| この「25,000ドルの」EVは大幅にコストが引き下げられると言われているが、当初の公約通り25,000ドルで発売することは難しいだろう |
人件費の高騰、インフレ、金利の上昇など「悪条件」が重なりすぎている
さて、かねてより話題となり、大きな期待が寄せられているテスラの新型「25,000ドルのEV」。
このエントリーレベルのEVが登場すること自体は明らかではあるものの、現時点ではその発売時期は明らかではなく、しかし(中国の自動車メーカーが製造する)中国製の安価なEVに対抗する手段として注目を集めています。
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テスラの新型エントリーEVは「ドイツ生産」
そして今回明らかになったのが(テスラ情報筋の話として語られた)生産地。
報道によると、このエントリーEVの生産工場はドイツにあるギガ・ベルリンになるといい、これはちょっと意外な選択です。
というのもテスラにとってもっとも大きな市場は中国であり、そしてもっとも厳しい競争に巻き込まれているもまた中国だから。
実際のところ、このエントリーEVは当初中国専用モデルとして話が出ていて、デザインも中国内にて中国人を起用して行うという話が出ていたほどで、かつギガ上海では非常に高い生産効率を誇っており、つまり工場としてのレベルも高いところにあると考えられます。
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テスラはなぜドイツで「安価なEV」の生産を行うのか
こういった状況にあるにもかかわらず、人件費が高い、そして中国市場への輸送コストがかかるドイツにて生産を行う理由はちょっとナゾ。
ただし考えられる理由がないわけでもなく、1つは「自動運転機能の内蔵」。
これについてはイーロン・マスクCEOが以前に言及したことがあり、このエントリーEVには高いレベルの自動運転機能が備わっていて、それによって「自分がクルマを使用していない時に勝手に走らせ、ロボタクシーとして収益を上げることが可能になる」。
そしてこういった高度な自動運転を実現するためのサプライヤーがドイツに集中している可能性があり、そしてテスラはそういった技術を中国のライバルに盗まれたくないのかもしれません(上海で生産すると、技術が持ち出される可能性がある)。
そのほか、単にギガ・ベルリンのほうが「新しい設備を導入しやすい」「優秀な作業員を確保しやすい」等の理由、そして中国の地政学的なリスク、さらには中国で生産した場合、他国へそれを輸出すると「関税を課される可能性」にまで踏み込んだのかもしれません。
低価格の実現に際しては解決すべき課題が多い
なお、この「25,000ドルの」EVの話が出てきたのは数年前の話であり、よって昨今のインフレを考慮するならば、「25,000ドルで発売する」のは非常に困難かもしれません。
加えて当初予定していた(であろう)人件費の安価な中国ではなくドイツで製造するとなるとなおのことではありますが、テスラとしてはモデル3やモデルYよりも低い利益でこのエントリーEVを販売する意味はなく(多くの顧客がこのエントリーEVに流れるはずで、このクルマの利益率・利益額を高くしておかねばテスラは利益率や利益額を下げてしまう)、よって様々な手段でこのクルマを”儲かるクルマ”とするのは間違いなさそう。
そのひとつとして報じられているのがEVのアンダーボディのほぼ全体をダイキャストで一体成型する計画で、ウワサによれば、この新たな製造技術により、新車をゼロから開発するのにおよそ18~24カ月しか要さず、通常の「3~4年」という期間を大幅に短縮できるとされています。
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一方、コストが上がってしまう理由もいくつかあり、ひとつはインフレ、そしてもう一つ大きなものとしては人件費。
テスラは(ギガ・ベルリンの)従業員の給与につき、1月から4%の賃上げを行うことを約束したと報じられており、しかしドイツの労働組合IGメタルによると、2022年の団体交渉において、テスラの賃金は他の自動車メーカーが提示した賃金よりもおよそ20%低かったといい、よってさらなる賃上げに対応せざるを得なくなるのかもしれません。
ちなみに(ストライキで話題になった)フォードは「5年間で25%の賃上げを行うと、1台あたり850ドルから900ドルの(人件費ぶんの)製造コスト上昇がする」という試算を出しており、これはバカにならない金額です。
ただしテスラの場合はフォードよりも自動化が進んでいるものと思われ、フォードほどのコストアップはないと推測されるものの、「モデル3やモデルYに近い価格」で発売してもその意味は薄く、「中国車に対抗できる」価格で発売しなければ販売台数を大きく増加させることは難しいため、なんとかして(25,000ドルは無理でも)25,000ドルに近い価格で発売してくるのかもしれません。
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参照:Reuters