
| 参戦初年度とはいえ、アストンマーティンはヴァルキリーAMR LMHの信頼性に苦しめられる |
WEC開幕戦では1台がリタイヤ、1台がトップから23周遅れでゴール
さて、先日行われたFIA世界耐久選手権(WEC)開幕戦ではフェラーリが1-2-3フィニッシュを果たしていますが、ここがデビュー戦となったのがアストンマーティン・ヴァルキリーAMR-LMH(ハイパーカー)。
これはWEC唯一の自然吸気V12エンジンを積むレーシングカーであり、そのサウンドはもちろん非常に高い戦闘力を期待されていたのですが、カタールのルサイルサーキットを走行中、なんと「ドアが吹っ飛んでゆく」というアクシデントに見舞われ、苦い幕開けとなっています。
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そのトラブルは32周目に発生
この問題が起きたのはカタール1812kmレースの32周目で、まずはゼッケン009のヴァルキリーの助手席側のドアが突然開いてしまいます。
ステアリングを握っていたのはマルコ・ソーレンセンですが、レースディレクターのエドゥアルド・フレイタスは直ちに無線で彼にピットへ戻るよう指示するも、マルコ・ソーレンセンはガルウィングドアが帆のように風を受ける状況にもかかわらず、慎重に走ることなく通常のペースで走行を続け、その結果、空気抵抗によってドアはヒンジごと吹き飛ばされてしまったわけですね(オンボード映像では、内側からなんとか閉めようと苦闘する様子も見られたが、ドアに手が届かない)。※周囲のクルマにとっても危険な状況であるように見えるが、ペナルティが課されなかったのが不思議である
その後、コースマーシャルが外れたドアを回収し、チームメカニックが(ピットインした)ゼッケン009のヴァルキリーAMR LMHに交換用のドアを装着することでヴァルキリーAMR LMHはレースには復帰したものの、優勝したフェラーリ499Pからは23周遅れの結果に終わっています。
Image:Astonmartin
一方、もう一台のヴァルキリーAMR LMH”ゼッケン007”は、全318周のレースのうち181周を走ったところでトランスミッショントラブルによりリタイアしてしまい、デビュー戦においてその信頼性が大きく揺らぐことに。
なお、アストンマーティンはWECの2台体制に加えてIMSAにも単独参戦する予定だったものの、ヴァルキリーAMR LMHの課題解決に専念するためデイトナ24時間レースを欠場することを発表しており、まさに「波乱の幕開け」といった状態でもありますね。
参考までに、IMSAのプレシーズンテストではトップカテゴリのどのマシンよりも周回数が少なく、WECのプレシーズンテストではトップから2秒遅れという厳しい状況となっていて、ヴァルキリーAMR LMHがトップを争うフェラーリやポルシェのプロトタイプカーと比べ、いかに遅れをとっているかが浮き彫りになっているというのが今の状況。
つまりは自然吸気V12エンジンが奏でる魅惑的なサウンドとは裏腹に、このル・マン・ハイパーカーが決定的なスピード不足、信頼性の欠如に苦しんでいることは明らかで、しかし次の戦いである(2週間後に行われる)IMSAのセブリング12時間レースでは、そのエキゾーストノートに見合うパフォーマンスを発揮できることを願わんばかりです。
WEC開幕戦にてトラブルに見舞われるアストンマーティン・ヴァルキリーLMHを捉えた動画はこちら
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参照:FIA World Endurance Championship(Youtube)