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生産されたのは80年前、1942年製ウィリス・ジープが競売に。映画「プライベート・ライアン」ほか「バンド・オブ・ブラザース」「ペニーワース」にも登場

2023/10/21

生産されたのは80年前、1942年製ウィリス・ジープが競売に。映画「プライベート・ライアン」ほか「バンド・オブ・ブラザース」「ペニーワース」にも登場

| ジープはアメリカを第二次大戦の勝利に導いた功労者だと評価されている |

その一部は「ハマー」となってGMへ、「ジープ」の商標はステランティスへと引き継がれることに

さて、1944年に製造された「ウィリス・ジープ」がオークションに登場。

ただしこのジープは「普通のジープ」ではなく、1962年から映画撮影用車両の提供を行っているTLOフィルム・サービスが所有しているもので、これまでには「プライベート・ライアン(1998年)」「バンド・オブ・ブラザース(2001年)」「ペニーワース(2019年)」などの映画やTVドラマシリーズの撮影に使用されたという個体だと紹介されています。

ウィリス・ジープはこういった誕生の経緯を持っている

なお、ウィリス・ジープについてちょっと説明しておくと、このジープは米軍が民間企業に「求める用件」を提示して開発させた軍用車に源流があり、基本設計はバンタム社、そしてこれを改良し生産したのがウィリスとフォード(バンタム社も製造を行っている)。※GMは要件を満たせず、要請を受けたにも関わらず開発から手を引いている

とにかくこのジープについてはよくわからない点も多く(当時は混乱を極めた時代であり、軍主導により、数社交えて開発が急ピッチで進められたからだと思う)、そもそも「ジープ(Jeep)」という名称の由来までもがナゾのまま。

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参考までに、トヨタ・ランドクルーザーのルーツもGHQの要請によって開発された高機動型4輪駆動車にあって、しかしこの際には三菱が制式採用されることになり、よってトヨタはこの時に開発したBJ(B型エンジン搭載ジープ)を民生用に転用し、これが「ランクル」となっています。

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ちなみにこの「フロントグリルとヘッドライトを同じパネルに設置する」という効率的な設計はフォードの発案であるとされていますが、のちにフォードが手を引いたためにウィリス社が自社のパテントとして登録してしまい、よってフォードはこれを(のちのちの市販車においても)使えなくなってしまうことに。

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そしていよいよ1942年からジープの生産が始まって実戦投入され(結果的にウィリス社のジープだけで36万台超が生産されている)、その活躍ぶりは第二次世界大戦における勝利の立役者として大きくアメリカ国内でも報じられたこともあって民間人の間にもその存在が広く知れ渡っていたといい、そういった事情を背景としてウィリス社は戦争が終わった後にこのジープを民生用として売り出します。

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ただし1953年にはカイザー社によって(ウィリス社が)買収の憂き目にあい、そのカイザー社は1970年にアメリカン・モーターズ・カンパニー(AMC)に買収され、このAMC時代に軍用車部門として設立されたのがAMゼネラル。

そしてこのAMゼネラルが「ウィリス・ジープ」後継として開発したのがハマーH1のベースとなる「ハンヴィー(HMMWV=High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle(高機動多用途装輪車)」です。※そのため、ハマーはジープ顔を持っている

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このあたりからちょっと話がややこしくなり、1980年にAMCはルノーに買収されているものの、「アメリカの軍用車を作っている会社がフランスの手に渡るのはよろしくない」というアメリカ政府の判断によってAMゼネラルが切り離されて政府管轄となり、その後にLTV傘下、そしてレンコグループ傘下となるものの、レンコの業績悪化に伴い、「ハマー」の商標使用権がGMへと売却され、よってGMは「ハマー」の名を使用することが(現在に至るまで)可能となっています。

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そして一方、ルノーの手に渡ったAMCですが、「ジープ」の商標権はAMゼネラルではなくAMCに付随していたので「ジープ」はAMCとともにルノーの手にわたり、しかし1987年にはクライスラーがこのAMCを取得したため、ジープの所有権はクライスラーへと移ります。

その後クライスラーはダイムラーと合併した後にこれを解消し、フィアットがクライスラーを吸収する形でフィアット・クライスラー(FCA)となり、そしてFCAはPSA(プジョー・シトロエン)と合併することで2021年よりステランティスとして機能しています。

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よって、ジープの軍用車的な部分はAMゼネラルとともにGMへ、ジープの商標権はステランティスへと分散して渡ってしまったわけですが、自動車業界ではときどきこういった「奇妙なねじれ」が生じます(BMWとVWによるロールス・ロイス/ベントレー買収のときのように)。

今回出品されるウィリス・ジープはこういった経歴を持っている

すっかり前置きが長くなってしまったのですが(これでも随分端折ったつもりではある)、今回オークションに登場したジープについて見てみると、このジープをTLOフィルム・サービスが取得したのは1996年1月で、それまでには3人のオーナーが存在したもよう。

1977年には英国に輸送されて現地ではじめて登録されており、その後2023年2月にはレストアを受けて現在の状態へと復元されています。

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ちなみにですが、この「ウィリス」ジープの生産は1964年で終了しているものの、三菱が製造していたジープはなんと1998年まで生産されており、フォルクスワーゲン・ビートルのように生産地を変えながら生きながらえたと捉えることも可能です。

さらに余談ではありますが、インドではマヒンドラ&マヒンドラが今でもライセンス生産を行っており、この関係で同社はジープっぽい市販車を発売しているものの、現在ジープの商標そしてデザインを所有するのはステランティスなので、これが度々問題となっているようですね(ただ、マヒンドラ&マヒンドラとしては、AMゼネラル時代からジープをライセンス生産してきたという言い分があるのだと思われる)。

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いずれにせよ、このウィリス・ジープは自動車史に名を残すクルマであることは間違いなく、そして今回はその初期のクルマを手に入れる(かつ映画に登場した貴重な個体を手に入れることができる)またとないチャンスかもしれません。

予想落札価格は最高で22,000ポンド(現在の為替レートにて約400万円)というエスティメイトが提示されていますが、コレクターに取ってはけして高くはない金額だと思います。

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参照:ICONIC AUCTIONEERS

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