| 世の「エコロジー」の多くが表層を捉えるにとどまっているだけのようにも感じられる |
結局はグリーンピースの言うように「クルマにを作るな、乗るな」というのが究極の結論?
現在自動車業界において本革の使用量が減少傾向にあり、かわりにシンセティック(合成)レザーの使用量が増加中、との報道。
なお、自動車業界にて本革の使用を控える傾向は数年前から伝えられていて、それは「動物保護」という側面からだと認識しています。
特に高級車を購入する人々はベジタリアンだったりヴィーガンだったりすることが多々あり、ベントレーやレンジローバーといった英国ブランドを中心に「動物由来の材料を使用しない」という動きが広まっていたわけですね。
ただし「非本革」には別のメリットも
ただし今回の報道によると、そういった動物保護の観点以外からも「非本革」採用の動きが広がっているといい、そのひとつは「重量低減」。
本革に比較して合成皮革は重量が軽く、少しでも軽く車体を軽くし、航続距離を伸ばしたい電気自動車には最適な素材だとされ、実際のところテスラ車に採用されるのは合成皮革(ウルトラファブリックスと事業を統合した第一化成の製品)。
さらには電気自動車ではありませんが、レーシングカーやハードコアなスーパースポーツにアルカンターラ(スウェード調人工皮革)が使用されるのも「重量が軽いから」。
加えて、自動車業界以外だと航空業界も人工皮革に注目していて、ユナイテッド航空も「人工皮革の使用によって燃料を節約できる」ともコメントしており、調査会社のレポートによると2030年には合成皮革の市場が672億ドルにも達するという試算もあるもよう。
しかし人工皮革は「エコ」ではない?
しかしながら人工皮革にはひとつ大きな懸念点があり、それは「基本的に石油由来の素材でできていること」。
構成としては裏生地、フォーム、クッション層、最終保護フィルムの4層からなる場合が多く、そして素材の大半はプラスチック系の塩化ポリウレタンとポリウレタンなので、この素材の生産と廃棄に環境負荷がかかることは間違いなく、合成皮革の使用を歓迎すべきかどうかという論争も存在するようですね。
ちなみに、石油を使用せずにクラゲや植物(リンゴの皮、コルクなど)を原料に使用した合成皮革もあるというので、将来的には合成皮革が環境負荷を下げることになるのかもしれませんが、それはまだまだ先の話であり、多大なコストがかかるのかもしれません。
本革をありがたがるのは日本と中国だけ?
なお、ウルトラファブリックスによると「本革を高級品と考えるのは日本と中国だけ」とのことで、アメリカやヨーロッパでは合成皮革を歓迎しているといい、しかしぼくはこれについてちょっと疑問も。
むしろ本革を求めるのは欧米のほうなんじゃないかとも考えていて、というのもロールス・ロイスの顧客は「本革以外を求めない」といい、ベントレーも「脱レザー」宣言をしたものの本革へと回帰しているため。
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加えてアメリカ仕様として多くの(日本や欧州の)自動車メーカーが本革を標準化している例も多く、むしろアメリカでは「本革でないと売りにくい」という雰囲気があるように思われ、そもそも「本革風の合成皮革を求める」ということ自体が本革に対するあこがれを表しているんじゃないかと思ったり(本革を重視しないのであれば、全く別の質感を持つ、よりシンプルな素材が主流になっているはずである)。
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ぼくとしてはとくに本革についてこだわりはなく、よって「本革を模した」合成皮革はむしろノーサンキューであり、”フェイク”レザーよりは、全く別の、コーデュラナイロンやバリスティックナイロンのような「織布」のほうがずっといい、とも考えています(アルカンターラもそんなに好きではない)。
参照:Bloomberg