| 1980年代、ポルシェは「生産効率の悪さ」から倒産の危機に陥ったことがあるが |
それも「今は昔」の話である
さて、ポルシェ911は大きくラインアップを拡大していて、現在のところ「911カレラと911GT3 RSとの間に」18ものバリエーションが存在します(30近くまで増えた時期もある)。
そしてポルシェは非常に高い「オプション装着率」を誇っていて、製造されるポルシェ911は1台ごとに仕様が異なり、しかしこれら全てのポルシェ911(さらには競技用の911カップ用レーシングカーまで)が同じ工場の同じ生産ラインにて作られているわけですね。
ポルシェはどうやって「同じラインで」全く異なる911を作り分けているのか
これらの中には自然吸気エンジンを積むもの、ターボエンジンを積むもの、そしてRWDや4WD、マニュアル・トランスミッションにPDKなど様々な相違があるわけですが、今回ポルシェが911ダカールやS/Tなどの特別仕様車に焦点を当て、「どうやってそれらを作り分けているのか」を解説することに。
まず、すべての「起点」はどのポルシェ911も同じであり、約300台のロボットによってホワイトボディが組み立てられます。
Image:Porsche
ここからすべての911は、さらなる組み立てのためにメインラインに向かいますが、カーボンファイバーが多く使用されるモデルだと、この時点で特別な組立台車に移されて別の作業スペースへと移動し、カーボンファイバー含む軽量部品が手作業で調整され適切にフィットするように取り付けられたのち、再び標準の組立ラインに戻ってくるのだそう。
たしかにこの秋にフェラーリとランボルギーニの工場を見学した際にも同様のプロセスが採用されており、各車両のボディは「自走する台車」に載せられて工場内を「適切な作業場所へ」と移動しており、その通路を確保したレイアウトが保たれています(よって人間は、その台車に轢かれないよう、ラインで区切られた区画を移動する)。
これは従来の工場にありがちだった「ベルトコンベアーでどんどん車体が流れてくる」のとは全く異なる様相で、「特別な作業を要する個体があれば、そこで流れがストップしてしまう」ことを避けることができ、非常に効率的なシステムであるという印象。
Image:Porsche
ポルシェは「インテリア」においても同様の手法を採用している
そしてポルシェは「インテリア」にも多様な(ゆうに1,000を超える)オプションを導入していますが、こちらも車体同様に「そのオーダー内容にあわせ」適切に処理がなされ、しかし内装パーツの仕上げには「熟練技」を要するため、同工場内の工房にて製作されたパーツ(たとえば裁断されたレザーを縫い合わせ、パーツに貼り付けたもの)をあらかじめ別に用意しておき、これを「台車に載ってやってきた車体」へと組み付けることとなるのだそう。
Image:Porsche
なお、もっとも手間を要する工程は「塗装」だそうですが、911ダカールのようなツートン仕上げの車両(ツートン塗装は911ダカールにてはじめて導入された)は、再びメインラインを離れ、カスタムカラー専用の塗装ブースへと(台車とともに)向かうと良い、ここではロボットは一切関与せず、2人の専門家が手作業にて「2つめの」カラーを塗装するのだそう。
ポルシェによると、塗装の作業自体は(通常の場合でも)少なくとも7時間を要し、カスタムナンバーやストライプなどが含まれる場合は、さらに長くなり、そしてツートン塗装の全工程は、最初から最後まで30時間以上かかることもあるのだそう。
Image:Porsche
そしてこれらのペイントが終了したのち、再び台車に載った車両はメインのラインへと戻って「列につき」、最終的組み立てへと向かいます。
「911モデルの生産工程において、ツェッフェンハウゼン工場では自動化された生産の強みと自動車マニュファクチュールの利点をユニークに組み合わせています。限定モデルの911は、私たちの自動車職人技を披露する特別な機会です。工場内の異なるマニュファクチュールの段階によって、私たちはエクスクルーシブな911モデルを本当にユニークなものにすることができます。」ポルシェ ツェッフェンハウゼン工場 副社長 イェンス・ブルッカー
Image:Porsche
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