
| 一口にホイールといっても(デザイン以外に)様々なサイズや種類がある |
ホイールを固定する「ラグナット」や「ボルト」の数。
普段はあまり気にすることはないものの、実は車の性能や安全性、そして設計思想と深く関わっています。
なぜ4穴の車もあれば5穴やそれ以上のクルマがあるのか? その理由をエンジニアリングと実用性の視点から考察してみましょう。
この記事の要約
- 数で決まる「性能」: 車重が重い、あるいはパワーが強い車ほど、より多くのナットで固定する必要がある
- 4穴のメリット: 軽量化(バネ下重量の軽減)とコスト削減。コンパクトカーに多い
- 5穴以上のメリット: 高い剛性と安全性。万が一1本緩んでも走行不能に陥りにくい
- 知っておきたい「PCD」: 穴の数だけでなく、穴を結ぶ円の直径(PCD)が合わないと装着不可
なぜナット / ボルトの数はバラバラなのか? 3つの決定的な理由
車の足元を支えるラグナットの数は、そのクルマの「性格」「性質」によって決まります。
1. 「荷重」と「パワー」の受け皿
エンジンが発生させる強烈なパワー(駆動力)や、ブレーキ時の急減速、そしてカーブでの横G。
これらすべての力はホイールの取り付け面(ハブ)に集約され、「必要とされる強度」によってナット / ボルトの本数が変わってきます。
- 4穴: 比較的軽量で低出力な車(軽自動車やコンパクトカー)
- 5穴以上: 重たいSUV、ハイパワーなスポーツカー、荷物を満載するトラック。より多くのナットで締めることで、1本のボルトにかかる負担を分散し、ホイールがハブから脱落するのを防いでいる
ただ、近年では比較的コンパクトなクルマであっても安全や環境に関する基準への対応、そして電動化も関係して「重量が重くなっており」、モデルチェンジの際に「4穴→5穴」へと移行するクルマも存在します。※かつては「3穴」を採用する小型車も存在した
そして「重量が重く」、走り出しや加速、停止時に負荷がかかり、かつ悪路走行によってハブに大きな負担がかかる可能性があるオフローダーは「6穴以上」を採用することが多くなっています。
2. 安全性のマージン(冗長性)
もし走行中にナットが1本緩んでしまったら?
- 4穴の場合: 残りは3本。三角形の支持となり、安定性が著しく低下
- 5穴の場合: 残りは4本。四角形で支持できるため、異変に気づいて停車するまでの時間を稼ぎやすくなり、重い車や高速走行を想定する車に5穴が多いのは、この「万が一」の安全マージンが理由の一つでもある
3. コストと「バネ下重量」のバランス
一方で、何でも多ければ良いというわけではなく・・・。。
- 低コスト: ナットやボルトが少ない方が部品代も加工の手間も安く済む
- 軽量化: 足回りの重さ(バネ下重量)は乗り心地や燃費に直結し、わずかな差ではあるものの、ナット / ボルトを減らすことは軽量化に寄与する
比較:ナット数による「車」の違い
| ナット数 | 主な車種カテゴリー | 目的と特徴 |
| 4穴 | 軽自動車、コンパクトカー | 軽量化、低コスト、燃費重視 |
| 5穴 | セダン、ミニバン、スポーツカー | 剛性確保、汎用性、高出力対応 |
| 6穴 | ハイエース、大型SUV、ピックアップ | 高荷重への耐性、タフな走行 |
| 8穴〜10穴 | 大型バス、トラック | 圧倒的な車重と積載重量の支持 |
番外編:センターロックホイール
参考までに、センターロックホイール(Center Lock Wheel)というものも存在し、これはホイールを1本の大きなセンターナットで固定する方式。
通常の5穴・6穴ボルト固定とは異なり、中央の1点でホイールを締結し、一部の高性能スポーツカーに採用されています。
仕組み
- ホイール中央にスプライン(溝)構造があり、ハブと噛み合う
- その上から大型ナット1個で強力に締め付ける
- 締め付けトルクは非常に高く、400~600Nm以上になることも
メリット
- ホイール交換が早い
- シンプルな構造ゆえ軽量に仕上がる
- スプライン構造によりセンター出しが正確で剛性が高い
デメリット
- 専用工具が必要
- 作業が困難(適切なトルク管理が必須)
- コストが高い
DIY派必見。ホイール交換時に「穴の数」以外に気をつけるべきこと
ナットの数が合っていても、ホイールがハマらないことがあり、そこで重要なのが「規格」の理解です。
「PCD」が一致しているか?
PCD(Pitch Circle Diameter)とは、ナットの穴の中心を結んでできる円の直径で・・・。
- 国産車の代表例: 4穴なら100mm、5穴なら114.3mmや100mmが一般的
- 測り方(4穴): 向かい合うナットの中心から中心までの距離を直線で計測
- 測り方(5穴): 対角線がないため、隣り合う穴の中心間の距離に「1.7」を掛けると概算可能
ナットとボルト、実は「座面」が命
ホイールを固定するボルトやナットの底(座面)には3つの主要な形状があります。これを間違えると締め付けても緩んだり、最悪の場合はホイールが割れたりすることも。
- テーパー座(60°): 多くの国産車や社外ホイールで採用
- 球面座: 主にホンダの純正ホイール
- 平面座: 主にトヨタ・レクサスの純正ホイール
結論:たかがナット、されどナット
「なぜ4穴なんだろう?」という疑問の答えは、メーカーがその車の重さやパワーに対し、最も効率的で安全なバランスを計算した結果にあります。
もしホイールをアップグレードしようと考えているなら、穴の数だけでなく、PCD、インセット、そして座面の形状まで確認し、メーカーの設計糸を理解することが「安全なカスタム」への第一歩なのかもしれません。
参考:「ナット式」「ボルト式」
日本車はハブからボルトが飛び出ている「ナット式」が主流ですが、欧州車(BMW、メルセデス等)では「ボルト式」が多く採用されています。
ボルト式はハブ側にネジ穴があり、ホイールの上からボルトを差し込むもので、これは高速域での精度や剛性を重視する思想によるものですが、タイヤ交換の際に重いタイヤを支えながら穴を合わせるのが少し大変という側面あります(さらに言えば、取り外し時に注意しないと、いきなりホイールが落ちてブレーキキャリパーを破損することもある)。
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参照:jalopnik























