
Image:Porsche
| ただし「グレー」には様々な色味があり、街の風景が変わったことは間違いない |
とくに「メタリックではないグレー」は今までには無かった新しいカラーでもある
「最近、街を走るクルマのボディカラーが白、黒、グレーばかりでどれも似たように見える……」そんな風に感じたことがあるかもしれません。
あるいは出先で停めた駐車場にたたずむクルマのボディカラーがすべて「同じ」だったということも。
自動車メーカーのカタログを開けば、深みのあるブルーや鮮やかなグリーン、リバイバルを果たしたオシャレな内装色など、魅力的なカラーリングが多数ラインナップされていて、しかし現実にぼくらが道路で見かけるクルマたちの「8割」は色彩を持たないモノトーンの世界に染まっている、というのが実情です。
なぜ自動車メーカーの努力とは裏腹に、世界はこれほどまでに無彩色で埋め尽くされてしまったのか。
米国の自動車リサーチ機関「iSeeCars」が発表した膨大な統計データをもとに、1996年からの30年間で起きた劇的な市場の変化、そしてその背景にある「ディーラーの思惑」や「リセールバリュー」のリアルな裏事情に迫ってみましょう。
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この記事の要約
- 新車の80.4%が無彩色: 米iSeeCarsの最新調査によると、現在の米国における新車市場(2025年モデル対象)における「白・黒・グレー・シルバー」のシェアは8割を超え、街の景色が完全にモノトーン化している
- 30年前からの劇的なシフト: 1996年時点では無彩色の割合は47.3%と半数以下だったが、この30年で「グレー」のシェアが約6.5倍に激増するなど、有彩色(カラフルな色)が急速に駆逐されている
- スポーツカーだけが最後の砦: 最も無彩色化が進んだのはトラック(83.5%)やSUV(79.3%)だが、スポーツカーだけは有彩色が約36%を占め、ブルーやレッドが今も根強い人気を誇る
- 「売る時の都合」が最大の原因: ディーラーの在庫リスク回避や、ユーザー側の「リセールバリュー(下取り価格)で損をしたくない」という心理が、この無難な選択を加速させている
自動車ボディカラー市場シェアの変遷(全体平均)
米iSeeCarsが実施した最新のボディカラー調査によると、新車の外装色においてホワイトが25.7%で首位を獲得し、僅差でブラック(23.4%)、そしてグレー(22.9%)が続くという結果に。
ここにシルバー(8.4%)を加えると、なんと全体の80.4%が「無彩色(グレースケール)」で占められていることが明らかになっていて、これは30年前の市場と比較すると驚くべき変化でもあり、というのも1996年当時、白・黒・グレー・シルバーを合わせた無彩色のシェアはわずか47.3%にしかすぎず、つまり、当時は道路を走る新車の半数以上が、レッド、グリーン、ブルーなどの鮮やかな「有彩色」だったというわけですね。

この30年間で何が起きたのか、市場全体のシェア変化をまとめたのが以下のデータ表で・・・。
| 順位 | ボディカラー | 最新シェア | 1996年シェア | 30年間の増減率 |
| 1 | ホワイト(白) | 25.7% | 22.1% | +16.7% |
| 2 | ブラック(黒) | 23.4% | 14.2% | +64.5% |
| 3 | グレー(灰色) | 22.9% | 3.6% | +528.4% |
| 4 | ブルー(青) | 9.1% | 10.2% | -10.8% |
| 5 | シルバー(銀) | 8.4% | 7.3% | +14.3% |
| 6 | レッド(赤) | 7.0% | 20.1% | -65.2% |
| 7 | グリーン(緑) | 2.2% | 13.4% | -83.8% |
| 8 | ブラウン(茶) | 0.4% | 2.9% | -84.6% |
| 9 | ベージュ(薄茶) | 0.4% | 1.6% | -73.8% |
| 10 | オレンジ(橙) | 0.3% | 0.2% | +2.5% |
| 11 | イエロー(黄) | 0.1% | 0.3% | -59.4% |
| 12 | ゴールド(金) | 0.0% | 2.3% | -98.1% |
| 13 | パープル(紫) | 0.0% | 0.7% | -94.7% |
データを見ると一目瞭然ですが、特に「グレー(灰色)」の伸び率が+528.4%と凄まじい爆発力を見せています。
かつて一世を風靡したグリーン(13.4%→2.2%)やレッド(20.1%→7.0%)、そしてゴールドやパープルといった個性的なカラーは、今や市場からほぼ「絶滅」しかけているのが現状で、有彩色の中で唯一奮闘しているのはトップ5に滑り込んだブルー(9.1%)だけという有様に。

