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アメリカでは「新車はお金持ちだけしか買えない」?平均価格が史上最高額となり、一方で新車を購入せず「中古購入」増加、平均所有期間も過去最長

テスラ

| アメリカにおける新車平均価格が初めて「5万ドル」を突破する |

はじめに:新車価格高騰の止まらない現実

最新の報道によると、アメリカの自動車市場では、手の届きやすいモデルの選択肢が減り続ける一方、すでに高価なSUVやトラックの価格がさらに膨らんでいる、とのこと。

そして、ついに新しい記録が打ち立てられたことも報じられ、アメリカにおける新車の平均取引価格(Average Transaction Price: ATP)が、史上初めて50,000ドル(現在の為替レートでは757万円)を突破したとされ、ここでこの記録的な価格高騰の背景、そして今後の市場動向を考察したいと思います。

1. 記録的な価格上昇:平均価格が5万ドルを突破

今回公開されたCox Automotive(コックス・オートモーティブ)のレポートによると、2025年9月、消費者が新車に支払った平均価格は「50,080ドル」。

これまでにも「徐々に」新車購入平均価格が上昇していることが報じられてきましたが、ついに「5万ドル」の大台を超えたとして話題となっています。

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平均取引価格の推移

項目2024年9月2025年9月変化率
新車平均取引価格$48,393$50,080+3.6%

この価格は前月(8月)比で2.1%の上昇、前年同期比では3.6%の上昇となっており、これに伴い、平均メーカー希望小売価格(MSRP)も月間で2.1%、年間で4.3%上昇することに。

コロナ禍以降の価格変遷

新車価格の高騰は、COVID-19(コロナウイルス)パンデミック時に始まり、その後も下がる気配を見せないまま。

  • 2019年:平均取引価格は39,000ドル弱
  • 2021年末:平均取引価格は47,000ドル超え
  • 現在:50,080ドルを記録

価格はパンデミック前の水準から大きく引き上げられて高価格帯にて定着し、ついに平均的な消費者にとって非常に高額な、”新しい価格帯”へと突入したことがわかります。

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2. なぜ新車価格は下落しないのか?

新車価格が高止まりする背景には、複数の複雑な要因が絡み合っています。

要因1:メーカーのコスト増と戦略的な価格設定

生産コストの上昇、規制の不確実性、そして関税などが自動車メーカーのコストを押し上げており、そのため、自動車メーカーが安価なモデルを健全な利益で生産することが困難になっています。

多くのメーカーは、利益率の高い高価なSUVやトラック、そして高グレードのモデルに注力する戦略を続けており、市場の平均価格を押し上げていますが、これはコロナウイルスのパンデミック直後に「半導体不足」となった流れを引き継いでいるようにも思います。

どういうことかというと、当時半導体の不足によって「新車を製造できなくなり」、その状況の中でも自動車メーカーは利益を確保すべく「高価格・高利益」車種の生産に重点をおいたのは御存知の通り。

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そしてその状況においても「新車がどんどん売れた」ので、自動車メーカーとしては「別にクルマを安く作らなくても売れるのでは」と気づいたんじゃないか、というわけですね。

よって各社ともその後”引き続き”高価格・高利益政策を継続し、車両の大型化・高級化、そして高付加価値化によって新車価格を押し上げ続けてきたのかもしれません。

要因2:電気自動車(EV)への需要シフト

なお、北米特有の事情となりますが、今回Cox Automotiveは、今回の価格上昇の大きな要因の一つとして、連邦税額控除の期限切れを控えた電気自動車(EV)への需要増を挙げています。

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フォードやGMが堅調なEV販売を報告しており、これが平均取引価格を押し上げた可能性が高いというのが同社の見立てであり、EVは一般的にガソリン車よりも高価であるため、販売台数が増えるほど平均価格が上昇している、と分析しています。

テスラ
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要因3:低価格帯モデルの供給不足とラインナップ縮小

現在、アメリカで販売されている30,000ドル以下の車のほとんどは輸入車であり、現在はトランプ関税の対象に。

そしてこれらのクルマを購入していたのは「価格に敏感な層」「クルマは移動手段であって、安ければ安いほどいいと捉える層」だと考えられ、よって「関税によって高額になってしまった、もともと安価なクルマを買う」ことに意味を見いだせなくなっているのだと思われます。

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これはほかにも報じられている、「中古市場の活況」「平均所有年数の長期化」といった報道からも伺うことができ、つまり安価な新車を購入していた人々は「中古車にシフト」「買い控え」といった状況へと移行しているのかも。

よって自動車メーカーとしては、多くの消費者が高額な価格を支払う意思がある限り、無理に利益の薄い低価格市場(さらには競争が厳しい)に注力する必要がない、というのが現在の市場の現実なのでしょうね。


まとめ:平均的な消費者の受難は続く

これらの状況を踏まえると、一時的な要因である「EV販売の増加」は別として、

  • 高くても買う人は買う
  • 安価な新車を購入する人が減り、安価なクルマを求めて中古車を購入、あるいは「買い替えない」という選択も
  • メーカーとしては利益を確保するため、安価なクルマを減らして高価な(儲かる)クルマにシフト
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といったトレンドを見て取ることができ、これがさらに進めば既存自動車メーカーは「低価格帯を切り捨て」、そしてそれを新たな商機として中国の自動車メーカーが低価格車市場を狙う可能性も考えられ、将来的には「市場の棲み分け」がうまくなされる可能性もありそうですね(ハイファッションとファストファッションのように)。

ただ、いずれにしても新車の平均価格が50,000ドルを超えたという事実は、平均的な消費者にとって、新車購入がますます困難になっていることを示しており、価格が高騰し(高価格トレンドが)定着している現在、新車市場に価格が下がる兆候は見えず、メーカーのコスト増、EVシフト、そして利益を重視した戦略が続く限り、この価格水準は当面の間、維持される可能性が高いと見て良いかと思います。

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参照:Motor1

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