| イタリアは雇用と同時に「ブランド」を守ろうとする法律があるようだ |
完全にカルロス・タバレスCEOが「悪者になってしまった」感が隠せない
さて、イタリア政府がステランティスとの協力再開を検討しているとの報道。
ステランティスはイタリア最大の自動車ブランド「フィアット」、そしてアルファロメオやマセラティ、ランチアを抱えていますが、12月に退任したカルロス・タバレス前CEOとイタリア政府とは対立関係にあり、しかし同氏の退任後、イタリア政府はこの関係を修復したいと考えているもよう。
なお、イタリアにはこのほか「フェラーリ」「ランボルギーニ」が存在し、ある意味では日本以上に重要な自動車資産を持つと考えてよく、実際にイタリア政府は自動車メーカーに対して強く関与する例が見られ、経営危機に陥ったランボルギーニを(イタリア政府が)所有していたこともあるほどです。
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イタリア政府はステランティス支援の準備があることを示唆
そこで最近、イタリア自動車産業との大規模な会議を前に行われた政治イベントにて、ジョルジャ・メローニ首相が「私たちは、経済的な事案をその内容に基づいて評価します。これはステランティスにも他のイタリアで活動する企業にも当てはまります。もし建設的なアプローチがあり、工場と雇用の維持に意欲があれば、私たちはその部分を果たす準備があります。」とコメントし(危機的状況にある)、ステランティス支援のために手を差し伸べる用意があることを示唆。
ただ、ステランティスとイタリア当局は過去1年間にわたり対立を繰り返しており、直接の原因は「イタリアでの生産を100万台に増加させる」とカルロス・タバレス前CEOがイタリア政府に対して約束したものの、実際には75万台にとどまったこと。
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これは雇用そして外貨獲得という観点からも喜ばしいことではなく、よってイタリア政府は中国の自動車メーカーを引き寄せ、イタリア国内での製造施設設立を促すための働きかけを行うわけですが、これがステランティスを刺激することになったのだと思われます(イタリア政府は実際に、紅旗との合弁企業の設置を実現させている)。
さらにこの対立関係はエスカレートし、今年7月には、イタリア政府がステランティスから2つの休眠ブランド(オートビアンキとイノチェンティ)を接収する可能性が報じられたのですが、その理由は「5年以上使用されていない歴史的ブランドを政府が取得することができる」という現地の(イタリアらしい)法律に基づいたもの。
加えて8月には、ステランティスが約束したバッテリー生産工場に対して明確なコミットメントを示さない場合、EUの提供するコロナウイルス回復基金から3億7,000万ユーロを保留する可能性があるという警告をイタリア政府が発しており、文字通りの「一触即発」状態にあったわけですね。
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ただしカルロス・タバレスCEOの退任によって事態が大きく変わる
しかしながら「対立の原因」を作ったカルロス・タバレスCEOが退任し、その退任にあわせてステランティス会長のジョン・エルカン氏がジョルジャ・メローニ首相に連絡を取ったと報じられていて、そこから今回の関係修復に至りつつあるわけですが、現在はイタリアのウルソ産業大臣にまで話が降りているとされ(つまりこの話が具体化している)、同大臣は「ステランティスの再生には、イタリア国内の工場を保護する積極的な計画が必要です。カルロス・タバレスは現実を理解していなかった」とコメントしており、「新しく生まれ変わる」ステランティスに大きな期待を寄せているもよう。
今後、イタリア政府とステランティスとの関係がどう修復されるのかはわかりませんが、両者が手を取り合うことはお互いにメリットがあり、今後の展開に注目したいところです。
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