そしてこの「グレー」の伸びについては色々と考えるべきことが多く、ここ最近だrとトヨタの「アッシュ」、マツダの「ポリメタルグレーメタリック」などの「今までのメタリックグレーとは異なる選択肢」が登場したことがひとつの理由としても考えられます。
参考までに、ぼくがクラウンスポーツを購入する際、「アッシュ」は不人気カラーの一つでもあり、「やめといたほうがいいですよ」とディーラーにアドバイスされたものの、1年後に売却する際には「人気色の一つ」となっていて、つまりこの1年の間、日本においても(メタリックグレーではない)グレーが市民権を獲得したということに。

そしてこの「グレー」の範囲は非常に広く、ポルシェの「クレヨン」のように薄いグレーもあれば、「青っぽいグレー」「緑っぽいグレー」「ベージュっぽいグレー」など様々なグレーが存在し、そしてこういったグレーは普及価格帯のクルマから高級車まで、そして欧州車(主にフランスとドイツ)、さらには日本車「コンパクトカーや軽自動車にもグレーは多い)まで幅広い範囲で採用されており、こういったグレーの多様性が「グレー全体のシェア」を引き上げているのかもしれません。

なお、なぜいこういった(メタリックグレーではない)グレーが急激に勢力を伸ばしたのかはわかりませんが、主にはこんな感じなんじゃないかと推測しています。
- スポーツカーセグメントでは、「戦闘機っぽい」というアグレッシブな理由(ランボルギーニのグリジオ・テレストが火付け役かも)→積極的理由
- 高級車セグメントでは、「そろそろ白黒に飽きてしまい、しかし個性的なカラーではリセールに響くため、刺激の少ないグレーを選んだ」→積極的だが消極的な理由
- コンパクトカーセグメントでは、「まるでフランス車のようなおしゃれ感がある」ことから選択されるように→積極的理由
- 全体的には、やはり「人と違う個性を主張したいが、行き過ぎたカラーはちょっと」という傾向
- コロナや戦争によって、明るい色を積極的に選ぶ心理状態ではなくなり、しかし「気分を変えるため」新しく登場したカラーである「グレー」を選んでみた
- 自動車メーカーが「イメージカラー」にグレー系を採用する機会が増え、それにあわせて消費者もグレーを選ぶように

車種カテゴリーごとの特徴と、色彩を保ち続ける「最後の砦」
ただ、この無彩色へのシフトは、すべての車種で一様に進んでいるわけではないといい、日常的に使われる実用車と趣味性の高いエモーショナルなクルマとの間では明確なコントラストが生まれていることも明らかに。
1. トラック・SUV:完全にモノトーンに降伏した実用車
最も無彩色化が顕著だったのが、北米市場を牽引する大型ピックアップトラックとSUVのセグメント。
- トラック: 1996年の無彩色比率43.4%から、最新データでは83.5%(+92.4%)へと急増。全カテゴリーの中で最も激しくモノトーン化が進む
- SUV: 同様に、1996年の43.8%から79.3%へと上昇
ファミリーユースや仕事の相棒として選ばれるこれらの車種では、「飽きがこないこと」「誰が乗っても違和感がないこと」が最優先されていることが伺えます。

