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ルノーCEOが突如退任、グッチ親会社のCEOへ。近年の自動車業界とハイブランドとの関係性を象徴か

ルノーCEOが突如退任、グッチ親会社のCEOへ。近年の自動車業界とハイブランドとの関係性を象徴か

| ルノーでの経験を活かし、不振を極めるグッチをどう蘇らせるのかに期待がかかる |

グッチは今年3月にデザイナーを入れ替え、さらに創業一族以外からCEOを迎えることで起死回生を図る

さて、ルノーCEO、ルカ・デメオ氏が「グッチを筆頭とするケリングのCEOへ就任する」との報道。

これによって同氏は7月中旬にルノーから退任することになりますが、「自動車業界からラグジュアリーブランド業界へ」という珍しい形での転職となります。

なお、現在のラグジュアリー業界においてはいくつかの大きなグループに別れており、大きく分けると以下の通り。

参考までにエルメス、シャネル、ロレックス、オーデマ・ピゲ、パテック・フィリップは「独立系」となり、他社によるコントロールではなく自社による運営を行っています。

  • ケリング・・・グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ブリオーニなどを保有
  • LVMH・・・ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、フェンディ、セリーヌ、ロエベ、ジバンシィ、KENZO、ベルルッティ、ティファニー、ブルガリ、タグ・ホイヤー、ウブロ、ゼニスなどを保有
  • リシュモン・・・カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペル、A.ランゲ&ゾーネ、ボーム&メルシエ、ジャガー・ルクルト、IWCシャフハウゼン、ピアジェ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、ダンヒル、モンブラン、ロジェ・デュブイなどを保有
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自動車業界とラグジュアリー業界の人材交流そのものは珍しくないが

なお、「自動車業界とラグジュアリー業界」とは縁遠いものではなく、というのも現代における自動車の一部が「ラグジュアリーアイテム」だから。

実際のところスーパーカーやハイパーカーを買い求める人々の多くは「速く走るため」ではなく「所有する満足感を得るため」に購入しているのだと思われますが(ぼくもその一人である)、現実的にフェラーリ、ロールス・ロイス、ランボルギーニ、ブガッティなどの販売手法は「ハイブランドそのもの」。

ランボルギーニは決算発表の場においては自動車業界ではなく「ラグジュアリー業界の指標」を自社の数値を比較していますし、フェラーリが現CEOを迎える前に(CEO候補として)検討したのがヴァレンティノなどのハイブランドのトップ人材だと報じられ、さらに現在のフェラーリの取締役会にはシャネルやディオール出身者や現職役員の名がズラリ。

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さらに近年のF1ではルイ・ヴィトンとのパートナーシップ契約が発表され、ルイス・ハミルトンもまたラグジュアリー業界との距離を急激に縮めているのが今日このごろ。

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ただし「ルノーとグッチ」とは

こういった感じで急速にラグジュアリー業界に接近する自動車ブランドではあるものの、それは「ウルトラプレミアム」セグメントにおいての話であって、ルノーという普及価格帯のCEOがラグジュアリーブランドのCEOに就任する例は極めて珍しいとも考えていて、ここから何が生まれるのかにはちょっと期待したいところです。

ただ、「普及価格帯のクルマとハイブランド」という組み合わせは欧州では珍しくはなく、これまでにもフィアットやシトロエンは「ジバンシィ」「ディーゼル」「アルマーニ」「ブルガリ」「グッチ」などのファッションブランドとのコラボモデルを発表したことがあり、直近だとランチアとカッシーナとのパートナーシップも報道されています。

こういった事例を見るならば、「普及価格帯のクルマと高級ブランドとの提携」は(欧州市場特有だと思われるものの)珍しいものではないのかもしれず、ある意味では「ルノーとグッチ」は現地だとそう違和感がない組み合わせなのかも。

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近年、グッチは販売低迷に苦しんでいる

現在のグッチは販売低迷に苦しんでおり、その大きな理由としてぼくが考えているのが、前々デザイナーであったアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が進めてきた「折衷主義(エクレクティシズム)とマキシマリズム」「ジェンダーレスなアプローチ」「ロマンティックで詩的な世界観」「レトロとコンテンポラリーの融合」「強烈な個性と視覚的インパクト」によるブランドの変革。

これらの方向性と、急速に発展した中国経済とが結びつき、グッチは中国の富裕層に支持されることで大きく販売を伸ばすことになるのですが、その反面「旧来のグッチの良さ」「旧来の顧客」を失ってしまうことになり、急激にブランドのイメージと顧客が変わってしまったことによる「反動」を吸収できないのが現在の状況だと考えています。

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その後グッチはデザイナーをサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)へと入れ替え、かつてのグッチを連想させる「クワイエットラグジュアリーへの回帰」「実用的で大人なデザイン」「歴史あるアイコンの再解釈」「エレガンスとセンシュアリティ」方面へと舵を切るものの、失われた良質な顧客は戻ってこず、しかしかつてのインパクトを失ってしまっために新しい顧客も獲得できず、サバト・デ・サルノはわずか2年でデザイナーの座から去ることに。

そして現在(2025年3月~)のデザイナーはデムナ(Demna)で、このデムナはバレンシアガのクリエイティブディレクターを務めていた人物であり、「ストリートウェアとハイファッションの融合」「ロゴやグラフィックの活用」「現代社会への風刺や問いかけ」という、アレッサンドロ・ミケーレにも通じる手法を採用し、しかしアレッサンドロ・ミケーレと異なるのは「風刺」という部分です(アレッサンドロ・ミケーレは現代社会を受け入れ、それを自身なりに解釈していたように思う)。

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こういった感じで苦悩を抱えているのが現在のグッチですが、ケリングではこれまで創業家がCEOを努めてきたという経緯があり、よってルカ・デメオ氏は「創業者以外のCEO」。

つまるところグッチは「それほどまでに苦しい」と解釈することもでき、今後の展開には期待したいところではありますね。

反面、ルノーからはルカ・デメオ氏の後任に関する発表はなく、しかしこの後任が「ファッション業界から」の人材であればまた面白いのにな、と考えたりしています。

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参照:Reuters

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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