| このディーノ308GT4は、ある意味でその後の80年代のフェラーリデザインに影響を与えたように思われる |
フェラーリの一つの歴史を表すクルマとしてコレクション価値は非常に高い
フェラーリは1960年代、販路拡大のためにサブブランドとしてディーノ(Dino)を設立し、その第一弾として登場したのが206GT。
ディーノをサブブランドとしたのは、「V12エンジン搭載車以外はフェラーリと呼ばない」と明言していたフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリの意向によるものだとされています(V6エンジン搭載モデルにフェラーリのエンブレムを付けることは、フェラーリブランドのイメージを毀損すると考えていた)。
なお、この「ディーノ」の名は、若くして亡くなったエンツォ・フェラーリの息子であるアルフレッドの愛称であることは周知の事実であり、ディーノに搭載されるV6エンジンもまた、アルフレッドが(病床にて)企画したものだとされています。
参考までに、エンツォ・フェラーリは「真の愛というのは、父親が息子に対するもの以外にありえない」とも語っていますが、それでもディーノをサブブランドとし、「フェラーリ」を(当時)名乗らせなかったところを見ると、息子以上にフェラーリというブランドを大事にしていたのかもしれません。
やがてディーノブランドは消滅
ディーノ206GT発売以後にはバージョンアップ版の246GT、そして4人乗りの308GT4(1973年)、208GT4(1975年)とニューモデルの登場が続くものの、308GT4以降の販売は芳しくなかったといい、よってエンツォ・フェラーリは、1976年にディーノブランドを廃止してフェラーリブランドに統合することを決定することになりますが、同時期に「在庫者として保管しているディーノのエンブレムをすべてフェラーリへと置き換えるよう」指示を行ったと伝えられています。
このディーノ308GT4はフェラーリ初のV型8気筒ミッドシップエンジン搭載車でもあり、同時にベルトーネのデザインによるフェラーリ初のスーパーカー。
フェラーリは1951年以降、長年ピニンファリーナと協業関係にあり、よってこのベルトーネのデザインというのは非常に意外です。
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なお、ベルトーネはランボルギーニと関係が深く、ミウラやカウンタック、ウラッコ、エスパーダなどをデザインしており、このディーノ308GT4とランボルギーニ・ウラッコとはある種の共通性があるようにに見えますね(リヤミッドエンジン、4人乗りなど共通点も多い)。
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そして気になるのがなぜこのディーノ308GT4が「ピニンファリーナではなくベルトーネのデザインなのか」ということで、これはフェラーリによると「フィアットの意向があった」とのこと(しかしフィアットの意図はわからない。もしかするとランボルギーニに対抗したかったのかもしれない)。
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なお、こういった「角張った」デザインを持つフェラーリは1971年の365GTC4にまで遡ることができますが、その後は365GT4BB(1971年)、365GT4 2+2(1972年)、308GTB(1975年)へと続き、308GT4は後に続く(フェラーリにおける)デザイントレンドを形成したクルマだとも考えることが可能です。※後のピニンファリーナによるデザインまでもがこの方向に動いているのは興味深い
このディーノ308GT4は欧州仕様
この時期フェラーリは仕様地向けに(その土地の法規に合わせた)スペックを変える傾向が強くなっていて、この308GT4は3.0リッターV型8気筒エンジンを搭載し、トランスミッションは5速マニュアル。
シャシーナンバーは12276(偶数ナンバー)が刻印され、製造されたのはエンツォ・フェラーリがディーノを廃止する1ヶ月前の1976年4月であり、新車時にはドイツ・デュッセルドルフのオートベッカー社を通じて最初の顧客に引き渡されています。
そのためか、フロントやステアリングホイール、ホイールセンターキャップなどのエンブレム類はほぼ「フェラーリ」へと置き換えられているようですね。
ボディカラーはアヴォリオ・サファリ、インテリアカラーはペッレ・ロッサ。
けっこうリアシートは広く、なかなかの実用性を持っていそう。
走行距離は40,691キロだとされ、年月と距離なりの劣化はあるものの、比較的良好な状態を保っていると考えていいかもしれません(メーターの文字盤には、フェラーリではなくディーノの文字が入る)。
フロントにはスペアタイヤ。
リアにはトランクも存在します。
ステアリングホイールのスポークにはなぜかフェラーリのシール。
このディーノ308GT4には新車時に添付された取扱説明書の他、整備記録も付属するといい、フェラーリのクラシックカー部門「フェラーリ・クラシケ」による認定もなされています。
フェラーリ史上、相当に珍しい「ベルトーネデザイン」「初のV8エンジン搭載車」ということで歴史的な価値も大きく、コレクションアイテムとしては非常に魅力的な一台かもしれません。
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