Image:Hyundai
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2. スポーツカー:個性を主張する「最後の砦」
一方でクルマ好きが乗る「スポーツカー」セグメントだけは今も豊かな色彩を保ち続けていて・・・。
- 無彩色の割合: 他の車種が8割を超える中、スポーツカーは63.6%に留まる
- 有彩色の人気: ブルーが15.5%、レッドが10.8%を占め、さらに他車種ではほぼゼロだったパープル(1.8%)やイエロー(2.3%)、グリーン(4.5%)もしっかりと存在感を示している
スポーツカーを選ぶオーナーにとって、ボディカラーは単なる「外装の色」ではなく、自身のライフスタイルやこだわり、クルマの持つパフォーマンスを表現するための「重要なスペックの一部」だからだとも考えられ(フェラーリにおけるロッソ、あるいはヘリテージカラーはもはや性能の一部と言ってもいい)、ポルシェのカスタムカラーシステム(PTS)や、フェラーリが過去にモータースポーツにて使用していたカラーが今も熱狂的に愛されているのも、この心理の表れなのかもしれません。
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① ディーラーの「在庫リスク」と販売戦略
新車を購入する際、多くのユーザーは「注文して何ヶ月も待つ」より、「ディーラーの店頭にある在庫車をすぐに手に入れたい」と考えます。
売り手であるディーラー側からすれば、売れ残るリスクが最も低いのは老若男女だれにでも受け入れられる「白・黒・グレー」。
パープルやグリーンのような尖った色のトラックやSUVを仕入れてしまうと、万が一好みが合う買い手が現れなかった場合に長期在庫となってしまい、結果として、ディーラーが発注する段階では”安全牌”である無彩色ばかりが選ばれるサイクルが完成するというわけですね。

② リセールバリュー(下取り価格)の絶対的な格差
現代の自動車購入において、「数年後にいくらで売れるか」というリセールバリューは無視できない要素です。
一般的に、中古車市場でも「ホワイトとブラック」は圧倒的に需要が高いため査定額が高値で安定する傾向があり、逆に個性的な有彩色(一部のスポーツカーの限定色などを除く)は買い手が限定されるため下取り価格が大きく下がってしまう傾向に。
「本当は鮮やかな青や赤に乗りたいけれど、数年後の売却時に何十万円も損をしたくない」という合理的な自衛心理がユーザーの選択肢を狭めているのだとも考えられます。
③ 現代人の「所有」に対する価値観の変化とリース・ローンの普及
近年、カーリースや残価設定型ローン(残クレ)を利用して車を所有する人が増えていて、これらの買い方では、数年後の返却時(あるいは売却時)の「想定価値」があらかじめ設定されているため、よりリセールの安定した色を選ばざるを得ないという構造的なバイアスが働くことに。
これはクルマが「一生モノの愛車」から「数年サイクルで乗り換える資産」へと変化したことを意味しており、この傾向が無難な色選びを後押ししているのかもしれません。
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結論
自動車メーカーがどんなに魅力的な新色を開発し、インテリアに美しいカラーを導入しても、市場の主役が「白・黒・グレー」であるという現実は、当面変わりそうにありません。
それは消費者の好みが退屈になったからではなく、購入から売却に至るまでの「経済的な合理性」を追求した結果、導き出された現代人の賢い選択の裏返しでもあるからです。

しかし、すべての車が無彩色になってしまっては、せっかくの美しいデザインや、クルマが持つ本来の「運転する楽しさ、所有する喜び」というエモーショナルな側面が薄れてしまうのもまた事実。
もし次に乗るクルマを検討しているならば、あえてリセールバリューという呪縛から一歩踏み出し、自分の心が本当にときめく「お気に入りのカラー」を選んでみるのもいいかもしれず、スポーツカー乗りたちが今も体現しているように、色彩豊かなクルマが1台増えるだけでも「退屈なグレースケールの道路をパッと華やかに変える」素敵な主役になれるのかもしれません。
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参照:iSeeCars, CARSCOOPS











