェス化ふくむエアロダイナミクスの最適化によってEQSではCd値0.2という世界でもっとも優れる部類の数値を実現しているわけですが、これによってシングルモーターのEQS 450+ではWLTPサイクルにて729kmもの距離を走ることが可能。
ちなみにメルセデス・ベンツは「航続可能距離を伸ばすには一般的にバッテリーの容量を増やすことになるが、メルセデス・ベンツの場合、その方法だと車体重量が重くなってしまうだけなので別の方法を模索するとしており、そのひとつがエアロダイナミクスです。
そしてブラバスもまた空力には一家言あるチューナーであり、1985年にはメルセデス・ベンツEクラスのCd値を0.26まで下げてギネスブックへと登録したことも。
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そこで今回ブラバスはメルセデス・ベンツEQSについて「空気抵抗を引き下げる」という手法にてその効率性を高めていますが、風洞実験を行うことでフロントアクスルの揚力を100%低減することを可能としたカーボンファイバー製フロントスポイラー、さらにはラジエーターやフロントブレーキへの空気の流れを改善するというサイドエアインテーク、リアのリフトを40%削減するというカーボン製トランクリップスポイラーとディフューザーを装着しています。
今回ブラバスでは20インチ〜22インチまでのホイール(ブラバス・モノブロック)を用意していますが、さらにはローダウンによって前面投影面積を減少させて空気抵抗を削減することにも成功しています。
なお、ホイールは「ディスク」形状ではなく、つまりブラバスはディスク形状であるかどうかは関係がないと考えていると判断できそう(むしろ、ボディとツライチであることのほうが重要だと考えているのかも)。
ちなみにタイヤ幅が増加しているかどうかはわかりませんが、タイヤ幅は大きくなればそのぶんグリップが増し、これは直接抵抗に繋がるため、タイヤの接地面積については「そのまま」かもしれません。
ただしその効果が得られるのは「高速走行時」のみ
そしてこういった効率化について、ブラバスによると時速100〜140キロの速度域において、フル充電にて7%航続可能距離を改善できるとのことですが、この効果は低速走行時には得ることができず、よって実際の使用においては7%まるまる航続距離が伸びるといった恩恵を受けることは難しそう。
ただし高速走行のみに限ってだと7%ぶん、つまり50kmほどの距離を稼ぐことができるので、欧州のように「自動車で国と国を行き来する」ような環境ではけっこうなメリットがあると捉える人もいそうですね。
いずれにせよ、電動化はまだ始まったばかりであり、これから各チューナーとも生き残りをかけて様々な手法を模索することになるかと思いますが、「自動車メーカーでは(最大公約数を満たさねばならないため)できないような思い切った方法による効率化を行う」というのが電動化時代におけるチューナーの存在意義となるのかもしれません。
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参照:BRABUS