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【V12 / V8は生き残る】フェラーリがEV計画を「後退」させた理由とは:2030年までに内燃機関・HV・EVを4:4:2の比率へ、内燃機関の比率は20%から40%へと「大幅引き上げ」

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| フェラーリ、電動化の野望を戦略的に「後退」 |

気になるのは「内燃機関比率増加」によるニューモデルの登場である

フェラーリが開催したキャピタル・マーケッツ・デイ2025では、ブランドの未来について非常に明確なビジョンが示されており、それは「電動化へのアクセルを緩めるという戦略的な大転換」。

フェラーリは待望の初の完全電気自動車(EV)である「Elettrica(エレットリカ)」に関する詳細を一部公開した一方、ブランドの核である内燃機関(ICE)の継続開発を強く誓約し、これは、株主よりもむしろ熱狂的なフェラーリファンにとって朗報かもしれません。

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2030年の製品構成比率を大幅に変更

フェラーリは、2026年から2030年までに年間4車種の新型車を発売する計画を提示しており、この戦略は、「異なるフェラーリを異なるフェラリスティへ、そして異なるフェラーリを異なる瞬間のために」提供するという多様なオファリングに基づいています(つまり、似たようなモデルを投入するのではなく、バリエーションを拡大するということになる)。

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しかし、最も重要な変更点は、2030年時点の製品ミックスの計画比率で、その構成比は以下の通り。

パワートレイン従来の2022年計画 (2030年目標)新しい2025年戦略 (2030年目標)
内燃機関 (ICE)20%40%
ハイブリッド (HV)40%40%
電気自動車 (EV)40%20%

フェラーリは、従来の計画で掲げていたEV比率40%という野心的な目標を半減させ、ICEの比率を倍増させるという、大胆な方向転換を行ったわけですね。

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V12エンジンの継続開発を宣言

この戦略転換の最大のメッセージは、V6、V8、そしてV12エンジンを含む全てのICEパワートレインの継続開発を確定したこと。

フェラーリは、「継続的なイノベーションの精神は常にクライアントの要望に焦点を当ててきた」と述べ、以下の方針を宣言しています。

「我々は、テクノロジーの中立性と生産の機動性の原則に基づき、内燃機関、ハイブリッド、そして電気パワートレインを組み合わせ、真にユニークな運転感情を提供するスポーツカーを創造し、新しい世界的規制に沿って、V6、V8、そしてV12内燃エンジンの提供と革新を続け、比出力の向上と代替燃料との互換性の確保に焦点を当てます。」

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これは、他のラグジュアリー自動車メーカーが野心的なEV化計画を見直している流れと軌を一にするもので、「誰も現在の市場の混乱が(この先)どうなるかを知ることができない」という現状に対応するため、ICE、HV、EVの全てで選択肢を持つという姿勢を明確にしたのだと捉えることが可能です。

初のEV「Elettrica」の性能詳細

ICE戦略が強化される一方、初のEVとなる「エレットリカ(Elettrica)」も驚異的なスペックで登場することがわかっており、デザインはまだ公開されていませんが、いくつかの技術的な詳細が明らかになっています。

  • 最高出力: 1,141馬力
  • 0-60 mph加速: 2.5秒
  • バッテリー容量: 122 kWh
  • 航続距離: 約530 km
  • 最高時速: 310km/h

加速性能は驚異的ではあるものの、推定で2.5トンという重量級ということも囁かれていて、ルシード エア サファイアやポルシェ タイカン ターボGTのような2.0秒以下の加速を誇る”EVの頂点”には届かず、しかし最高速は「EVとしてはかなり高い」レベルであることもわかります(エレクトリックモーターは高回転になると急速に電力を消費するので、最高速を抑えるEVが多い。タイカン ターボGTの最高速は290km/hである)。

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しかしフェラーリのEVは性能だけでなく、ブランド特有の「感情とドライビング体験」という核心的な価値を提供できるかどうかが「購入者の反応を左右する最も興味深いポイント」であることは間違いなく、そして「サウンド」もまた然り(サウンドについては、フェイクサウンドを”生成”するのではなく機械的なサウンドが”増幅”されることが明かされている)。

なお、スタイリングについてはこれまでの「どのフェラーリ」にも似ていない可能性があり、スケートボード型シャシーを採用することからフロアが高く、これによって全高が増すのは疑いようがないところです。

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Image:Ferrari

その一方でEVならではの利点を活かして「フロントシートを前に押しやっている」と説明されているため、キャブフォワード的ルックスが想定され、しかし後席を有するため”ロングルーフ”となるのかもしれません。※後輪操舵を持つことから、ホイールベースもかなり長くなることが想定される

そしてフェラーリのデザインスタジオを率いるフラビオ・マンゾーニ氏は「未来志向」の人物でもあるため、もしかすると「誰もが驚くような」先進的なスタイルを提案してくる可能性もありそうですね。

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そして、「異なるフェラーリを異なるフェラリスティへ、そして異なるフェラーリを異なる瞬間のために」というコンセプトから判断すると、あえてこれまでのフェラーリとは決別したスタイルを打ち出してくる可能性もあり、そのほうがプロサングエとの差別化も容易になると考えています。

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参照:Ferrari, Reuters

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