| 自動車業界はいまだかつてないほどの「混乱」の時代を迎えている |
さて、現在の自動車業界はいまだかつてないほどのカオス状態となっていて、これまで「大衆車」を支配していたフォルクスワーゲンやトヨタの領域に中国車が割って入り、そして電動化という新しい波に乗ってテスラのような新興EVメーカー、そして中国のEVメーカーがシェアを伸ばし、そしてEVへと完全に移行することを目標としている自動車メーカーがある一方で「ガソリン車を残す」と宣言する自動車メーカーが存在したり。
つまりは今ほど「数多くの国の、数多くの自動車メーカー、様々なバックボーンや歴史を持つ自動車メーカー、様々なパワートレインに特化した自動車メーカー」が乱立した時代はなく、そしてその戦略も様々です。
「数」を追求する自動車メーカー、数ではなく「1台あたり利益」を追求する自動車メーカーも
そして今回焦点を当てたいのが「数を正義」とする自動車メーカーと、「数は正義ではない」とする自動車メーカーが存在することで、たとえば韓国ヒョンデは前者に属し、プラットフォームを共有しつつもより多くの車種を展開することで販売台数を増やし、マーケットシェアを伸ばし続けています。
一方、よく比較されるのがステランティスであり、これは旧プジョー・シトロエンとFCAとが合併してできた自動車メーカーなのですが、フィアット、アルファロメオ、ジープ、マセラティ等あわせて14ものブランドを保有しているわけですね。
ただ、ここ半年ほどで「異変」が起きているといい、それはヒョンデがステランティスの販売台数を逆転したこと。
ヒョンデは現在「キア、ヒョンデ、ジェネシス」の3ブランドを保有するのみで、しかしこれが14もの名だたるブランドの販売を一時的と言えど逆転しており、傍から見るとこれは下剋上のように見えるかもしれません。
しかしながら「利益」という観点から見てみると両者には大きな相違があり、販売台数についてはヒョンデとステランティスとで(まだ)そこまで差はないものの、利益額だとステランティスのほうが300億ドル以上も多く、これは両者における「戦略の差」だとも言われています。
ステランティスは「利益」を重視
この差は単純に「ヒョンデが数を販売してマーケットシェアを確保しようとするのに対し、ステランティスは販売台数を追いかけず、1台あたりの利益を最大化することに注力したから」だとされ、実際のところアメリカ市場だとステランティスブランド平均での販売単価は57,201ドル、しかしヒョンデグループだと35,343台にとどまるのだそう。
ちなみに自動車業界には「虚栄心のための数量、正気のための利益」という格言があるそうですが、ステランティスは虚栄心を満たすことをやめ、実利を取ったということになり、たとえばステランティス発足後にさっそくプジョーは「大衆車をやめて高級路線にシフトする」と宣言。
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さらにアルファロメオも「台数よりも利益」だと宣言し、より高く売ることに注力する反面、同じグループのダッジ・ホーネットのプラットフォームを流用することでコストを抑えた新型車「トナーレ」を発売し、これによって多額の利益を稼いでいると言われます。
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おまけに中国車の世界進出に対する備えも行っており、多くの自動車メーカーが採用する「台数追求」「中国重視」とは真逆の戦略を取っているもよう。
これらを見るに、ステランティスの経営陣は(カルロス・タバレスCEOはじめ)有能な人材が揃っていると考えてよく、もしかすると今後「非常に強力な」グループとなるのかもしれませんね。
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さらに言えば、ステランティスは各ブランドの扱い方が非常にうまく、14ものブランドを競合させず、現在はそれぞれのヘリテージを活かし、それをお金に換えることを目的とした運営がなされています。
たとえばアルファロメオだとスポーツイメージを押し出し、マセラティだと高級ツアラーに、そしてランチアではデルタの復活などがそれに該当するかと思いますが、開発コストを抑えるために車体やパーツの共有を進めていることにも注目する必要があり、「高く売ること」に加え「安く作ること」という両方の面から各ブランドを運用しているようにも見受けられます。
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他にはこんな「利益重視」ブランドも
なお、「(台数の追求よりも)高く売ること」を考えるブランドは他にもたくさんあり、フェラーリやランボルギーニ、ロールス・ロイスなどはその典型(これらは別格でもある)。
ポルシェも同様の方針を採用することで知られており、「1台あたりの利益が下がるようなクルマは作らない」という方針を採用しているため、投入されるニューモデルの価格は常に高くなっており、ブランニューモデルとして追加されるミニバン(もしくはSUV)は非常に高価である、と言われていますね。
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ちなみにですが、「少ない台数で多くの利益を稼ぐ」「同じ利益であれば少ない台数の方がいい」という理由は非常に多く、例えば昨年のように「チップ不足」になると生産台数が減ることになり、よって「台数を追求していた自動車メーカー」はその業績が一気に悪化することに。
さらには生産台数が少なければ工場の規模も小さくてよく、雇用する人も少なくて済み、つまり経費が安く上がります。
もちろんディーラー網のメンテナンスに掛かるコストも節約でき、ぼくが大きいと思うのは「リコール時のダメージを最低限に抑えられること」。
つまり販売台数が多ければ多いほどリコールの台数も多くなる可能性を秘めており、しかし販売台数が少なければこのコストが小さくて済むわけですね。
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