| 結論から言えば、ガソリン車と同様の使い方をする場合にはあまりメリットが感じられない |
もう少しEVとしての完成度が高まり、成熟するのを待ったほうが良さそうだ
さて、現在世界中で「EVシフト」が進んでおり、中国ではもはや「販売される新車の1/3」がEVとなっていますが、EVにはガソリン車とは異なるいくつかの点があります。
エレクトリックモーターは(回転数とともにトルクやパワーが上昇する)ガソリンエンジンとは異なって瞬時に(通電すれば)ピークトルクを発生させることができたり、当然ながら音や振動が無いという特徴もありますが、そのほか「あまり知られていない」10のポイント(5つのメリットとデメリット)を見てみましょう。
1.暖気が不要
現代のクルマはエンジンやトランスミッションを暖めるための暖気は不要ではあるものの、触媒を適温に保ちCO2排出量を低く抑えるための暖気は必要であり、そしてもちろんEVではこの暖気が不要。
当然ながらEVには「エンジンやトランスミッション」も存在しないため、よってこれらの暖気も考える必要はありません。
2.いくつかのEVは特徴的なサウンドを発している
EVはガソリンエンジンのように「燃焼と排気」を生じさせず、よってエキゾーストサウンド、そしてエンジンが動くメカニカルサウンドが生じることはなく、しかし一部のEVは非常に特徴的なサウンドを備えています。
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3.周囲に気兼ねしなくても済む
上述の通りEVは静かなので、いかに「ハイパフォーマンスEV」であったとしても、ガソリンエンジン搭載のスポーツカーやスーパーカーのように「近隣に配慮して」早朝や深夜に乗り出しにくいといったことも皆無。
ピュアEVではない「ハイブリッド」であっても、シボレー・コルベットE-Ray、フェラーリGTB、ランボルギーニ・レヴエルトのようにピュアエレクトリックモードで走行すれば、周囲に気兼ねなく走行することが可能です。
4.一瞬で加速できる
ガソリン車であれば、追い抜きや追い越しの際、坂道を登る際にはシフトダウンしたり、そうでなくても回転数が上がるのを待ったり、ターボチャージャーの加給がかかるのを待つ必要がありますが、EVだと「アクセルを踏むだけ」で加速するため、そういった”待ち”が生じず、ストレスフリーなドライブが可能です。
5.優先駐車
いくつかのショッピングセンターなどでは、EV専用の駐車(&充電)スペースがあり、混雑時でも(そこが空いていれば)駐車スペースを探してウロウロしたり並んだりすることなく駐車が可能。
ただし今後EVが増えてくれば、このメリットを享受することが難しくなるかもしれません。
6.寒さのために航続距離が短くなることも
あまり話題にならないことではありますが、EVだと寒冷時にヒーターを「強」にしたり、灼熱の太陽の下で冷房を強くすると「瞬く間に」バッテリーが減少することも。
このバッテリー消耗のスピードは「ガソリン車から乗り換えたオーナー」にとっては予想外のペースかもしれません。
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7.バッテリー性能は年々劣化する
理論上ではありますが、EVのバッテリー性能は年々劣化する傾向にあり、メーカーによって差があるものの、5-10%くらいは劣化すると言われます。
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つまり、ガソリン車とは異なり、「時間の経過とともに、一回の満充電あたり(ガソリン車だと満タン)で走れる距離が短くなる」ということですね。
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8.EVは車体重量が重い
現在のバッテリー技術だと、EVの車体重量はどうしても重くなってしまい、これは予想外のタイヤの摩耗、車体の消耗、事故の際の大きなインパクト(自車に対してはもちろん、相手に対しても)といった問題も。
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9.EVのランニングコストはそこまで安くない
EVというと「ランニングコストが安い」という印象ではあるものの、自宅で充電するのであればまだしも、公共充電ネットワークを使用して充電すると「さほど」安くないと言われています(国によって事情は異なるが、いろいろな試算結果が出されている)。
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10.一部のEVは圧倒的に遅い
テスラ・モデルS/モデルXプレッドや、一部のハイパーEVは「ガソリン車とは比較にならないほど速い」ことが立証されていますが、一部EVはかなり遅く、たとえばフォルクスワーゲンID.4(ベースグレード)だと0-100km/h加速が10.9秒、プジョー e-308だと9秒台。
これは一部のスポーツカーのゼロヨンタイムと同じくらいの数字であり、我慢ができない人もいるかもしれません。
そのほか、EVにはこんなデメリットも
加えて、ぼく自身が4年間EVに乗って感じた、そして周りから聞いた話によれば、まずEVは「売却時に非常に安い」ということ。
これは上で述べたように「年々性能が劣化してゆく」ことに加え、年々新しい、かつ性能に優れるEVが登場するためであり、この状況はいっときの(急速に性能が向上していた)携帯電話やデジカメのようなものだと言えるかも。
よって、EVのランニングコストが安かったとしても、売却時の損失額でそれが「帳消し」となる可能性もあり、よってもう少しEVの性能が改善し、進化の速度が遅くならねば「EVの購入に踏み切るのが難しい」という実情があるのかもしれません。
そしてもうひとつ、EVは修理費用が高く、もちろん壊れなければ修理の必要はありませんが、もし壊れなくても「保険料が高い」という問題もあって、現時点ではEV所有のデメリットのほうがメリットを上回るのでは、というのがぼくの偽らざる心境です。
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