| テスラはほかの自動車メーカーとは全く逆の動きを行っている |
自ら市場を創出し、先行者利益を最大化している
さて、少し前からウワサとなっている「2万5000ドルの」もっとも安価なテスラの発表が2024年になるだろう、との報道。
なお、この安価なテスラについてはイーロン・マスクCEOも直接言及しており、その発表時期がいつになるのかはともかく、「登場する」ことは間違いないものと思われます。
そして今回の報道によれば「テスラは2024年までモデル2の発表を待つだろう」「同社が低価格モデルをあまりにも早く発表した場合、テスラはより広い自動車不況となる可能性が高い中、生産能力を増強する一方でモデル3の販売を減速させる危険性がある」。
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テスラは意図的に廉価版テスラの販売を遅らせる?
これらのコメントからは、テスラが意図的に「もっとも安価なテスラ(仮にモデル2と呼ばれている)の発売を遅らせる」ようにも読み取ることができますが、中長期的に見て利益を最大化するならば、テスラが意図的にモデル2の市場投入を行うことは十分にありうるかもしれません。
テスラは(少量生産の初代ロードスターを除くと)比較的高価なモデルS、モデルXを投入して富裕層を中心にその人気を獲得しているものの、その後にメルセデス・ベンツやポルシェなどの既存自動車メーカー、そしてルシードなどの新興EVメーカーが「モデルSのライバル」を開発し投入を行うのを尻目に、さっさともうひとつ下のセグメントに位置する「モデル3」「モデルY」へと移行してしまい、その量販モデルの価格帯をシフトさせています。
つまりは「妥当モデルS、モデルX」を掲げて追ってきたライバルたちに肩透かしを食らわせ、ライバルたちに勝手に争ってもらっている隙に新たなる市場を自ら創出して逃げ切ったということになりますね。
ただ、ここでテスラにとって「計算外」だった可能性は中国の自動車メーカーの台頭で、つまりはBYD、NIOやシャオペンが真っ向からモデル3やモデルYにぶつけるクルマを発売したことだったのかもしれません。
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これら中国メーカーは、欧米の自動車メーカーとは比較にならないほどの速さでニューモデルを開発し投入しているわけですが、これによってモデル3やモデルYが脅威にさらされることになり、そこで構想として持ち上がったのがモデル2なんじゃないかと考えています。
つまりテスラは常に「ライバルと戦う」よりも、自ら創出した新しい市場にて先行者利益を得ることで成長してきたわけですが、これはセミ(トラック)やサイバートラックという構想を見ても理解ができるかもしれません。
テスラ・モデル2は新たなる市場を創出できる?
そこで気になるのが、このモデル2と(仮で)呼ばれるニューモデルがテスラにとっての新しい市場を創出できるかどうかということで、今のところは(モデルS)、モデルXのときと同じように)他社が打倒モデル3 / モデルYを掲げており、よって現在の状況であれば、テスラは三度「新しい市場で」その利益を最大化できるのかも。
なお、一般的に見て、価格が安くなればなるほど1台あたりの利益は縮小するので、多くの自動車メーカーは「高価格帯」への移行を狙うのですが、テスラの場合はその逆の動きを行っていて、しかしそれでも利益を失わないようにコストダウンを継続して行っています。
そのためモデル3の製造原価は、製造開始時に比較すると半分以下にまで下がっているといいますが、このコストダウンについては「何かを省略したり、品質を落したり」するわけではなく、機能や品質を向上させつつも、生産効率を改善することで生産にかかる費用を引き下げていて、ここは他の自動車メーカーとは大きく異るところです。
そしてテスラは「なにかのためになにかを犠牲にできる」会社でもあり、モデル3とモデルYの生産効率を追求させるために「意図的に」サイバートラックやセミ、モデル2の開発や生産を後回しにしていて、よって今はまだ「モデル3とモデルYの生産効率を向上させ、サイバートラックの製造を行う」ことを優先し、そのためにモデル2を2024年まで待機させるということも十分に考えられます。
実際のところ、ここしばらく先においても、モデル3のフェイスリフト、廉価版モデルYの投入、4680バッテリーへの切り替え、サイバートラックの生産などのイベントが控えており、ここで焦ってモデル2を投入する必要はないのかもしれません(現時点で、高性能で安価なEVが市場に存在し、それにシェアを奪われているわけでもなく、ライバルたちにはこの価格帯のEVを作って利益を上げることは構造的に不可能であるように思われる)。
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参照:Teslarati