| さらにこの個体はミッレミリアで2度の優勝を経験している |
長いレストアを経てオリジナル状態へと復刻されており、その歴史的価値は非常に高い
さて、フェラーリの名を冠したクルマとしては5番目に路上へと送り出された「166MM」。
登場したのは1949年で、先代(つまり4番目のフェラーリ)の166インテル・スポーツを駆るクレメンテ・ビオンデッティが1948年のミッレミリアで優勝したことに由来して「MM」と名付けられています。
モデルライフ通じて生産されたのはわずか25台で、今回オークションに登場するのは10番目に製造された個体なのだそう(シャーシ番号0024 M)。
なお、166MMがオークションに登場するのは「非常に」稀であり、そのため予想落札価格は最高で500万ユーロ(現在の為替レートで約7億2000万円)というエスティメイトがが出されています。
このフェラーリ166MMはこんな経歴を持っている
そこでこのフェラーリ166MMについてですが、当初はカロッツェリア・トゥーリングによって製造されたボディを持っており(途中で交換されている)、完成したのは1949年末、そしてレース仕様のピストン、デュアルエキゾーストパイプ、100リットルの競技用燃料タンクを備えます。
オーダーしたのはアルゼンチン自動車クラブだとされ、当時はアルゼンチンのナショナルカラーであるアヴォリオ(クリーム)とブルーにて仕上げられ、1949年のパリモーターショーにて展示されたことがある、とのこと。
その2ヵ月後にはアルゼンチンへ輸送され、現地到着後の1950年1月15日、マルデルプラタにてプライベーターのカルロス・メンディテギがドライブし、圧倒的な勝利を収めますが、この勝利はフェラーリにとって南米での初勝利となったと紹介されています。
ただし、このフェラーリ166MMがアルゼンチンにて走ったのはわずか数ヶ月だとされ、その後フェラーリの工場に戻されたのち、1950年11月にミラノのルイジ・フランチェスコ・ザッカリア・テラヴァッツィに売却されたという記録が残ります。
そして1951年4月29日、ルイジ・フランチェスコ・ザッカリア・テラヴァッツィはコ・ドライバーのアプリレ・パルマーと共にミッレミリアに出場してクラス8位でフィニッシュし、そのわずか10日後、ルイジ・フランチェスコ・ザッカリア・テラヴァッツィはこの166MMをアプリレ・パルマーに売却することに決め、1951年6月3日にコッパ・デラ・トスカーナに、7月21日にはスーザ・モンチェニシオ・ヒルクライムに出場し、総合11位という戦績を残します。
その後5年が経過した後、このフェラーリ166MMは3人のイタリア人オーナーの手を経ることになり、1954年にはヴィニャーレによる新しいアルミニウム製ベルリネッタコーチワークが施され、1956年4月になるとロサンゼルス在住のセオドア・パラに売却されてアメリカに渡ることになりますが、この時期のフェラーリのレーシングカー「あるある」としてシボレー製のV8エンジンへと換装されたこともあると伝えられています。※この頃、モータートレンド誌の1959年7月号で紹介されたことがあるようだ
1974年12月になると自動車史家のスタン・ノワックを通じ、ヴィンテージカーコレクターのゲーリー・ションワルドに売却され、その後まもなく同氏は(運良く)マッチングナンバーのエンジンとギアボックスを入手し、さらにヴィニャーレのボディを取り外し、オリジナルの状態へと復元を図ります。
ちなみにもともと積まれているエンジンは1,905cc自然吸気V12気筒、出力は140馬力。
「166」は1気筒あたりの排気量を表します。
さらに1986年になるとコネチカット州のディーラーであるキース・デューリーへと売却され、イギリスのポッターズバーにあるニール・トゥーイマンにてフルレストアが行われることになり、メカニカルな作業はその道の権威であるジム・ストークスが担当し、新車時に装着されていたカロッツェリア・トゥーリングのバルケッタボディは(ボディエキスパートの)ボブ・フォードがハンドメイドにて製作しています。
このフェラーリ166MMのレストアは1989年末に完成することになり、その後はカリフォルニア州サンタバーバラの愛好家の手に渡って6年間所有された後、日本のコレクターに売却されたそうですが、それと前後してこのフェラーリは「Prancing Horse」誌の1996年夏号で表紙を飾ったこともあるのだそう。
2008年3月になると再びアメリカ人オーナーの所有となり、2011年には同じアメリカ人のクラシックカー愛好家であるとともに世界的なフェラーリコレクターへと売却された、と紹介されています。
このフェラーリ166MMは、フェラーリ初期のレーシングカーの中で最も人気のあるモデルのひとつであり、フェラーリの基礎技術を再現したマスターピースとして長い年月をかけてオリジナル状態に戻されており、さらには走行が可能という理想的なコンディション。
さらには過酷なミッレミリアで2度の総合優勝を果たしたという経歴を持っており、現存する166MMの中で、そして手に入れることができる166MMの中ではもっとも価値が高い一台であるとも考えられます。
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